1. トップページ
  2. 盆、田舎にて

杏花さん

こんにちは、杏花(きょうか)と申します。小説は始めて3年程です。少しでも皆様に楽しんでいただけたら、と思います。

性別 女性
将来の夢 常に自分らしい創作をする。あわよくば評価される!
座右の銘 勝とうとしなきゃ勝てない!

投稿済みの作品

0

盆、田舎にて

16/08/30 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:0件 杏花 閲覧数:1021

この作品を評価する


墓地裏でアイスを食べる。ここは私と彼の昔からの避暑地。お盆の時はいくつになってもここに二人で集まって話していた。小さい頃は立ち上がっていっぱい遊んだけれど、もう立ち上がれないほど狭いから、朝からずっと体育座りしたり横になったりしている。

「今年何してたー?」
「えー……あ、お化け屋敷のバイト」
「何それヤバ」
「ヤバイっしょ?ただな、めっちゃブラック。給料まじクソ」
「世知辛いねぇ」

蝉のミンミンと鳴く音がする。こいつらも、いつか死ぬのか。不意に寂しさが胸に蔓延る。

「ねー、今度どっか行こうよ」
「いいけど、どこに」
「プールとか?」
「だめ、俺水嫌い。溺れたトラウマが強くってさ」
「トラウマ……」
「じゃあ、祭りはどうだ?」
「えー、うん、まあ」
「だめ?」

ダメじゃないけど、カップルみたいで恥ずかしい。そういうとあいつは笑い転げ始めた。

「なに!」
「お前に、そんなこと言われるとは思わんかった!」

うるさいなあ、恋愛だってしてみたいんだ。こんな田舎な街で出会いなんか作れないし、半ば強引に上京したものの、誰も私なんか見てくれない。

「……それにもうこの辺の祭り終わっちゃってる」
「じゃあ、来年だな」
「バイトして、お金貯めておいてね」

はいよぉ、と言って、また沈黙。あ、もう夕暮れだ。今日はいっぱい笑ったな。

「あんさぁ」

さっきまで爆笑してたとは思えない、冷たい顔でこちらを向いた。

「何さ」
「俺さぁ……」

少し目線を下に落として、ワックスのついた髪を少し掻きながら、言った。

「俺、死んだんだわ」

遠くで、烏が鳴いている。

「あー……だから、お化け屋敷のバイト……」
「幽霊って成仏できねえと暇なんだもん」
「わかる」

えっ、と彼が固まる。いけない、隠そうと思ってたのに。ついポロッと言葉が落ちた。

「いや、あー……」
「えっ何お前死んでるん?」

私のしまった、という顔であいつはなんとなく察したようだ。

「え、死因何?」

絶対聞かれると思った。だから言いたくなかったのに……。

「……あんたが海で溺れたってニュース見て、東京から急いで戻ってきたんだけど」
「うん」

真剣そうな顔が、私を追い詰める。

「えー!やだ!もう教えない!」
「いいじゃん!俺それ聞けないと成仏できねえ!」

……は?

「……俺、お前が死ぬまで現世に留まるって啖呵切った。最期まで見届けて、一緒に成仏するって」
「なに……それ、超ウケるんです、け、ど……」

顔が真っ赤になって、思わず蹲る。

「……俺も話したんだから教えろよ」
「……お前の葬式、行ったんだよ」

そう、こいつの葬式へ行って、死に顔見て、辛くって辛くって外へ出て、泣きながら歩いてたら慣れないヒールだったから思いっきりこけて、そこにトラックが来て……。

「……死んだ」
「じゃあ、お前、俺死んだの知ってたんだ」
「うん」
「どうして知らないふりしてたん」
「だって……」

死んだ一週間後に目が覚めて、暫く故郷に留まれる許可を貰った。親の顔見たくなくって、当ても無くさ迷ってたらいつもの場所にお前がいた。だからきっと死んだのは嘘で、私も死んでなくって、っていつも通りの夏が、いつも通りのお盆が来たんだ、って解釈してた。

「だって、死んじゃったから会えないな、って。そう思って泣いてたら急に体が空へ飛んでった。目を開けたらいつもの場所に居たから……」

泣きじゃくる私を透ける手でそっと包んでくれた。

「俺、死んでからすぐはお化け屋敷で遊んでたけど、すぐお前が気になって、ずっと待ってた」
「遊んでたんか……」
「女湯行かなかっただけ褒めて」
「えらい……」

ちょくちょくネタを挟みながら、私が落ち着くまで抱きしめてくれた。

「……もう一緒に成仏しようかな」
「え、もう行く?俺啖呵切った分すぐ戻るとハズいんだけど」
「じゃあお化け屋敷のバイト行く?」
「行くかー」

小さい空間をすり抜けて、二人で送り火に乗って空を舞う。今年も色々ありました。来年はもうありません。でも私達、幸せです。天国に行っても気の合う奴が隣にいるので。

「えっ待ってこれ天国向かってね?」
「降りれないじゃん!」
「マジか……」
「お化け屋敷でカップル茶化したかった……」
「それな」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン