1. トップページ
  2. 諸行無常

ジローさん

30代、二児の父で会社員とゆー何の面白みもないフツーの男です。

性別 男性
将来の夢 奄美大島に下宿先をつくって、年に1回10日間くらい滞在したい。
座右の銘 ・二面性を把握する ・最後は直観力

投稿済みの作品

0

諸行無常

16/08/27 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:0件 ジロー 閲覧数:729

この作品を評価する

全日本幽霊協同組合に激震が走った。
「組合長!なぜ今なのですか!幽霊の数を削減するなんて!」
東日本代表の地縛霊が声を荒げた。
「落ち着いてくれ地縛霊君。幽霊界の進化のためなんだ。私だって末端の霊たちの事を思えばこのような事はしたくない。しかし、・・・時代の流れには抗えないのだよ。我々は甘んじてこれを受け入れなければならないんだ。わかってくれ。」
組合長の必死の訴えに西日本代表の怨念霊が噛み付く。
「なんやねんそんなん納得でけへんわ!組合長、適当な事言うたらあきまへんで!わしらの事なめとるでしょ!なんやむつかしい言葉並べて!そんなん建前やゆうのバレてまっせ!本音を話しなはれや!」
組合長は目を閉じたままじっくりと語りかけた。
「よく聞いてくれ怨念霊君。少子高齢化で日本の現実界の人口は減りつつある。このままでは現実界の人口と幽霊界の霊人口の数のバランスが崩壊する。すでに霊人口のほうが飽和状態にあるのだ。しかも危惧すべき点はこれだけではない。」
「組合長、じらさずに教えてください!」
聞き返した地縛霊に組合長はゆっくりと目を見開いた。
「それは・・・科学の進化だ。」
一同は一瞬面喰った。その場の空気が一瞬止まるも、怨念霊が再び噛み付いた。
「組合長!わしらは幽霊やねん!カガクとは反対側の存在ちゃいまっか!?それがカガクノシンカて・・・!何わけわからんこと言うとんねん!薬でもやってはるんちゃいまっか!?」
「慎んでください!」
たまらず組合長の助手の浮遊霊が立ち上がって注意した。もっとも、足元は半透明でぼやけているため、(立ち上がって―)と形容せざるをえない姿勢とういうわけだ。
 組合長は構わず続ける。
「そうだ。怨念霊君の言う通りだ。我々は現実界の科学とは反対側の存在だ。だが・・・、だからこそ科学の進化が脅威なのだよ。」
「組合長、ここからは私が。」
浮遊霊がインテリちっくな眼鏡を指でチョイチョイやりながら再び立ち上がる。
「少し難しい話になりますが・・・。」
前置きをして話し始める。
「おおよそ万物には対局となるものが存在します。例えば光と闇、火と水、栄光と挫折、といった具合に。それらは両極にありがならも、互いに干渉し合って均衡を保っているのです。つまり片方の科学が進化するなら、もう片方の非科学も進化しなければこの均衡が崩れてしまう。我々はこの非科学分野の一端を担う存在。ですから宇宙的な観点から見ても、現在の幽霊界には進化しなければならない責任があるのです。」
「なるほど。事情は何となくわかりましたが、幽霊界の進化に霊人口の削減が必要な理由を教えてください。」
冷静さを取り戻した地縛霊の質問に、組合長はやや重そうに口を開いた。
「つまりそれは・・・成仏システムを簡略化するという事だ。」
その場が凍り付いた。成仏システムは閻魔庁の管轄。日本の幽霊界が始まって以来これが改定された例は無い絶対的聖域なのだ。あまりに急加速した壮大なストーリーに付いていけなくなった怨念霊は、泡を吹いて倒れてしまった。ただでさえ醜い形相だったのに、右目が白目をむいてさらに怨念霊具合が増した。(左目は元々無い。)
 怨念霊を放置して静まり返っているところに、助手の浮遊霊が口を開く。
「成仏が今より進化して簡単にできるようになれば、当然ですが幽霊の数は減ります。現実界の人口ともバランスが取れるようになるでしょう。問題は全て解決します。」
地縛霊が反芻する。
「なるほど!理解はできました。科学の進化に対しては成仏の進化。現実界の少子高齢化に対しては霊人口の削減。これによって均衡を維持しようという事ですね。しかし、成仏の進化とはつまり成仏システムの簡略化との事ですが・・・。」
組合長が察して答える。
「まぁ皆が知っている通り、これに関しては閻魔庁の管轄だ。あそこを動かすのは、それは容易ではない作業となるだろう。だが我われ全幽組が一丸となって訴えれば、この事態を理解して改善してもらえるはずだと私は信じている。」
 ちりんちりーん!
「では一端休憩に入りまちゅ。」
議長の水子霊の合図で一同は休憩に入った。

 組合長は外の空気を吸うため、屋上に上がった。微風が体を通り抜ける。

 皆よく私の話を聞いてくれてありがたい。しかし―。誰にも言えない言葉を内心に響かせた。
 現実界の科学の進化は目覚ましいものがある。遠くない将来、現在の非科学的分野の全てが科学で証明される日がくるだろう。そうなったら宇宙の秩序が崩壊し、この幽霊界も消えて無くなるに違いない。不気味なのは閻魔庁がこれを静観しているという事だ。あるいは新世界の概念を既に確立しているのかもしれない。
 生きては社会の駒として使われ、死しては宇宙の駒として使われる。
 
 儚い魂の旅路よと、我ながらに思うのであった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン