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にぽっくめいきんぐさん

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人から絶対に裏切られない男

16/08/26 コンテスト(テーマ):第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】 コメント:2件 にぽっくめいきんぐ 閲覧数:1487

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 私は、人から裏切られる事が無い。

 なぜか?

 それは、人に対して、期待も信頼も依存も、一切、しないからだ。

 インドから伝わった「ウルトラ仏教」の奥義を、修行によって身に付けた私は、「俗世の欲」に惑わされない存在となった。

 解脱(げだつ)と言えば、分かりやすいだろうか?

 人に期待するから。

 人を信頼するから。

 人に依存するから。

 だから、裏切られる。

 その根底には、人の業欲がある。

 業欲が、俗世の全てを生み出していると言っていい。

 例えば、街の本屋で、ラノベの棚を見るが良い。

 煩悩に溢れた絵とタイトルが並んでいる。
 この場には、あまり好まれないように思うので、具体例は自重するが。

 しかし、ウルトラ仏教を極めた私は、そんな業から解放された存在。

 時空モノガタリ文学賞の受賞にすら、興味が無い。

 ◆
 
 私は旅立つ。

 ウルトラ仏教の聖地、インドへ。聖地巡礼だ。

 スーツケースの中身は最低限。粗末な着替え、滞在費用、スマートフォン、パスポートのみ。

 持つから奪われるのだ。欲にまみれた俗人に。

 空港の国際線ターミナル。

 私が乗る予定の飛行機は、台風で欠航だと言う。

 あああ! もう! ふざけんなよマジで!

 天候は、人ではない。

 だからこれは、「人から」裏切られた事にはならない。

 だが、天候については別だ。

 涅槃の境地を極めた私は、空港ロビーに設けられた長椅子に横になる。

 ……次の日、ようやく便が再開した。

 空港側から借り受けたブランケットを返却し、ゲートへ向かう。

 ピンポーン!

 金属探知機に引っかかった。

 私のシューズの、紐を通す穴が、金属で出来ているからだ。

 なめんなよこのクソバカ靴がぁあああ!

 私は靴を脱ぎ、空港の係員に渡してチェック依頼。靴下にスリッパでゲートを無事通過。再び靴を履く。

 靴は人ではないから、「人から」裏切られた事にはならない。

 ボーディングが始まった。

 スーツケースは機内持ち込み可能サイズ。頭上のバケットに入れ、フタを閉めようとする。

「お客様。閉めるのは私共が行いますので」
 丁寧な口調のスチュワーデス。

 信用しない。

 本当に彼女達が閉めるとは限らない。

 自らフタを閉め、飛行機の窓側に着席する。

 スチュワーデスは、私が閉めたばかりのバケットのフタを開けた。二度手間だ。

 しかし、私はスチューワーデスに期待していない。人の行動や思考はそれぞれ。私はスッとその事実を受け止める。

 風のない水面のような、静かな心持ち。

 ウルトラ仏教のお陰だ。

 飛行機はぐんぐん上昇。途中、少し気流に揉まれたが、そこを無事抜け、安定した高度飛行に入る。

 窓から下を覗く。

 雲で遮られて、陸地も海も見えない。

 ふざけんなよこの雲がああ! 景色が楽しみで、端っこの席予約したんだぞこの無駄雲がああ!

 雲は人ではない。

 空の優雅な景色を諦めた私はスマホを取り出し、ツイッターのタイムラインを覗こうとする。
 
「飛行中は、電波を発しない状態にするか、電源をお切り下さい」

 指示に従いWifiをオフにしたら、タイムラインが更新されない。

 この無線が! インターネットできねえじゃねえかああ!

 無線もスマホもインターネットも、人ではない。

 ……

 そんな調子で、私はインドのデリーに降り立った。

 『現地案内のガイドが出迎える』と旅行手配書には記載されているが、それも私は信用していない。

 ガイドなど現れない前提で、私はこの先の行動計画を、空港のロビーで立てる。

 ああああ! 思ってたより暑いっつーんだよこのインドがああああ!

 インドは国であって人ではない。

 そして、やはり私は、人には裏切られない。

 来るとは期待していなかった、現地ガイドと思しき女性が、蒸し暑い空港ロビーの奥からやってきた。

 女性は、片言の日本語で、話しかけてきた。
「ナマステー! カタリベ サンデスネ?」

 はい。そうです。

 ガイド女性は、ツアー予定に従って、私を仏塔や寺院に案内しようとしていた。

 しかし私の目的は「ウルトラ仏教」の聖地巡礼。
 
 聖地「ウルトラブッダガヤ」への道を聞く。

 ガイドの女性は、きょとんとした表情で答えた。
「ソンナバショ アリマセンヨ」

 ウルトラ仏教……

 私が修行の末に極めた、ウルトラ仏教……
 
 ガイドの女性は、心配そうに私の方を覗き込んだ。

「カタリベ サン ダイジョブ?」

 はい。大丈夫です。

 信頼できない語り部です。

 ナマステ(−人ー)

<了>


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このストーリーに関するコメント

16/08/27 あずみの白馬

拝読させていただきました。
「スーパーウルトラ仏教」とは、世の矛盾を凝縮した宗教のように感じました。
人からは裏切られなかったとしても、自分自身の「期待」からは裏切られてしまう。
さらに「聖地」は実在しないという究極の裏切り。
とても面白く、考えさせられる作品でした。

16/09/27 にぽっくめいきんぐ

ご感想ありがとうございますm(_ _)m
コメ返し遅れて申し訳ありませんm(_ _)m

色々裏切って遊んでみました。
「面白かった」が一番うれしいです\(^o^)/
ありがとうございます。

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