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にぽっくめいきんぐさん

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見えるのが、矢印だけではなくなった、その理由

16/08/25 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:0件 にぽっくめいきんぐ 閲覧数:1293

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 僕には幽霊が見える。

 元々、そんな能力は無かったんだ。

 1学年あたり200人は居る中学の副会長だ。3年生。

 そして、生徒会長が『見える』人。

「とある霊媒師の師匠から、力の出し方を教わった」

「師匠は、ベルゼバブを倒しに行くと告げて出かけたっきり、お会いしていない」

 ある夜、というか、文化祭の前々日の夜に、会長はそんなことを言いだした。

 中二病に感染したか?

 文化祭の直前準備に駆り出されるのは、生徒会ならでは。

 他の生徒は、学業や部活が終わった時点で帰宅させられる。結構厳しい。

 そんな中、「お役目」と称して、公認で夜中まで遊べる―しかも、男女混合で―とあって、連中はここ数日、ウキウキしている。

 僕は、部活が終わってから合流。

 「王」の形をした校舎の、一番下の「_」に、3年の教室が並んでいる。3年2組と3組の間の細長い一室が、生徒会室。電気がついているのに、誰も居ない。

 隣の、暗闇の3組の教室に、生徒会の面々を発見した。

(みんな、何やってんだ?)
 そう思いつつ、僕は入室する。

「部活お疲れ様」
「ごめんね、遅れて」
 ってな具合に。不平を言って反感も買いたくない。

「で、幽霊を見る力をつける方法なんだけど……」
 と、会長。

 まだ、大事な部分は終わってなかったらしい。

 女子副会長は、きゃーきゃー怖がりつつも、楽しそう。

 そんな女子副会長に気がある事が判明している会長も、楽しそう。
 
 ……2000文字の都合上、矢印で表現。

 サッカー部員(3年)←女子副会長(3年)←男子会長(3年)←書記女子(3年)←会計男子(3年)

 女子副会長(3年)←総務男子(2年)

 こうだ。

(思春期真っ盛りだな)

 思いつつ、話の続きを待つ。僕の矢印は秘密だ。

 ――右手の中指を、眉間から少し離して置き、集中するとムズムズする。それが「アンテナ」。中指を眉間から離しながら繰り返して、ムズムズを感じる距離を伸ばして行くと幽霊が見える。

 そういうトレーニング方法、とのこと。

 三日月の光だけが明かりの、3年3組の教室の、椅子ではなく床に座り、みんなは中指を眉間に近づける。

「駄目だ! こんな力、あっても悲しみしか生まない!」
 そう言って、突然うなだれる、生徒会長。

(え……お前がやり方教えたんだろ?)

「大丈夫だよ? 私達が自ら進んで聞いたんだから。全部受け止める」
 と、書記女子。

「そうだよ。気にしないで?」
 と、女子副会長。

「会長を責める奴なんて、誰もいないよ」
 と、会計男子。

「その通りです。先輩」
 と、総務男子。

 ――

 多分、僕は、「冷めた」部類に属するようだ。

(みんな楽しそうだから、それで良いか)
 そんな雰囲気で、僕はニコニコしながら、眉間に中指を近づけるみんなを、椅子に座って、ただ見ていたんだ。

 ……

 ……

「隠れてレベルアップ」ってのが、カッコイイに決まっているだろ? ニヤリ。

 ◆

 大成功に終わった文化祭の後も、生徒会室の中を飛びまくる矢印は、確定されることがなかった。

(早く、くっついちまえよ。対応しづらいんだよ)

 思春期の男女は、言動が面倒くさい。

 僕は、矢印だけではなく、幽霊も見えるようになった。


 土曜日。

 僕は繁華街へ向けて、電車に乗りこんだ。

 東京で行われるアニメ試写会の為に、青春18切符を買いに行くんだ。

 4両編成の銀色の車体。中には両側に「二 二 二」と配置された長シートがあるけれど、どの席も埋まっている。
 その前のつり革に掴まっている、土曜なのに背広を来たリーマンのおっさん。
 反対側のつり革には、なんかわからんけど、うすピンクのフェミニンな服を着たお姉さん。

 僕は電車のドアから入って、反対側のドアとの間の、中間地点で立ち止まる。

 他の乗客から見た僕は、「通せんぼ」の位置に立っている。真ん中の邪魔太郎。

 でも、ちょっと待って欲しい。

 つり革を掴んだリーマンと、反対側のお姉さん。

 その間の、ちょっとの隙間。

 それを埋めるように、居るんだよ。

 守護霊様が。

 リーマンの守護霊様と、お姉さんの守護霊様とが、窮屈そうに挟まれている。
 僕はそこを通れない。

 シートに座った乗客の、首の後ろから窓にかけて、にゅるりと飛び出る背後霊様。

 ネルシャツの、分かりやすいオタクさんが、リュックをしょってつり革に。邪魔。
 背後霊様は、リュックをよけるように、体を「C」の字にくねらせた、苦しそうな体勢。

 そして、車内を走り回る、犬や猫の霊。

 ……うん。
 
 会長さん。

 トレーニング方法、誰かに教えたくなるね。確かに。


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