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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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Q 三十歳まで普通の大工だったのに、四十過ぎてから歴史的偉人になったのは誰でしょう?

16/08/19 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1210

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 線を描く、描く、描く。線はいつしか絵になり、マンガになった。紙の上で繰り広げられるマンガという小宇宙。でも、
「これじゃダメだ」
 俺は自分で描いたマンガのネームを丸めてゴミ箱に投げた。また絶望へと一歩進んでいく。いくら描いても自分のマンガに納得できない、無限に続くような地獄。
 三十路まで後一年。もう残された時間は少ない。
 鏡を見ると、俺の目は死んでいた。
「もう、ダメだ」
 そうつぶやき、頭を抱える。死んでしまいたい、そう思った時だった。
「ちょっと、そのネーム捨てるのはもったいなくない? 超面白いのに」
 突如響いた俺以外の声。この部屋には俺以外いなかったはず。ではこの声の正体は?
 慌てて振り返る。そこに居たのは、頭にいばらの冠をした長髪の男。その姿はどこからどう見ても。
「イエス・キリスト?」
「イエース!」
 謎の男、キリスト(仮)はドヤ顔でそう答えた。
「本当にキリスト? でもキリストってもう死んでるはずじゃ」
「だから俺は幽霊。キリストの幽霊に会えるなんて滅多にない事だぞー」
 キリストの幽霊はやたらノリが軽かった。俺は今の状況が信じられず、さらに質問を続ける。
「キリスト教なのに幽霊? いや、そもそもそのキリストの幽霊がなんで俺みたいなやつのところへ?」
「お前の両親、キリスト教徒だろう? 毎週教会へ祈りに来るんだよ。『息子を救ってください』って」
「余計な事をしやがって……」
 俺は内心舌打ちをする。
「というわけで、今なら俺様ちゃんがなんでも悩みを聞いてあげるけど、どうする?」
 相変わらず軽いキリストの態度。それに俺はイラついていた。
「悩みしかないよ」
「ほう、聞かせてみたまえ」
 キリストが尊大な態度で問いかけてくる。それに対し、俺は自虐的な態度で答えた。
「俺は今二十九歳でニートだよ? 二十九歳、この年齢で職歴無し。しかも精神科に通院中のひきこもり。恋人もいなければ、友達はみんな離れていった。これから先どう生きていけばいいのやら」
 こんなクズみたいな男の悩み、あのキリストだって解決できないはずだ。逆にあきれるくらいだろう。そう思い、わざと正直な悩みを告白する。
「なるほど」
 俺の悩みを聞くとキリストが真面目な表情を浮かべる。その表情はとても真剣だ。まさか、俺の悩みに答えてくれるのか。その真剣さに俺まで息を飲む。
「それでは、ここでいきなりキリストクイズ!」
 と思いきや、突然キリストがクイズを出すと言う。あまりにキリストが空気を読まないので、俺は拍子抜けした。
「さて、三十歳まで普通の大工だったのに、四十過ぎてから歴史的偉人になったのは誰でしょう?」
 クイズの内容を聞いて、俺はバカバカしくなった。そんなデタラメみたいなやついるのかよ。心の中でそう毒づく。
 俺の表情を見て察したのだろう。キリストは生き生きとした目で俺の事を見た。
「正解は俺様ちゃんこと、イエス・キリストでした!」
「えっ?」
 これにはさすがの俺も驚いた。
「三十歳までは大工仕事をしていてね。聖人として有名になったのは四十過ぎてからなのだよ」
 これはあまりに意外だった。てっきりキリストといえば若い頃から聖人として生きてきたのだと思っていたのだ。それが、三十歳まで大工? キリストのイメージと結びつかない。
 俺が一人もんもんとしていると、キリストが語り始める。
「年齢なんて関係ないんだよ。その気になれば四十過ぎてからでも歴史に残る聖人になれる。お前はまだ二十九歳だ。お前は何になる?」
 キリストが真剣な目で俺に問いかける。俺は何になるのか。やりたい事、それはもう決まっている。
 俺のやりたい事、それはマンガを描く事だ。
「よろしい。ならばその道を極めるのだ。あと、相談料として俺様ちゃんを主役にしたマンガを描く事。以上!」
 それだけキリストが告げると、俺の視界は暗転した。

 目覚めるとそこは俺の部屋だった。もうキリストの幽霊はいない。でも、キリストの残した言葉は残っている。
 再びペンを持つ。線を描く、描く、描く。線はいつしか絵になりマンガになった。描かれていく物語。それが正しいのか不安になる。でも、
『ちょっと、そのネーム捨てるのはもったいなくない? 超面白いのに』
 キリストの言葉を思い出すと、自然と気持ちが楽になる。
 それから頭にいばらの冠をした長髪の男を紙に描くと、不思議とペンが進んだ。


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