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ツチフルさん

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ありふれたオチ

16/08/19 コンテスト(テーマ):第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】 コメント:2件 ツチフル 閲覧数:848

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「こうしよう。お互い目隠しをして、その場でぐるぐる回るんだ」
「それで?」
「それで、ミナにストップをかけてもらう。いいかいミナ?」
「うん」
「ストップと言われたら、僕たちは回るのをやめて目隠しをとる。その時ケーキのある方を向いていた者、もしくはよりケーキに近い方を向いていた者が食べる権利を得るってわけだ」
「ちょっとまって。それだとストップを言うミナに決定権があることになるわ。好きな時にストップが言えるなら、ミナはあなたがケーキのある方を向いた時に言うはずよ。この子、あなたが大好きだもの」
「そうかな」
「ええ」
「僕を選ぶ?」
「絶対に」
「ねえ、わたしはケーキ食べられないの?」
「お前はもう二つも食べたろう。おかげでケーキは一つしかなくて、僕たちはこんなことをしてるんだ」
「ちぇっ」
「じゃあ、こうしましょう。ミナがストップと言ったあと、お互い一度だけ相手を動かせるの」
「ほう」
「もし、相手がケーキと向かいあってると思ったら「右を向け」とか「後ろを向け」とか言って修正できる。もちろん、ケーキにそっぽを向いていると思ったら動かさくてもいい。これなら公平でしょ?」
「いいね。よし、それでいこう」
「決まり。じゃあ、タオルで目隠ししましょ」
「ズルするなよ」
「そっちこそ」
「ストップ!」
「…何よミナ」
「って、言えばいいの?」
「そうだよ。上手いタイミングでな」
「はあい。じゃあ、二人とも目隠しをして」
「……巻いたわ」
「僕も」
「………」
「………」
「ミナ。スタートの合図」
「ふふ」
「笑ってないで、早く」
「いくよ。3・2・1・スタート!」
「さあ、回れ」
「回るわ! ミナ、どう? 私たち上手く回れてる?」
「回れてるよ。ゼンマイで動くロボットみたい」
「上手いところでストップって言うんだぞ」
「ヒイキはなしよ」
「わかってる。ふふ」
「時計回りのほうが良かったな」
「どっちでも同じでしょ」
「ほら、回って回って。ふふ。もっと元気よく」
「回ってる。回ってる。ふふ。よし、ケーキは僕が貰うよ」
「私よ!」
「あ。フォークがないや。わたしが使っちゃったから」
「手づかみでいいさ」
「私はミナのでいいわ。……ねえ、まだ?」
「まだまだ」
「もう方向がわからないわ」
「…うん。こいつはちょっと甘かったな」
「ほんと。回りすぎて酔いそう」
「ミナ、もういいぞ」
「もうちょっと」
「ミナってば!」
「ミナ。もう十分だ」
「はあい。じゃあ、ストップ!」
「よしきた」
「はいっ」


「さあ、ここからが勝負よ」
「ああ。相手を動かせるのは一度だけだ」
「私からでいい?」
「どうぞどうぞ」
「じゃあ…… そのまま動かなくていいわ」
「…いいのか?」
「ええ。この条件を持ち出したことで、ミナはあなたとケーキを向かい合わせて止まらせることはないと見たの。むしろ正反対を向いている可能性が高い。正反対を向いていれば、私がどう動けと言ってもケーキに近づくでしょ。なら、動かさないのが最善手ってわけ」
「そこまで考えたのか。いや、言われてみればなるほどだ」
「さ、あなたの番よ。私をどう動かす?」
「そうだな。じゃあ、右を向いてくれ」
「右ね」
「ああ。君と違って何の理屈もない、ただの勘だけどね」
「…はい。向いたわ」
「よし。一緒に目隠しをとるぞ」
「せーの、でね」
「ああ。ミナ、頼む」
 …。
「ミナ?」
 ……。
「どうしたの、ミナ?」
 ………。
「……あのさ」
「……うん」
「何か、オチが見えた気がする」
「私も」
「とりあえず、目隠しをとろうか」
「せーの、でね」
「うん」



「勝負は、私の勝ちね」
「ああ。すごいな。僕はそっぽを向いているのに、君は見事に向かい合って立ってる」
「あなたが最後に右を向けと言ってくれたおかげよ」
「余計なことを言ったな」
「ふふ。 …まあ、でも」
「まあ、うん」
「本当の勝者は、ミナね」
「してやられたよ。見事に消えたなあ。ケーキも、ミナも」
「私たちが目隠しをしている間に…ってわけね。考えてみれば絶好のチャンスだもの」
「こういうのを何て言うんだっけ。漁夫の利?」
「ありふれたオチ。でしょ」
「…確かに」
「あとでとっちめてやるわ」
「ほどほどにな」
「あの子を本気で怒れるわけないでしょ」
「よし。とりあえずミナを探そう。どうせ近くにいるさ」
「まって。目が回って上手く歩けないの」
「手をかすよ」
「ありがと。あなたは平気なの?」
「え? …ああ、うん。三半規管が丈夫なのかな」
「私なんか回りすぎて気持ち悪いのに」
「ずいぶん勢いよく回ってたからな。ほら、手をかして」
「あなたの手、何だかベトベトしてるわよ」
「ああ、フォークがなかったからね」
「え?」
「…ほら。こっちの手なら大丈夫だよ」


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このストーリーに関するコメント

16/08/20 村沢走

 伏線の回収が見事でした。文章も過不足無く、最後迄オチが読めませんでした。

16/08/22 ツチフル

会話だけなのでオチがわかりづらいかと思ったのですが、伝わったことにホッとしております。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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