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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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赤い傘と彼岸花

16/08/17 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:6件 デヴォン黒桃 閲覧数:2779

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「刑事さん、ドウカ聞いて下さい。アノ八月の半ばに起きたひき逃げ事件の犯人は私で御座います。ドウヤラ私は呪われて仕舞ったのか、頭がオカシク成って仕舞ったのか定かでは御座いませんが、居ても立っても居られなく成り、出頭した次第で御座います。アノ日は雨が降って居りまして、月は群雲が掛かっており、暗い夜で御座いました。言い訳しても致し方御座いませんが、視界が悪かったので御座います。ソコへ急に、赤い傘を差した女が飛び出して来た所を私が車でハネて仕舞った次第で御座います。少しで御座いますが酒を飲んでおったので、コレはイカンと、周りをぐるり見渡した所、人通りもなく、ただシトシトと雨が降っているだけでありまして……自分の保身だけを考えて、女を助けずに逃げて仕舞ったのです。ソレからと云うモノ、毎晩眠れずに過ごして居りました。九月に入った頃でしょうか、仕事場へ向かう日中に、件の事故現場に彼岸花が供えられて居ったのを見て仕舞ったのです。並んで、警察の出した看板には、ひき逃げ事故発生、目撃証言求むの文字。アノ夜にハネた女は果たして死んで仕舞ったのだろうかと思い悩む毎日で御座いました。まさか警察に電話で尋ねるワケにもいかず、ただ毎日供えられた彼岸花を見ておりました。まだまだ暑い九月の日差しの下でも、枯れずに供えられた花。アノ女には誰か愛する人が居て、女の死を嘆いておるのだろうと思うと胸が苦しく成りました。確かにアノ事故の晩、確認した女の頭からは、死んでオカシクないほどにドクドクと血が流れて、降りしきる雨と一緒に側溝ヘ流れておりましたもの。また別のとある晩に、ソノ現場を通った時、赤い傘を差した女が立っておりました。手には彼岸花を持っておりました。花を供えているのはコノ女だとわかり、ドキリとして目を離せずに見ておると、ソノ女と目が合ったのです。そしてソノ女は私ににっこりと微笑んだのです。ソノ顔は、確かアノ晩に見た女の顔でありました。死んだハズの女が私に笑いかけるナド、さぞや恨みも深かろうと、幽霊となって現れたのだと、帰ってからも夢にまで見る始末。飯も、水さえも喉を通らぬようになり、疲れ果てて出頭した次第で御座います」




「刑事さん。お電話有りがとう御座います。犯人が捕まったとお聞きしました……アノ憎きひき逃げ犯を、ドウゾ死刑にしてヤッテくださいまし。ソレにしても犯人はドウやって捕まえたのでしょう? はい? 出頭してきたと? 成る程、逃げきれないと思ったのカシラ? そうだ、刑事さん、アタシね、アノひき逃げ事故から毎日、現場に花を供えておりましたの。ダッテ、他に出来る事もありませんでしたし……アノ暗い夜の、ソシテ遅い時間の事件。刑事さんたちも犯人を捕まえるのは難しいかも知れんと、頭を抱えておりましたものね。ソレでもアタシは諦めきれずに、目撃証言を探したりしておりましたが、一向に手がかりが無いまま日にちだけが過ぎて行きました。ソレでもどうしても捕まえたいアタシは、チョット思いたちまして……現場に彼岸花を供えておりました。イツモ朝イチバンに花を供えて、仕事に行っておりましたのですが……とある日、朝寝坊をして仕舞い、花を供えられずにいた日が有ったのです。ソレで夜、現場に向かった所、丁度信号待ちをしていた車がありまして……事故の時間もソノ時刻頃だったので、モシヤ目撃しておらんかと聞こうとして、運転手をジット見ておりました所……フト目が合いましたので思わず微笑んで仕舞いました。すると突然、車が急発進して逃げ去って行きました。雨の中、赤い傘と彼岸花を持って笑いかけられては、幽霊か何かみたいに思ったのでしょうか。悪いことをしました。ええ、はねられた妹は一命を取りとめて回復に向かっております。コレでもう彼岸花を供えずに済みます。犯人の顔写真ですか? はい、見せて下さい。……あ、コノ顔はアノ時の運転手……はあ、成る程、幽霊を見たので恐ろしくなって出頭したと云って来たのですか。だからアノ夜、花を供えておったアタシの顔を見て逃げ出したのですね。マサカ双子の姉が居るとは思いもシなかったでしょうから、幽霊と思ったのでしょうね。うふふ」




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このストーリーに関するコメント

16/08/18 クナリ

からくりを聞けばなるほどと思うことも、人の心が、いるはずのないモンスターを作り出し、行動さえも影響を受けてしまう……という。
幽霊そのものは登場しないのに、幽霊のなんたるかが表されていると思いました。
そして、奇妙で妖しい導入と、リアリスト的な人物による後半の対照も面白かったです。

16/08/19 デヴォン黒桃

クナリ様
地の文をゼロにするという縛りで、二人に語らせてみました。
まさに「幽霊の正体見たり枯れ尾花」をテーマにしてみました。

16/08/20 デヴォン黒桃

海月漂様
読んで頂きありがとうございます!
二つの会話文で不思議な世界を感じて下さったのなら嬉しいです

16/08/27 石蕗亮

拝読しました。
口語のみという表現なのにしっかり完結していて面白かったです。
独特な世界観をいつも楽しませてもらっています。

16/08/27 デヴォン黒桃

石蕗亮様
地の文をゼロにするという試みで書いてみました。
結果こういう形になったのですが楽しんで頂けたら嬉しいです。

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