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白沢二背さん

白沢二背と申します。現在、月に一度もペースで執筆中。

性別 男性
将来の夢 恐竜になる事
座右の銘 石の上にも三年

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裏切り者

16/08/16 コンテスト(テーマ):第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】 コメント:0件 白沢二背 閲覧数:632

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 君は森を駆けている。手練れの兵隊は十余にも及び君は一刻の猶予も無いに至る。ハンナ・クライスは君の相棒だ。闇を縫って短刀が飛ぶ。君は斯うして此の秘宝の迷宮を彷徨い、訳有って二手に別れる事と成った。森は、既に抜けている。散々迷った挙句、君は一人で脱走する羽目に陥る。此れも其れもハンナ・クライスの絶望の所為である。彼女は、君の幼馴染で、君の事をリーナと呼ぶ。呼ばれる方は悪い気はしないが暗号合戦においては、役に立たない。油断は大敵だ。敵に斯うして利用されてしまう事も、しばしばだ。君は彷徨って彷徨って、挙句一声を挙げるかを、迷った。未知の仇敵は秘宝を護る、番人であった。忍者装束に身を包み、追っ手の凝り様は、尋常では、ない。彷徨って彷徨って、挙句相棒の名前を呼べない。素性を知られてしまったら、トレジャーハンターの名に障る。君は斯うして十余時間も彷徨い、遂に「リーナ! !」と、名を呼んだ。自らの。
 シオニズムの街は外敵を赦さない。決して。敵に進入を赦さず、敵に退路を確保させない。万全の態勢で臨む。君とハンナとは、此れを全うし、次の一手を決めあぐねている最中である。と。帳が落ちて辺りが鉛色に染まる。君の装備はエンコを起こした。リロードの利かなくなった拳銃を片手に君は「一旦別れよう」と、相棒に告げた。ハンナは好く働いて、くれた。自らも囮に成り、君の追っ手を減らしては、くれた。のみ成らず、自身の外敵、無論此の場合は忍者装束を指す、をも次々とだが撃破せしめた。放浪の疲れが限界に達し、遂に君は、拳銃を捨てた。一夜限りの狂宴はだがしかし、着実に身を蝕んでいた。君は、ハンナを探すのを放棄し、事前に打ち合わせていたシオシズムの街へと退路を告げた。其処迄追って来ると謂う甘い打算を逆用してだ。――シオシズムの街はシオニズムの街と同じで、外敵の侵入を赦さない。一旦街へと逃げ込んでしまえば、後は警備兵事ガードマンが自動的に排除してくれる。此の場合は事前予約をしている、君達以外の外敵を。

「リーナ! !」と、再び口にし、君は反応が無いのを亦耳にした。

「リーナ」と、呼ぼう。此れは、二人の間の決め文句で、あった。「リーナ」と謂うのは君の本名を捩った仇名で、撤退の際には、此れが暗号の代わりと成るのだ。君は、シオシズムの街を訪れ、ハンナが逃げて来ていないと知った。君は、一路宿屋へと、此の場合は落ち合う先へと指定していた場所へと、戻り切ってしまい、手の裡の無能を嘆くのであった。

「シオニズムの街は金銀財宝の、宝庫だ」。とは、ハンナの言だ。彼女は、ガードの固さに辟易とし、遂には追っ手の手中と成った。「……ハンナ」、と、君は枕を濡らし、序で裏切りの意味を悟った。幼馴染として、君とハンナは、何時も一緒に居るのであった。常々「死ぬ時は一緒よ」と、手を取り合った。此の場に泣き濡れているのは君一人で「何時私を擱いて逝って好いって言ったの……」と、涙が溢れる。枕を片手に、君は壮絶な復讐劇を展開するのであった。

「裏切り者には壮絶な、死を」「私、一人を擱いて逝くなんて」「裏切りも好い処だわ」「糞忍者! !」。再装填を済ませ、君は忍者の短刀を、潜る。銃口が火を吹き、俄然反撃が強く成る。マガジン、リロード、マガジン、リロード。敵は見る見る数を減らし、到頭君は、御宝を取った。一昼夜掛けての死に物狂いの強敵だった。宿に戻ると無事な儘のハンナが居て、此れが二度程驚きの種に成った。「――御免ね」「リーナ」「逃げ遅れちゃった」「そうよ」「心配したのよ」「何処ほっ付き歩いてたのよ」「次裏切ったら……私を裏切ったら、唯じゃおかないからね! !」。君はハンナの身を抱きすくめ、何時迄も何時迄も終わりの無い、涙。

 君は、森を駆けている。ハンナは君の隣りを固める。事前にシオシズムの街にも予約を入れた。相棒は、今日も元気なのだった。偏に。






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