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KOUICHI YOSHIOKAさん

性別 男性
将来の夢
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太陽とチョコレートの海

16/08/12 コンテスト(テーマ):第87回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 KOUICHI YOSHIOKA 閲覧数:797

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チョコレートの海を泳いでいると大きな船が近づいてくるのがみえました。
船はキャンディでできている海賊船のようです。
 きっと中には山のような宝物が積まれているに違いありません
 「おおい、おおおい」
 ぼくは声をふりしぼって呼びかけます。
 すぐにクッキーの浮板が投げ込まれ、船上から小舟がおろされてきました。
 小舟もキャンディでできています。
 ぼくが乗り込みむと、するすると小舟は引上げられていきました。
 船上で待っていたのはやはり海賊です。
 ぼくと同じマシュマロでできた海賊でした。
「すっかりチョコマシュマロになっちまってるな、ぼうず」
最初に声をかけてきたのが赤いイチゴマシュマロの船長でした。
「こんな沖で水泳する奴ははじめてだぜ」
 黄色いバナナマシュマロの船員が言いました。
「私たちが通りかからなかったら、あんた海人間に食べられたわよ」
 朱色のおかまっぽいオレンジマシュマロが頬を撫でながら言いました。
「ありがとう、助けてくれて・・・」
 ぼくは泳いである場所に向かっていました。どれくらい泳げば到着するのかなんてわかっていませんでした。三時間も泳げば到着するんじゃないか、くらいに簡単に考えていたのです。でも何時間泳いでもいっこうに目的の場所には到達できませんでした。かえって近づけば近づくほど遠くなっていくようにさえ思えました。
 理由なんてあってないようなものです。あの場所にいけばなんだか楽しいことがまっているような気がしたからです。なにがあるかなんて知りません。行ってみればわかることです。考える前に飛び込めってことですよ。それが男ってもんです。
「よおし、よかろう、俺がそこに連れていってやろう」
 イチゴマシュマロの船長が胸をたたいて請け負ってくれました。
「俺たちゃ海賊だ、怖いものなんてなんにもねえ、野郎どもこいつをあの場所に連れていくぞ」
「おおお、おおう、」と船中から色とりどりのマシュマロ達の声がひびきました。
あの場所が見えなくなるまで、まだ四時間くらいはあるでしょうか。この船ならば四時間もあれば充分たどり着きそうな気がします。
船員たちはマストを張りながら歌いだしました。

  虹を登ればホイップクリームの雲のなか
  俺たちゃやさしい海賊、正義の味方
  宝の山をよこしやがれ、みんな海に返してやるぜ
  かわいいあの子がねだるなら、金の飴玉一個だけ
  持って帰ってあげようか
  銀の飴玉あげたならきっと頬をぶたれるぜ

あの場所に近づいているような気がしますが、いっこうに近くなっていないような気もしました。空はしだいに暗くなっています。あの場所はしだいに海の端っこに隠れていきます。大きく赤く膨らみながら、燃えるような涙をしたたらせ海の向こう側へと消えていきます。
もうすこしだったのに、早くこの船で追いかけていれば間に合ったのに、ぼくは悔しくてかなしくなりました。
やがてあの場所は完全に見えなくなりました。空には星が輝き、半分に欠けた月がまばたきをしはじめました。
「なあに、明日にはたどり着くさ、また明日あいつが現れたら追いかけようぜ」
 イチゴマシュマロの船長はぼくの頭をやさしく撫でながら言いました。
「まってろよ、明日には征服してやるからな」
 バナナマシュマロが拳をふりあげながら叫びました。
「ああ、早く私のことも征服して、さむいと身体が固くなっちゃうわ、温めて」
 オレンジマシュマロが両腕で肩をさすりながらバナナマシュマロに向かって答えました。
 こうやってチョコマシュマロと呼ばれるようになったぼくはこの船の船員になりました。
 船員といっても見習い海賊ですが。
 そして、四年が過ぎました。
 稚拙な言い方だけど、まさにあっという間でした。
 ぼくらはまだあの場所にたどりついていません。毎日毎日、あの場所を目指してすすんでいますが、あの場所は近づく速さと同じはやさで遠のいていきます。明日には近づこう、明日にはもっと近くにいけるはず、そう思い続けてはや四年。
海賊らしいことはなにもしていません。でもあの場所にいくことこそが海賊らしい行動なのかもしれません。あの土地はきっと黄金でできているに違いないからです。確信があるわけではありませんが、光り輝くあの場所を見ていると本気でそう思えてくるのです。海賊にとっての夢の土地、宝物であふれた憧れの場所なのだと。
「さあ、てめども、今日こそはあの場所へいくぞ」
 今日もイチゴマシュマロの船長は元気に言います。
「もうすぐだ、あんなに近くだ、お宝は目の前だ」
 続けてバナナマシュマロの先輩が続けます。
「あそこにはきっと素敵な黄金マシュマロ王子が私を待っているはず、今日こそ会いにいきますからね」
 オレンジマシュマロの偽お姉さんが身体をよじりながら飛び跳ねます。
 「太陽」と呼ばれるあの場所を目指して、今日もチョコレートの荒波をぬって海賊船は進むのです。今日もたどりつかないかもしれない、そんなことはわかっています。言葉に出さないだけなんです。
でもそれでいいんです。もしもたどりついてしまったら、夢と一緒に身体も船もみな溶けてなくなってしまうのですから。
海賊は永遠に夢を追いかけるものなんです。





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