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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで4年目に入りました。今まで以上に良い作品が書けるよう頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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アイナ〜北国のハワイから〜

16/08/01 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:13件 冬垣ひなた 閲覧数:1784

時空モノガタリからの選評

今回は映画で有名な、「常磐ハワイアンセンター」「フラガール」のお話ですね。町の歴史や、人々の思いが伝わってきました。考えてみれば東北でハワイアンというのも不思議な取り合わせですが、単なるブームにとどまらず、震災の「復興の象徴」ともなっていますよね。ダンスが地域と人を結んだ好例なのでしょう。ソロダンサーの「ショーの見せ場」の場面では、文面から熱気が伝わってくるようで、小説の見せ場にもなっていていると思います。事実を元に、そこに人々の情熱や感情を静かに吹き込む冬垣さんの、うまさが生かされた作品だと思います。

時空モノガタリK

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『空』にかかる『虹』を見上げ
『夢』のように
『私』は、『あなた』を『愛しています』

 ハワイはその昔、文字の文化を持たず、その豊かな自然に宿る神話と歴史は、書物ではなく、フラ(踊り)やメレ(歌)によって、人々に受け継がれてきた。
 フラは語る。
 手話のように優雅なハンドモーション。
 波のリズムで揺れるステップ。
 踊る動作の一つ一つには意味がある。
 喜び、楽しさ、感謝の気持ちを込めて……それは敬虔な祈りにも似ている。
 ムームーのドレスに身を包み、花のレイを首にかけ、腰まで髪を伸ばした女性たちは、腰を揺らしフラを踊る。感情や情景を表しながら、バンドが奏でるギターの音色に乗せて、南の島の物語を、身体いっぱいで伝えるのだ。
 見渡せば常夏の海辺、ではない。
 南国感あふれる巨大ドーム型のプール、水音と歓声が響くここは、東北指折りのリゾート施設・『スパリゾートハワイアンズ』。ビーチシアターで連日繰り広げられるフラガールショーは、連日の大盛況だった。


 時をさかのぼること、昭和41年(1966年)。
 福島県いわき市(現在)は炭鉱町として栄えていた。しかしエネルギーが石炭から石油へと転換してゆくと、「黒いダイヤ」は価値を失い、炭鉱は窮地に追い込まれる。
 その時である。
「雇用促進のため、温泉のレジャー施設を作ろう」
 炭鉱の中から湧き出て邪魔だった温泉をいっそ利用してやろう、そんな突拍子もない計画が持ち上がった。
 長続きするはずがない。
 誰もがそう思う中、『常磐(じょうばん)ハワイアンセンター』はオープンした。
 会社は、目玉であるポリネシアンショーのダンサーを育てるために『常磐音楽舞踏学院』を作り、炭鉱の娘が通うことになった。
 しかしダンスについての理解がなく、「若い娘がヘソを出して踊るなんて」と眉をひそめる人も多かった当時、ダンサーの地位などないに等しい。
 彼女たちは苦労の連続だった。
 2年の厳しいレッスンに耐えても、踊り子より少ない客数。真心を込めて踊っても、日陰の花だった毎日。
 南国をかたどる心に、北国の現実の冷たさが染みた。


 平成になり名を改め、施設を増やしながら発展したハワイアンズが転機を迎えたのは2006年の事である。
 施設の経緯をもとにした映画『フラガール』が大ヒットしたのだ。
 『ハワイアンズの踊り子さん』は一躍『フラガール』として花形となり、誰もが羨む憧れの職業となった。


 広い舞台に、ソロダンサーが躍り出る。
 白いロングモレ(腰みの)の腰が、うねる様に激しく動く。生演奏の楽器がタン、タ、タンと小刻みなリズムを繰り返し、華やかにイイ(ハンドタッセル)を振りながら、彼女は魅惑の笑みを浮かべ踊る、踊る、踊り狂う。情熱のタヒチアンダンス、ショーの見せ場だ。
 ソロを任されるのは選ばれたダンサーだけ。何十年もの伝統があるからこそ、客の感情移入も違うのだ。
 仰向けに倒れた上半身が、へその辺りから力を入れたように、手も使わず立ち上がる。
 踊りには、艶やかな色気だけでない気迫があった。客からは拍手が起こる。
 「裸踊りの姉ちゃん」とからかう者は、もういない。


 しかし、2011年3月11日。東日本大震災。
 その後も続く幾度かの地震で、ハワイアンズは建物に大打撃を受けた。被災したフラガールたち。
 そんな中「フラガール全国きずなキャラバン」は、みんなの願いと東北復興の象徴になった。
 26都道府県124か所、245公演。5ヶ月にわたるキャラバンでは、慣れない舞台で、数え切れないほど踊り続けた。
 夢に見た南国の踊りを、見ず知らずの遠い街で、戻れないアイナ(故郷)を想いながら、ただひたすらに、ひたむきに。
 「癒されたよ」、避難所の慰問にも奔走したフラガールも、涙ぐむ人々の姿に目頭が熱くなった。


 10月1日、ハワイアンズが念願のオープン。
 28人のダンシングチームが踊るのは、映画と同じ『タフワフワイ』。
 ウリ・ウリという円形の羽飾りのついた、マラカスに似た楽器を振りながら踊る、楽しく明るいフラだ。
 軽やかでチャーミングなダンス。
 一歩踏み出すたび、未来が近づく。そう信じているかのようだった。
 スクリーンで演じられた世界は現実と一つになり、人々の新しい夢になった。


 ここは昔、炭鉱だった。
 踊りの「お」の字も知らない娘たちが、時代の向かい風の中、街の存続のために踊り続けた場所。
 その志は、彼女たちの中で今も静かに燃えている。
 『星』を、『月』を、『花』を、『祈り』を。
 すらりとした指先で、しなやかな脚で、豊かな仕草で描いてゆくと、南国の熱い風が、北国育ちの逞しい心を吹き抜ける。
 アロハ、みてご覧。
 変わりゆくアイナの舞台で、フラガールは今日も踊る。


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このストーリーに関するコメント

16/08/01 冬垣ひなた

≪参考文献≫
・フラガール物語 常磐音楽舞踊学院50年史 (清水一利・著)
・フラガール3.11つながる絆 (清水一利・著)
・あなたもフラガール (実業之日本社)・はじめてのフラ(イカロス出版)
・ドキュメンタリー映画「がんばっぺ フラガール!」

≪補足説明≫
・写真はストックフォトからお借りしました。
・左の写真で手にしているのがウリ・ウリ、右の写真で振っているのがイイになります。

≪お詫び≫
『常磐音楽舞(踏)学院』は、正しくは『常磐音楽舞(踊)学院』です。間違えました事、お詫びいたします。

16/08/02 冬垣ひなた

≪補足説明≫
・アイナ、フラ、メレなどはハワイ語になります。『タフワフワイ』は最近だとプレサンスコーポレーションのCM(やどかりかりこだわりやさん♪)やポカリスエットのCMにも使われています。

16/08/02 葵 ひとみ

冬垣ひなたさま

拝読させていただきました。
小説の文章中すべてにひなたさんの才能がほとばしっていると思います。
ハワイには文字の文化はなかったのですね!?
勉強になります。

「敬虔な祈りににも似ている」……素晴らしい表現ですね。

「一歩を踏み出す勇気を」
なんども逆境や批判を乗り越えてきた、理不尽な大震災にも負けないフラガール。
この作品は大切な事を沢山と教えて頂ける作品だと思いました。

評価させていただきます。

16/08/04 冬垣ひなた

葵 ひとみさん、コメントありがとうございます。

お褒めいただき恐縮です。自然に対する敬意から生まれたフラやタヒチアンダンスは、西洋で言うダンスとは性質が違いますね。ハワイではフラの教室に所属することは、単に習い事でなく、家族のような絆を持つことだと考えられていて、震災でいち早く活動を始めたのはそういう経緯もあったと思います。
自分の父の故郷が福島なのですが、フラガールのことはキャラバンがTVで取り上げられた時に初めて知りました。いつか書きたかった話でしたので、今回形にすることができて良かったと思います。

16/08/07 霜月秋介

冬垣ひなたさま、拝読しました。

勉強になりますね。フラダンスにそのような深い意味と歴史があると初めて知りました。

16/08/07 あずみの白馬

拝読させていただきました。
町の存続をかけた踊り……、昭和40年代は一種のハワイブームみたいな感じだったと思いますが、それがしっかりと残っていったのはすごいと思います。勉強になりました。

16/08/07 クナリ

冷静な筆致にも、思い入れと感銘が込められていますね。
読みごたえがありました。

16/08/08 冬垣ひなた

霜月秋介さん、コメントありがとうございます

今回の作品は今までで一番調べ事が多かったと思います。フラガールたちの本にはフラの詳しいことが載っていなかったので、ハウツー本で勉強しました。フラについて少しでもご興味を持っていただければ幸いです。


あずみの白馬さん、コメントありがとうございます

テーマパークの概念がない時代に斬新な発想でしたが、当時成功すると思っていたのは本当に社長だけだったようです。設立当時、宣伝のため全国キャラバンを行っていて、これは映画にも描かれているのですが、「フラガール全国きずなキャラバン」はそれを復活させたイベント担っています。


海月漂さん、コメントありがとうございます

冒頭はいつも色々悩むところですが、目を止めて頂き感謝します。
映画『フラガール』で南海キャンディーズのしずちゃんが演じた役のモデルであり、『がんばっぺ フラガール』にも登場した、福島第一原発のある双葉町出身の大森梨江さんは、この2016年7月30日に引退されました。時代がまた一つ、変わってゆくのを感じます。
変わるもの、変わらないもの、忘れずに心にとどめていきたいと思います。


クナリさん、コメントありがとうございます

もともと自分の意見などを書くのは苦手な方ですが、自分なりの書き方というのが、最近は出来るようになってきたのかなとは思います。自信もついてきたし、これからも頑張りたいと思います。

16/08/24 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、拝読しました。

はるほど、一時ブームになった「フラダンス」にそういう経緯があったんですね。

ダンスは人のエネルギーを感じさせるので、きっと被災者の方々もフラダンサーの
チカラをいただいて、復興へと希望をつないだことでしょう。

感動的なお話ありがとうございます。

16/08/30 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございます。

実際の出来事と人物を照らし合わせると、映画でどう膨らませフィクション化されたかというのが良く分かって、今回の作品を作る過程は凄く勉強になりました。
ダンスの持つエネルギーがたくさんの人に伝わって、元気になったのだと思います。彼女たちの復興への想いがこれからも人々の力になってゆくことを祈ります。

16/08/31 冬垣ひなた

時空モノガタリKさん、コメントありがとうございます。

炭鉱には「一山一家(いちざんいっか)」という、そのヤマで働く人すべてが家族であるという考え方があります。ダンサーたちに厳しい時代が長く、存続の危機もありましたが、時代の流れに負けず彼女たちが残ったのは、当時の社長の「一山一家」の強い信念であったそうです。そんな粘り強さと人情が、北国の人々の心を打ったのだと思います。
参考文献の書き写しにならないよう文章にオリジナリティーを加え、足りないと感じた情景描写は他の資料を探して足してゆくようにしています。
有り難くもコメントを頂き感謝します。真摯に受け止め、今後も精進してゆきたいとおもいます。

16/09/01 そらの珊瑚

冬垣ひなたさん、拝読しました。

フラダンスというと、南の国のいかにも平和そうな踊りといったイメージですが、
実際にはもっと深いもの、例えば逃れることの出来ない自然災害や永の別れに際しての
人の祈りのようなものが表現されているのかなと思いました。
映画「フラガール」のフィルムが再現されたかのような気がしました。

入賞、おめでとうございます!

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