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笛地静恵さん

SM小説家。妄想家。言葉遊び師。 三和出版『女神の愛』「女神帝國盛衰記」連載中 他

性別 男性
将来の夢 歌集、句集をだすこと。
座右の銘 永遠の未完成、これ完成(宮沢賢治)

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クリトルリトル

16/08/01 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:1124

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 女の子たちは、この異様な世界で生きのびるために、何らかの特殊能力を持っています。あたしはクリトルリトルに高温に熱した槍をつきさしました。愛好さんの弓矢が爆発しました。
 隊列を組んで進行していきました。
 遠征隊の総勢は五名です。もっと人数が欲しかったのです。が、学校の防御も必要です。危険に満ちた世界です。学校の桜の下の木の墓標は、五柱に増えていました。
 あたしたちも、もう小学校にもどれないかもしれません。しかし、行かなければならないのです。愛好さんの指示で、移動を開始しました。男の子たちを、海の泡にしたくはありません。お薬が必要でした。
 一日に、あの白いお薬を二錠ずつ。男の子たちに、呑ませなければならないのです。愛好さんと理科室の薬品棚の在庫を、何度も数えました。もう百八十錠を切っています。生き残った十二名の男の子。一日二十四錠。七日間ほどしかありません。ぎりぎりでした。補充する必要がありました。
 しかし、学区内にある薬局の棚は、すべてあさりつくしてしまいました。こうして学区外に出るしかないのです。危険ですが、仕方ありません。白い霧の幽霊の手が海から上がってきています。男の子のちいさな体が、さらに浸食されます。
 愛好さんが、ついに決断しました。国道沿いのモール街の中に薬局があります。そこまでの遠征が計画されました。彼女が隊長です。頼りになります。同性から見ても、長身の美少女でした。弓の名手です。弓道場での練習の音。あれが、爽快です。的に弓が命中。スパーンという固く張りつめた音。霧と湿気に濁った頭をすっきりさせてくれます。
 愛好さんは、背中に手製の矢をいれた筒を背負っています。カラスの羽の黒い矢羽が、何本も光っています。破壊力のある飛び道具です。
 愛好さんにしても、あたしにしても、男子の剣道の防具を改造して、自分用の鎧にしていました。珍妙な格好でした。愛好さんは女武者です。あたしは、まあ山賊の娘でした。でも、あたしだって、最上級の六年生です。責任があります。からだも大きい方でした。
 さっきは、下駄箱の並んだ学校の玄関に、みんなが集まっていました。見送ってくれました。
 宏君も、三年生の女子の胸に、抱っこされています。さっき、あたしは彼を抱っこして、おっぱいを飲ませてきました。いっぱい、吸ってくれました。これで遠征中も、胸がはらないですみます。女の子同士でも搾乳はできます。が、やっぱり、男の子の小さなお口の方が、気持ちがいいのです。飢えた同性の口で、乳首を乱暴にあつかわれると、あとがひりひりします。宏君は、そんなことはしません。とても優しいひとなのです。
 母乳は男子の短くて弱い消化器官でも、栄養を吸収できる最高の食材でした。あたしたちのからだも変化しているのです。生理のくるものは、ひとりもいませんでした。女子はみんな筋肉がついていました。ひとまわり大きくなっていました。
 学校の中では、上には何もつけないで歩いている女の子もいました。しかし、下だけは腰布一枚でも、着用が義務づけられていました。高温多湿の世界です。汗をかきます。すべての衣服が、何度も洗濯されています。布地が、ぼろぼろになっていました。
 まだ自力で歩ける男の子たちの視線は、あたしたちの股間の真下にきます。少し、上を向けば、あそこがむき出しでした。男子にも同じ義務があります。フルチンはダメです。あたしは、スキでした。かわいかったからです。けれども、それでは、風紀がよろしくありません。
 こういうときだからこそ、男子も女子も、相手への最低限の礼儀を、欠かさないようにしよう。愛好さんが、全校集会で提案しました。いくらかわいくても、男子は女子のペットではないのです。新しい校則としてさだめていました。
 宏君も、小さな手をふってくれました。彼を無に帰せさせることはできません。
 あたしたちは校庭に出ました。湿った地面に掘った、いくつもの落とし穴をよけていきます。校門を出るころには、木造平屋建ての校舎は、霧の底に沈んでいました。今日は白い海から、霧があがってきます。いつもよりも、濃いようです。
 あたしの手に持った三叉の鉄の槍が、じんじんとうなりを上げていました。敵が近くにいます。壊れた門の鉄柵を改良したものです。ある物を工夫して使うしかないのです。愛好さんに刺激されて、あたしも槍の練習をかかしていません。旧世界があったときには、やり投げの選手でした。今は、多くの獲物を狩っていました。弱肉強食の世界です。人間は、この世界で最大の哺乳動物でした。無人の国道を歩いていきました。
 学区の境界を越えました。遠くで海が白く吠えています。クリトルリトルは空飛ぶタコです。音もなく襲いかかってくるのです。舞い降りてきました。戦闘開始です。


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