1. トップページ
  2. メイポールダンス

かめかめさん

http://ameblo.jp/kamekame1976/ ブログデシセイカツバクロチウ

性別 女性
将来の夢 印税生活
座右の銘 ハワイに行きたいと思ったら、一歩踏み出さないといけない。 ハワイは向こうから近づいてこない。

投稿済みの作品

0

メイポールダンス

16/07/31 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:0件 かめかめ 閲覧数:2174

この作品を評価する

 メイは体育祭が憂鬱で仕方がなかった。出来ることなら、なんとか休んでしまいたい。けれどそんなわけにはいかなかった。
 聖花女子高等学校の体育祭には保護者だけではなく近隣の、あるいは、わざわざ遠方からも見学者がやって来る。体育祭の目玉、メイポールダンスを目当てに。
  メイポールダンスは大正時代から続く聖花女子高等学校の伝統行事である。三メートルほどの高さの杉の丸木に結ばれた色とりどりのリボンを、白いドレスに身を包んだ十二人の少女たちが一本ずつ持ち、右に左にステップを踏み、一人が掲げたリボンの下をもう一人が潜ったりと、複雑なステップを踏みながら編み上げていくものだ。メイは、その踊り手に選ばれていた。
 メイの両脇に立つのは、よりによってルリとランだった。
 右にステップを踏み、ルリのリボンの下をくぐる。ルリはメイを睨みつけて通りすぎる。ルリがメイのリボンの下をくぐり元の位置に戻る。
 左にステップを踏み、ランのリボンの下をくぐる。ランはメイに優しく笑いかけて通りすぎる。ランがメイのリボンの下をくぐり元の位置に戻る。
 それが延々繰り返される。メイは泣きそうになる。ステップを踏むように簡単に、三人の関係も元に戻ればいいのに。
 ルリとランは高校に入って一番に出来た友達だった。なかなかクラスになじめないメイをランとルリは仲間に入れてくれた。それからは三人、何をするのも一緒だった。ランがメイに告白する、その時までは。
 リボンは杉の木の上、三分の一ほどまで編み上げられた。少女たちは隣の子と手を繋ぎ木の周りを回り始める。ルリの爪がメイの手に突き刺さる。ランがメイの手を優しく包む。
 ランの気持ちを知ったルリは途端に二人から距離を置くようになった。遠くからメイを睨みつける。ランはメイだけを見つめてルリの視線に気づくことはなかった。三人は次第に離れていった。
 ステップはいよいよ複雑になり、繋いでいた手は離された。メイはほっと息を吐き自由になった手でリボンをぎゅっと握った。
 音楽がゆっくりしたリズムになり、少女たちのステップが徐々に収束に向かっていく。
音楽が鳴りやんで、リボンは編み上がった。赤、青、黄色、その他さまざまな色が複雑に絡み合う模様を見上げて、メイはこのポールは自分の気持ちのようだと思った。
「メイ」
 ルリが背中から声をかけた。
「全部あんたのせいだからね。アタシたちがバラバラになったのは」
「メイ」
 ランが隣に寄り添う。
「私、あなたに会えてよかった。いつまでもそばにいたいの」
 ああ、ポールに絡まったリボンをほどきたい。ステップを逆回しにして、すべてを最初にもどせたら。
 けれどダンスは終わってしまった。編み上がった模様はポールと一緒に燃やされて灰になっておしまいだ。
 キャンプファイヤーのように焚かれたポールを見つめながら、メイは静かにステップを繰り返す。
 右に三歩、くるりと回って、左に三歩。リボンをくぐって。
 ラン、ルリ、ラン、ルリ。二人とも大好きな友だち。
 左に三歩、くるりと回って、右に三歩。リボンをくぐって。
 私を好きな、私を嫌いな、二人の友だち。
 メイポールダンスのステップはいつまでも、くるくるとポールの周りを回り続けるのだ。どこにも行けないまま、複雑に、かろやかに、色鮮やかに。
 メイはいつまでも一人、ダンスを続けた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン