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密家 圭さん

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半分濁して誤魔化して

16/07/24 コンテスト(テーマ):第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】 コメント:0件 密家 圭 閲覧数:1066

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「先程、濁音規制法案が可決されました」
画質の低い映像の中、当時のアナウンサーがきびきびとした声で伝えた。2XXX年には、「っ」は詰まるような感じを与え、受け手を萎縮させる言葉だとして、促音規制法が施行されました。それに続き、濁った音が汚く、受け手に不快感を与えるとして、2XYY年は濁音規制法案が可決されました。
「ぽ、ぴぷぽぽぺ、ぺーぱーぱ、ぱぷぽんぴぺーぽーぺぴぱー」
解説映像の後に美人アナウンサーが正解を告げると、不正解の人々の顔面で、一気に煙のようなものが噴射された。芸人がガッツポーズを決めたり、女優が当然という顔で上品そうにしていたりと、正解者の反応は様々だ。濁音規制から促音規制だったか、促音規法からの濁音規制だったか、順番が分からなくなりがちだ。
「ぴぽぴ、ぴぷぱぴぱぽぽぽぱぱぽ?」
台所から出て来た母が、テレビの電源を落とした。
「宿題はさつきやつた。家の中なんたから、普通に喋ろうよ。」
当初は、禁止ではないから公的な場でできるだけ使わないように、という話だったらしい。下痢はけり、クズはくす、と濁音規制で耳触りは良くなったらしいが、それでは足りなかったらしい。数年前、撥音規制直後に直音も直接的すぎるということで規制された。
「ぽぱぴぱぱぷぴ、ぺぽぽぱぴぱぷぴぴぱぺぱぷぱ。ぴぴぷぽぱぽぴぺぺ。」
「ぱーぴ」
適当に返事をして、自室に戻った。
…育ちが悪い、ってお隣さんに言われちゃうわ。きちんと直してね、と母は言っていた。半濁音しか使わなくなってから、唇の動きでなんとか読み取っていたが、慣れたのか聞くだけで分かるようになってしまった。ひろしという名前がぴぽぴと呼ばれるようになったときは何故か寂しさを感じたが、今は普通だ。
ばかがパパ、死ねがピペになったって、意味の違う言葉になる訳ではないのに。
ちらちら光る携帯の青いランプが、着信を告げている。携帯と同じだ。「皆使っているから」理由はたったそれだけだ。相手が半濁音しか使わなかったら、俺もそうしよう。通話ボタンを押し、耳へと当てた。
「ぽぴぽぴー、」
……あーあ。面倒臭いって分かっているのに、皆そうだ。
「ぽぴぽぴ、」
馬鹿みたいだって分かっているのに。会話の途中で「冗談で使ってみました」って言って、前みたいに普通に喋れるようになればいいのに。
そう思いながらパピパピとテレパシーよりもテレパシーみたいな電話を続けていたが、馬鹿らしい半濁音に促音、撥音、直音が加わる様子はない。
相づちを打ち、目を擦りながらふと外をふと見ると、真っ黒な雲が、三日月をゆっくりと覆っていった。あれは雨雲みたいだから、明日は雨だろう。雨の日は皆いつもより無口になるから、億劫な会話は少なくて済みそうだ。


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