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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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シンデレラと王子さまのワルツ

16/07/24 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:9件 あずみの白馬 閲覧数:1918

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「これだけたくさんのお洗濯を、あなたが?」
「はい、家のことはほとんど私がしています」
 シンデレラが、川のほとりで洗濯をしていると、この国のとてもステキな王子さまが話しかけてくれました。
「そうですか、とても大変なんですね」
「いえ、慣れていますから」
 シンデレラはそう言って笑ってみせました。でも本当はとてもきついのです。ある日継母ままははとその娘ふたりがあらわれてから、彼女は家のきついことをほとんど押し付けられていました。
「でも、毎日それじゃあ大変でしょう」
 王子さまから思わぬ労いの言葉がかけられたその時、馬車の中から若い御者が降りてきました。
「王子さま、そろそろ城に戻る時間でございます」
「もう少し良いでは無いですか、そうだ、舞踏会も近いから、この娘と少し踊ってみたい」
 思わぬ言葉にシンデレラは声を詰まらせました。彼女はそこそこの顔立ちです。
「え……!?」
 王子さまはシンデレラの手を取ると、御者にワルツのリズムを手拍子するように言いました。
 シンデレラは夢を見ている気分です。王子さまのリードに合わせ、ぎこちないながらも一生懸命踊りました。

 踊りがひと段落すると、王子さま、
「こんど舞踏会(ぶとうかい)があるから、そこに招いてあげるよ。」
「ほ、ほんとうですか!?」
「ああ、またキミと踊りたい」
「ありがとうございます」

 見に余る光栄に、シンデレラは天にも昇るような気持ちでした。

 何日か後、本当にお城から招待状が届きました。さらに翌日、王子さまの結婚式が行われ、舞踏会に参加した人はそのまま参列出来ると書かれていたのです。
「もしかして、王子さまにお嫁さまに選ばれたりして……」
 シンデレラは淡い夢を抱きました。

 しかし、招待状が継母と二人の姉に見つかってしまいました。
 すると、こともあろうに三人はそれを横取りしてしまいました。さらに、
「あなたなんかが行ったら我が家の恥だわ」
「そうよそうよ。舞踏会は私たちが行きますわ」
「王子さまはきっとお嫁さまをお決めになるのよ。これは何かの間違いに決まってるわ」
 これにシンデレラが反論しようとしますが、継母はシンデレラの言うことも聞かず、
「舞踏会の日は、あなたはお留守番よ。いつもの仕事の他に、縫い物と庭の草むしりもやりなさい!」
 大量の仕事をシンデレラに押し付けたのでした。

 ***

 舞踏会の日、姉二人と継母はおめかしをして城に出向き、シンデレラは一人で泣きながら家事をこなしていきました。
 夜も更けてようやく縫い物が終わる頃、お城から鐘の音が聞こえて来ました。
「もう、舞踏会も終わりかしらね……」
 結局その日、シンデレラはお城にも行けぬまま、疲れのあまり眠りについたのでした。

 ***

 真夜中のことです。シンデレラは寝つきが悪かったのか、目を覚ましてしまいました。
 するといつもの部屋では無く、まるでお城の中のような場所にいました。
「え…!?」
「目が覚めてしまったのかい?」
 驚いたことに、横のソファには王子様がいました。
 シンデレラはすぐに思いました。
「そうか、ここはきっと夢の世界……」
 それなら何をしても構わないと思った彼女は、王子さまに、
「寝つきが悪くてつい……、すみません、王子さま、少しだけ一緒に踊ってくれませんか?」
 シンデレラのお願いに、王子さまはうなづき、川のほとりで踊った、あのワルツを一緒に踊り始めてくれました。
 シンデレラはしばらく踊りに身を任せ、
「王子さま、素敵な時間をありがとうございました。どうかお幸せに」
 まもなくお嫁さまを貰い受ける王子さまに、ささやかな願いを告げると、
「ああ、必ず幸せに……」
 そこまで聞くと、シンデレラは再び眠りについたのでした。

 ***

 翌朝、お城の前の広場はたくさんの人で賑わっていました。
「結局誰が選ばれたのかしらね」
「隣の国の王女さまとかじゃないの? 帰ったらシンデレラに仕事押し付けてやろうかしら」
 選ばれなかった姉二人が恨み言を言いあっていると、ファンファーレが鳴り響き、お城のバルコニーに注目が集まりました。
 すると王子さまの隣には、なんとシンデレラの姿がありました。昨夜のことは夢では無かったのです。
 シンデレラが緊張の面持ちを見せる中、王子さまは国民に結婚の宣言をしました。
「姫にも、この国を支える大切な役目があります。彼女は家の仕事も大変よくこなしており、社交のために必要でもあるダンスも懸命に踊ってくれました。よって、私はシンデレラ嬢を姫君として迎え入れることにしました」
 これを聞いて、唖然とする継母と姉二人に、シンデレラは笑顔を見せたのでした。
 こうしてシンデレラは、良き姫君として民に慕われ、王子さまと幸せに暮らしました。


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このストーリーに関するコメント

16/07/25 葵 ひとみ

あずみの白馬 さま

拝読させて頂きました(^^*)

シンデレラと結婚して幸せになったのは、
シンデレラというきつい仕事をこなす心も美しい女性だけではなく、
それ以上に、王子様とその国の民だったという説もあるんですよね……

最初のシンデレラと王子様の出会いは僥倖でしたね……

ラストまで、「隣の国の王女さまとかじゃないの? 帰ったらシンデレラに仕事押し付けてやろうかしら」と心の醜い姉二人と家の仕事も大変よくこなし、社交のために必要でもあるダンスも懸命に踊るシンデレラが対照的でした(^^*)

王子様は観る目がありましたね……

珠玉の小説だと思い評価させていただきました(^^*)

16/07/25 あずみの白馬

> 葵 ひとみ さま

お読みいただきましてありがとうございます。
出だしの場面、確かに僥倖でしたね。

王子様とその国の民が幸せになったというのは確かにそうかも。シンデレラ姫は逆境に強い女性というイメージもありますし……。

心の醜い姉二人は出番が少ない分頑張って(?)いただきました。

王子さまはシンデレラの誠実さに惚れ込んでいます。
お姫様は外交的なこともこなさねばならないので、この人ならと決めたようです。家系より中身を重視するタイプです。

「珠玉の小説」もったいないお言葉ありがとうございます!

16/07/25 泡沫恋歌

あずみの白馬 様、拝読しました。

夢見るように美しいシンデレラの物語。
こんなハッピーエンドを世の女性はみんな待ち望んでいます。

今まで苦労した分、見る目のある王子に選ばれて良かったです。
やっぱり、ハッピーエンドは読後感が爽やかでいいですねd(⌒ー⌒) グッ!!

16/07/25 葵 ひとみ

>あずまの白馬 さま

> シンデレラ姫は逆境に強い女性というイメージもありますし……。

最近、とある風水では玉の輿を狙う方はスマホの待ち受け画面を「シンデレラ」にするそうです。

なるほど、あずまの白馬 さまの作品ではシンデレラ姫は逆境に強い女性というイメージなのですね(^^*)

> お姫様は外交的なこともこなさねばならないので、この人ならと決めたようです。

お城や国を王子様は護る以上、

「華岡青洲の妻」とまではいかないまでも、

「山内 一豊の妻」のように内助の功なども外交では必要となってくるので「誠実さ」も合わせもつ、「シンデレラ」を選んだのですね……

> 家系より中身を重視するタイプです。

そうですよね。
くれぐれも、姉二人のような方を姫君として「国破れて山河在り」と隣の国などに思われてしまわないように……

私も逆境にすぐへこんむのではなく、逆に跳ね返すぐらいのあずまの白馬 さまの「シンデレラ」を見習いたいなと思いました(^^*)

> 「珠玉の小説」もったいないお言葉ありがとうございます!

いえいえ(^^*)
乱筆乱文失礼いたしました。
私も創作に励みますね。これからも宜しくお願いいたします。

16/07/26 あずみの白馬

> 泡沫恋歌 さま

ありがとうございます。
そうですね。苦労が報われてほしいですね……

読後感が爽やかとのことでうれしいです。

> 葵 ひとみ さま
ありがとうございます。

シンデレラの解釈はけっこう色々あるかもしれません。
完全犯罪をやってのけた。という話もあるそうです。

待受をシンデレラ、なるほど、確かにあやかりたいですね。

内助の功ばかりではなく、外に出ることも必要になる。そういったところから王子様はシンデレラを選んだと思います。

姉二人と継母のその後も考えてみると面白いですね。
これからもよろしくお願いします。

16/08/06 冬垣ひなた

あずみの白馬さん、拝読しました。

魔法の靴がなくても王子さまと幸せになるシンデレラというのは、結構新鮮な気がします。シンデレラの健気さがよく表れていて、仕事もダンスも両方こなせる彼女は、今の時代に必要な女性像なのかもしれませんね。ハッピーエンドで素敵なお話でした。

16/08/07 あずみの白馬

> 冬垣ひなた さま

>魔法の靴がなくても王子さまと幸せになるシンデレラというのは、結構新鮮な気がします。

ありがとうございます。ダンスを主軸にしようとした時、あえて魔女を出さないでストーリーを組めないか……と考えたらこうなりました。
評価ありがとうございます!

16/08/08 天野ゆうり

拝読しました。
このシンデレラのお話は、語り継いでいきたいくらい素敵でした。
知っているシンデレラのストーリーとは違う、味わいのある世界で、読んでいて心地よかったのは、久しぶりです!!
優しい気持ちになれるシンデレラをありがとうございます!!

16/08/11 あずみの白馬

> 天野ゆうり さま
語り継ぎたい……、身に余る光栄です。
みなさまの知っているシンデレラとは違いますが、読んでいて心地よかったというのは書き手としてもうれしいです。ありがとうございます。

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