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クナリさん

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野菜不足のあなたへ

16/07/22 コンテスト(テーマ):第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】 コメント:8件 クナリ 閲覧数:903

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 今ではすっかりメジャーになった、パピプペポという商品が世に出た時の話である。

 幸運なことに、小生はメーカー様がこの商品を発売するまさにその時、プレゼンを受ける光栄に浴したことがある。
 その商品を手に、意気揚々とやってきたメーカー様のドヤ顔はいまだに忘れがたい。
 人間にはこんなドヤ顔ができるのか、と余人をもって驚嘆せしめるにふさわしい、渾身のドヤ顔であった。
 しかし、その新商品の特徴を聞いてみると、確かにそのドヤ顔にも得心の行く、空前の一大商品であることは認めざるを得なかった。
 なんと、なんとである。
 その商品を一本(200ml〜250ml程度)飲み干すと、一日に必要な分の野菜を食べたのと、同じだけの栄養が摂取できるというのである!
 小生、「ええええ本当ですか!?」という驚きをストレートに表情に出した。
 同時に、「ええ〜〜本当ですかあ〜〜??」という本音を心の奥深くにしまった。小生、大人になった。
 本当に宣伝文句通りの効能があるなら、凄まじいなんてものではない。だが、同時に他の商品を駆逐してしまう恐れがある。
 この商品は、他の野菜飲料の存在意義を根こそぎ奪ってしまう。飲料業界の枠を飛び越えて、サプリメントの領域まで脅かしてしまうレベルである。もはや医者いらずである。
 もちろん、小生とて盲信したわけではない。「たかがジュース一杯飲んだくらいで野菜食べなくてよくなるわけなからむ(意志・推量)」という身も蓋もないツッコミが、小生の胸中で渦巻いていた。
 誇大広告とは言わぬ。しかし、少々大げさに言い過ぎではないのか……
 すると、小生の隣にいた同僚が、
「えーすごい! もう、野菜とか全くいらないっすよねえ〜」
と放言した。メーカー様の顔が曇った。ドヤ感が20%減である。
 恐らくなのだが、(いけない。このアンポンタンども、宣伝文句を真に受けまくってあることないことオーバーに言ってこの商品を仕入販売するかもしれない。ほどほどのところでブレーキをかけねば)と思ったのではなかろうか。同僚ももちろん、「やり過ぎるフリ」をしてメーカー様の本音を引き出したいのである。……たぶん。
 お答は、
「えーでもですね、個人個人のご状況もありますし、これさえ飲んでいれば大丈夫だとか、そういう捉え方はしないで頂きたくて」
とのこと。
 よく読むと、そのインパクト充分に見える商品名は「この飲料を一日一本飲みさえすれば、もう一切野菜を食べなくていいんですよ」などとは一言も書いていない。名前だけを見ると、ただ「一日一本飲むことをお勧めしますよ」と言っているのみである。
 メーカー様は当然、最大限に販売効果の見込めるネーミングを考える。大切なのは、我々消費者が冷静かつ理性的に商品に向き合うことである。そうすれば、様々な悲劇や事故を防ぐことができる。小生、改めて肝に銘じた。
 実は近年、食品(に限らずなのでしょうが)の商品名はなかなかルールがややこしい。「健康煮」という名前でずっと販売してきた商品が、「これさえ食べれば健康になれるというイメージを与えかねない」とかの理由で「昆布と大豆の煮物」という名前に改められたという話もある――……のですが話半分に聞いておいて下さい。
 一時期、やたらと「おいしい○○」という商品名が急増したのは、「おいしい」という言葉はこのグレーゾーンに引っかからないためらしい。確かにお役所も「貴社のこの商品はおいしいとは言えないので、品名を変えなさい」とはなかなか言えまい。日本語難しい。

 話がそれたが、「これさえ飲めば野菜の栄養については一生安泰」とまでは言わないまでも、かなり価値のある商品なのは確かである。味にもこだわっておられ、野菜ジュース特有の生臭さもかなり抑えられて飲みやすくなっていた。つまらないケチつけてすみません。
 「野菜ジュースがたどりつける限界まで行きたい」というこだわりが、ひしひしと感じられた逸品であった。
 その後、このパピプペポは大ヒットを飛ばし、今では野菜ジュースの大定番となった。
 このプレゼンの時、小生が「栄養の吸収の仕方には体調や個人差がありますし、栄養が入っているのと、それを吸収できるのは別問題だと思うのですが、安定して効果が出る程度には吸収しきれるのですか?」とKYして先方のドヤ感を更に30%OFFにしてしまったのもいい思い出である。
 本当にすみませんでした。
 あとコラーゲン入りの某食品をプレゼンされた時も、「コラーゲンは経口で摂取しても体内には吸収されないのではありませんか?」と性懲りもなくかました。
 本当にすみませんでした。

 この物語は、フィクションです。


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このストーリーに関するコメント

16/07/23 あずみの白馬

拝読させていただきました。
パピプペポなる商品、あれば飲んでみたいかも。私は気休めでタブレット系の野菜錠剤をのんでいます。
確かにコラーゲンは経口摂取だと吸収されないようですね。こういうのは気持ちの問題なのでしょうか……?

16/07/24 クナリ

あずみの白馬さん>
コラーゲン入りの食品なんかも、「コラーゲンが入っている」と言っているだけで「体に吸収されて健康にいい」とは書いていないんですよね。だから嘘をついているわけではないんですが、肌にも関節にも特に良いことはないですよと。
直接肌に塗布すれば保湿効果はあるし、関節部に注射すれば軟骨を助けてはくれるでしょうが、経口ではだめですよ…せちがらいですよね。
野菜の栄養を過不足なく摂取するのは人類の見果てぬ課題なのかもしれません。野菜ジュースで栄養取ろうとするとどうしても糖質取りすぎちゃうようですし〜。

16/07/25 葵 ひとみ

クナリさま

はじめまして、拝読させて頂きました(^^*)

ところでコラーゲンなのですが、うちではチキンの軟骨と皮を骨つきのまま、

様々なお野菜とトマトスープにしたりしています(^^*)

命名して「プルプルコラーゲンスープ」

効果はあるのかなぁ〜(笑)

とてもテンポ良く楽しく読ませて頂きました(^^*)
ありがとうございます。

16/07/28 クナリ

葵 ひとみさん>
コラーゲンを胃や腸が吸収できない以上、コラーゲン自体の効果はともかくとして、とても美味しそうであります!
入ってるだけなら特に毒でも薬でもないんですが、あたかも美肌や健康に効果があるかのように宣伝すると、誤解も招きやすいですよね。

16/07/28 こぐまじゅんこ

拝読させていただきました。

小生のつっこみが、とっても面白かったです。
テーマのパピプペポが、このようなお話になるとは・・・。
おもしろいですねぇ。

では、またぁ。

16/07/30 クナリ

こぐまじゅんこさん>
パピプペポに置き換える言葉……というのを考えたとき、「固有名詞を隠すために使ってみようか」というあたりから発想してこんなんになりましたッ。
商品に文句つけるようなことはあんまりよくないと知りつつ、つい( ^^;)。
コメント、ありがとうございました!

16/09/10 光石七

テーマ【パピプペポ】をこう使われましたか。
えっ、私、作中の商品の謳い文句を額面通りに受け取ってましたよ……。コラーゲン入り商品に関しては、元々さほど効能を信用しておりませんでしたが。
ユーモラスな語り口と小生のツッコミが面白く、楽しんで読めました^^

16/09/13 クナリ

光石七さん>
もう、他にどうして良いのかわからなかったです、パピプペポ…。
字を置き換えるということで、堂々と出す伏字くらいしか思いつかず、それなら固有名詞や商品名を堂々と隠しながら好きなことが書けるかな、と(^^;)。
売る側の努力と消費者の感覚、なかなか微妙なバランスを求められることも多いですが、それはそれで楽しい世の中だなあとも思うのです(ひどい)。

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