1. トップページ
  2. 犬から始まる探検隊

玲桜さん

玲桜と申します。Pixivと小説家になろうでも投稿しています。ツイッターもやっていますので、気軽にフォローしてください。

性別 女性
将来の夢 ゲームのシナリオライター
座右の銘 握れば拳、開けば手のひら。

投稿済みの作品

0

犬から始まる探検隊

12/09/25 コンテスト(テーマ):【 犬 】 コメント:0件 玲桜 閲覧数:1484

この作品を評価する

隣のピースはよく吠える小型犬だ。
これは隣人への苦情ではない。
あくまで、早口言葉の「隣の客はよく柿食う客だ」のパロディだ。
本当によく吠える。
道路ですれ違った相手すべてに吠えるのだ。
小型犬なのに野太い声をしているので、ピースだと一発でわかる。
もうちょっと甲高いかわいらしい声をしていたら印象も違うのだが。
とにかく家族以外を敵視しているとしか思えない。
あれは威嚇だ。
だからといって、私はピースが嫌いというわけではない。
根本的に私は犬に吠えられるタイプなのだ。
親友の自宅に遊びに行ったときにもポチに吠えられた。
ポチいう名前だからと言って、外見がかわいらしいとは限らない。
ポチは代々、その家で犬に与えられる名前なのだ。
番犬としては優秀だとは思うが、客商売をしている家には似つかわしくない。
30メートル先に人を見つけたら吠える。
親友の話だと、ポチはアイヌの狩猟用に飼われている犬種らしい。
そのために獰猛だ。
親友も散歩にひと苦労している。
時計を持っているわけではないが、午後4時半になると散歩の時間だといわんばかりに吠え始める。
だから、私と親友が遊べるのは午後4時半までと決まっている。
散歩も一筋縄ではいかないのだ。
親友のことを自分よりも下だと思っているらしく、言うことを聞かない。
散歩コースはポチが自分で決める。
しかも、突然暴走することもある。
親友は死にもの狂いで探し回ったら、先に帰宅していたらしい。
力が強いので、リードが切れたり外れたりすることも珍しくない。
狩猟犬が野放しになったら、と思うと恐ろしい。
だが、ポチは嫌いではない。
私は犬は苦手だ。
小学1年生のときに下校途中で大きなゴールデンレトリバーに追いかけられたことがある。
あのときは私一人ではなく、団体で追いかけられた。
クラスでも一番身長の低かった私にとって、ゴールデンレトリバーはゴジラやガメラと同じレベルの恐怖だった。
その当時、私の住んでいた地区では小学生は集団登校をしていた。
翌朝、集合場所に行くと、問題のゴールデンレトリバーが待ち構えていた。
学校までついてこられたのだ。
あれは本当に生きた心地がしなかった。
そして通学路には狂犬病の予防接種を受けていないという噂のある放し飼いの犬もいた。
犬は逃げると追いかけてくる。
なぜが通学路にはそれ以外にも放し飼いの犬が多かった。
そのために、小学生たちは「放課後近道探検隊」を結成したのだ。
通学路を通らずに下校するという、見つかったら説教ものの探検隊だった。
最初は通学路の山道ではなく、一気に国道まで階段を駆け上がった。
国道を慎重に進みながら、通学路を歩く児童を見つけたら警戒して匍匐前進をする。
旧国道を回って学区外に出てしまい、帰り道が分からなくなったこともある。
そのうちに山を突っ切るという強硬手段に出て、遭難しかけたこともあった。
夕暮れ時、森の中の頭上でカラスが鳴く。
周囲は闇に包まれていき、方角も何もわからない中で藪が音を立てた。
「熊が出た!」
誰もが死を覚悟した。
だが、そこに現れたのは立派な角の鹿だった。
鹿は何事もなかったように通り過ぎて行った。
私たちは逃げるようにただひたすらにまっすぐに走った。
一定の方向に向かって走り続ければ森から抜けられると思ったのだ。
大人になってから考えると、そんなわけがないのだが。
光が見えた。
そして、仲間たちは光の中に消えて行った。
私も光の中に飛び込んだ。
体が冷たい。
そう、森の向こうは海だった。
私たちは全員海に浮いていていた。
浜に上がって、昆布を干していたおばさんに話しかけた。
「ここはどこですか? 今、何時ですか?」
ずぶ濡れの私たちを見て、おばさんも驚いていた。
場所を聞いて、学区外に出ていたことに気付く。
ずぶ濡れのジャージで体は重く冷え切っていた。
けもの道を登りきると、町内の公園の裏に出た。
フェンスを乗り越えて帰宅して母に激怒された。
なぜなら弟も同じルートで同じことをやって帰ってきたらしい。
血は争えない。
仲間たちは帰宅してことごとく怒られたらしい。
全員が思った。
犬と母、どちらが怖いか。
結局、探検隊は犬よりも母が怖いらしく解散したのだった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン