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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

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言えないパピプペポ

16/07/18 コンテスト(テーマ):第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】 コメント:1件 海見みみみ 閲覧数:1703

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「この子は言葉をおぼえるのがおそいね。まさか、ちえおくれじゃないだろうね」
 そうおばあちゃんがボクに向かってつぶやいたのは三才のころ。この言葉をボクははっきりおぼえています。

 小学三年生の今、ボクはある病気にかかっています。パピプペポ病と言う病気で『パピプペポ』が言えなくなってしまうのです。『パ』ソコンと言おうとすると『バ』ソコンになるし、『プ』ールは『フ』ールになってしまいます。まだよく知られていない病気なのでへんけんや、さべつもあります。学校の先生の中にも「そんなのは病気ではなくあまえだ」と言う人がいるくらいです。
 おかげでクラスメイトたちからよく「お前パピプペポって言ってみろよ」とからかわれます。その度なんとか『パピプペポ』と言おうとしますが、言葉は『バヒフベボ』になってしまい、クラスメイトたちからわらわれます。
 両親はこの病気をなおそうと、なんとかボクに『パピプペポ』と言わせようとします。しかし病気であるいじょう、言えないものは言えません。おかげでボクは両親からもひややかな目で見られ、家にはい場所がありませんでした。

 そんなボクにとってゆいつのい場所。それが市みんセンターにある図書館です。ここにはいつもタマエお姉さんがいます。
 タマエお姉さんは中学生なのに中学校に通っていません。いつもこの図書館で一人すごしています。タマエお姉さんいわく「わたしにはわたしの生き方がある」そうです。
 図書館にはほとんど人が来なくて、気づけばボクはタマエお姉さんと意気投合し、二人ですごす事がふえました。

 その日、ボクはなきながら図書館の中に入りました。するとタマエお姉さんが「どうしたの?」とたずねてきます。
「じゅ業で先生にしかられて、クラスメイトからもわらわれたんだ。お前はなんで『バヒフベボ』が言えないんだって」
 タマエお姉さんの前でも『パピプペポ』が上手く言えません。パピプペポ病のせいです。ボクはくやしくて、またなみだがあふれてきます。
 ボクがなみだをなんとかこらえていると、タマエお姉さんがやさしい口調で語りかけてきました。
「それじゃあ君のクラスメイトは『マサチューセッツ工科大学』って、かまずに言える? 『東京とっきょきょか局』って、つっかえずに言える?」
 ボクはその問いに多分むりだろうと首を横にふりました。ボクの様子を見て、タマエお姉さんが言葉をつづけます。
「君が『パピプペポ』と言えないのはそれと同じだよ。『マサチューセッツ工科大学』って言えないからテストで赤点になる? 『東京とっきょきょか局』をつっかえたらその日はばんごはんぬきになる?」
 ふたたびボクは首を横にふります。タマエお姉さんはほほえみをうかべました。
「つまりはそのていどって事だよ。後は心の持ち様。自分の中でどう思っているかが大切なの」
 タマエお姉さんの言葉はボクにとってとても心にひびくものでした。
 そうか『パピプペポ』って言えなくていいのか。ボクの心はふっと軽くなりました。

 次の日、小学校の教室に入るとクラスメイトたち数人が声をかけてきました。
「おい『パピプペポ』って言ってみろよ」
 クラスメイトたちはニヤニヤとわらっています。いつもならボクはなみだ目になってうつむいていたでしょう。でも今日はちがいます。
「それじゃあ君たちは『マサチューセッツ工科大学』て言える?」
 ボクの問いかけに対しクラスメイトたちは目を白黒させ、なんとか『マサチューセッツ工科大学』と言おうとします。しかしクラスメイトたちは上手に『マサチューセッツ工科大学』と言えずにいました。
 そのすがたを見て、ボクはかくしんします。人にはできる事とできない事がある。それは当たり前の事で、後はそれを自分の中でどう受け止めるかが大事であると。

 ボクはいまだにパピプペポ病で『パピプペポ』と上手く言えません。でもボクは今日も『パピプペポ』と言えない自分とよりそって生きています。


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このストーリーに関するコメント

16/07/22 こぐまじゅんこ

拝読しました。

ひとにはできる事とできない事がある というのは、ほんとうにそうだなぁ・・・、と思います。
私は、お話を書くのは好きですが、走るのは、苦手です。
子どもたちに読んでもらいたいなぁ・・・、と思うお話でした。

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