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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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手作り弁当の災難

16/07/18 コンテスト(テーマ):第112回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:1726

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 ある日、僕の席にお弁当が置いてあった!
 学生食堂の一番奥の窓際、二人掛けの席が僕らの指定席なのだ。
 友人の石田君は身長185p、スラリと長い脚、眉目秀麗、頭脳明晰、多趣多芸、お茶も点てれば日舞も踊れる。まるでアニメのイケメンキャラみたいで、大学の腐女子たちの間で石田君はまるで教祖様のように崇められている。
 そして僕と彼はBLカップルだと思われているのだ。
 あくまで彼女たちの妄想なのだが、女嫌いの石田君がいつも僕と居るせいでそうなってしまった。
 僕らの指定席、通称『BLボックス』に誰も座らせないため、腐女子たちが見張っているらしい。テーブルに一輪差しの花が飾られ、それぞれの名前がランチマットに刺繍されている。
 お弁当は僕のランチマットの上に置かれていた。
 いつも185pの男の影に隠れて、目立たなかった僕にもファンがいたなんて! わくわくしながらお弁当を開けたら、そぼろご飯と肉巻きアスパラ、唐揚げ、玉子焼き、チーズ蒲鉾、ミニトマト、デザートに可愛いうさぎりんごが入っている。
 全部僕の好物だよ、これは冷食なんか使ってない100%手作りのお弁当だ! 感激した僕はスマホで写真を撮りまくり、お母さんに『今日は家のお弁当いらん♪』と写メまで送った。

「なにやってんだ?」
 そこへ石田君が学食のラーメンを持ってやってきた。
「見てくれ! 手作り弁当貰ったんだ」
 食べる前に自慢しようしたら、フンと小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「手作り弁当っていうのは食べる人を限定して作るわけだ。ヘンに想いが込められてる分、何が入っているか分からない。それだけに怖い、気持ち悪い。知らない人間が作った弁当なんかよく食えるもんだ」
 その言い方が癪に障ったが、僕だけ手作り弁当を貰って悔しいだろ? フフンと優越感の笑いを浮かべる。
「込められてるのは愛なのさ」
 肉巻きアスパラを食べようとした瞬間、「ダメ〜〜〜!!」と叫びながら女の子が走ってきた。「石田様のために作ったんです。席を間違えました」と弁当を僕から奪った。 
 えぇーっ? 箸の先から肉巻きアスパラがポロリ落ちた。
「石田様、どうぞ!」弁当を石田君に向けて差し出す。
「要らない。持ってかえれ」
 そういうと石田君はラーメンをすすっている。その子はすごすごと弁当を持って立ち去っていく。ショックのあまり僕は茫然とそれを見ていた。

 二時間後、母からメールの返信がきた、オカンメールはいつも反応が遅い。
『人のお弁当を食べたらダメでしょう(笑)』
 なんでお見通しなの? 一部始終みてたの? うちのお母さんは千里眼だぁー!

 翌日、僕が『BLボックス』で弁当を食べていると、石田君が大きな風呂敷包みをドンとテーブルに置いた。
 しばし箸を止めて、そこから何が出てくるのか見ていたら三段の重箱だった。なんだこりゃ結婚式の引き出物か? 花見弁当? 桜のシーズンでもないのに……。
「今日は俺もお弁当を持ってきた」
 いつも学食の石田君にしては珍しい。
「なにそれ? ずいぶん大きなお弁当だね」
「うん。好物を詰めて貰ったんだ」
 僕に向って満面の笑みで石田君がいった。
「うわっ! もしかして女の子から手作り弁当か?」
 その質問に石田君は露骨に嫌な顔をした。 
「早く、弁当の中身を見せろよ」
 僕がせっつくと、ゆっくりと風呂敷をたたんでいる、なんか勿体つけやがってイケスカナイ奴めぇ〜。
 ジャーン! 石田君の擬音付きで開けたフタから見えたのは!?
「はぁ?」
 一瞬、僕の目が点になった。
 なんとそこに詰められていたのはおはぎだった。二の重にも、三の重も全部おはぎだらけ。
「俺のお弁当うまそうだろう」
「いやそれは……」
《石田君、それはお弁当じゃなくて……》と言いかけて止めた。もしも、そんなことを言ったら、『おまえの価値観で、俺の弁当にイチャモンつける気か!』と怒られそうだから。
「今朝、お祖母さんがおはぎ作ったから弁当に詰めて貰ったんだ」
 超甘党の石田君は、大好きなお祖母ちゃんが作ったおはぎを次々に平らげていく。いつも不機嫌な顔の石田君から想像できないほど幸せそうな表情だった。
「あっ! おまえもひとつ食う?」
 急に箸を止め、石田君がおはぎを勧める。
「いいえ、遠慮しときます」
 こんな貴重なおはぎを迂闊に食べられない。想いが込められ過ぎて胸やけしそうだ。
「そうか……」
 残念そうな顔をした石田君が「うわっ!」突然大声で叫んだ。ビックリした僕があんぐり口を開けたら、「おひとつどうぞ」おはぎを詰められた。
「にゃにほするんにゃあ〜?」
 口いっぱいのおはぎで喋れない僕を指差し、石田君が大笑いする。
 二人のこのシーンを見た腐女子たちの歓声と同時にカチャカチャとスマホのシャッター音が鳴り響いた。


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このストーリーに関するコメント

16/07/20 霜月秋旻

泡沫恋歌さま、拝読しました。
お、おはぎ…(笑)
さすがに甘いものは食が進まないですね。
面白いお話有難うございます。

16/07/22 泡沫恋歌

霜月秋介 様、コメントありがとうございます。

この話は「石田君と僕らの日常」というシリーズ物です。
超甘党のイケメンだけど、ちょっと残念な石田君と、
彼のせいでいつもひどい目にあう僕と、この二人のストーリーです。

さくさく読めるコメディを目指しています(❃´◡`❃)

16/07/23 あずみの白馬

超甘党の石田くんのおはぎ弁当……、ほかの人は厳しいかもしれません。
このキャラクターがものすごく生きていると思いました。まるで北海道の地方テレビ局に在籍する某ディレクターFさんを思わせるような……、大変楽しく拝読させていただきました。

16/07/25 泡沫恋歌

あずみの白馬 様、コメントありがとうございます。

実は私も中学生の頃に、母親に前日に作ったおはぎを弁当に詰められたことがあります。
ですが、私も石田君と同じで超甘党なので恥ずかしかったけど内心喜んで食べました。
石田君が自分でお弁当と言ってるんだから、おはぎ弁当ということで認めてあげましょう(笑)

16/07/28 葵 ひとみ

泡沫恋歌 さま。

拝読させていただきました。

意外な展開で大笑いさせていただきました。

私の友達にも、超長身なのに「京都喫茶ソワレ」のフルーツポンチとか(^^*)

クリームソーダとか大好きな超甘党な男性がいます(^^*)

なんだか、にくめない友達なんですよね(^^*)

軽快なストーリー展開も読んでいてラクでとても楽しかったです。

現代的で都会的に洗練された短編小説なので、

僭越ながら、コメントと評価させていただきました。

16/08/06 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、拝読しました。

このシリーズ、いいですね。「僕」がお弁当貰うなんて、そんなの有りえないと思っていたらやっぱり。オカンメールが素晴らしい(笑)。
全部おはぎの重箱……重そうですね。でも石田君が幸せならそれでいい♪と思えます。とても面白かったです。

16/08/07 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

若い時はおはぎ2,3個はいけたかもしれませんが、今となっては一個で充分かも。
楽しかったです♪

16/08/24 泡沫恋歌

葵 ひとみ 様、コメントありがとうございます。

そうなんですよ。男の人だってスイーツ好きは結構います。
私の知り合いの男の人にも、羊羹を丸ごと一本食べてしまう甘党がいるんです。
超イケメンで渋いのに・・・甘いものに目がないという、このギャップに笑ってくださいね。

16/08/24 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、コメントありがとうございます。

哀れな主人公の僕ですが、いつか本当にモテル話も考えてみたいと思います。
やっぱりオカンはお見通しだったのです(笑)

おばあちゃんの手づくりのおはぎに目がない石田君は、ギャップ萌えのキャラですよ。

16/08/24 泡沫恋歌

そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

私は今でも2つは、おはぎいけますよ。
洋菓子よりも、どちらかというと和菓子の方が好きですσ(´∀` )ァタシ

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