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ぜなさん

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魔女の舞踏会

16/07/18 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:0件 ぜな 閲覧数:873

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 かぼちゃの馬車を背にして、魔女は城を見上げる。窓から漏れた光が白い城を輝かせる。

 舞踏会の曲が外にまで聴こえてくる。思わず身体が反応する。鼻歌を歌いながら、軽やかに足を動かしてみた。
 目を閉じる。自分も舞踏会の中の一員になったかのように思い浮かべてみる。光が、音が降ってくるようなあの煌びやかな世界にいられるのはほんのごく一部の人間だ。あの子をその中に入れてもよかったのかと不安に思うところもあるが、彼女の嬉しそうな笑顔を見てそんな気分は一気に吹っ飛んだ。灰を被って生きた少女に至福の一時を。せめて鐘がなるその時まで――。

「わっ!」

 不意に身体が自分の思わぬ方向に動いたため、驚いて目を開ける。手が他の誰かに引っ張られる。その先を目で辿っていくと、くすくすと可笑しそうに笑う青年がいた。

「……アルヴィン」
「魔女さん、久しぶりに俺と踊る?」
「足を踏まれても知らないわよ」

 音楽に合わせて二人は城の前で踊った。彼のリードについていくのが精一杯だ。足元を見ながら踊っているので動きがぎこちない。

「……やっぱり動物に変身すると疲れるね。ネズミはまだ楽だったけど馬はちょっと」
「まだ私より若いくせに何言ってるの」
「――俺も、もう若くないよ」

 踊るのを止めて城の鐘を見上げるアルヴィンを魔女は怪訝に見つめる。アルヴィンは、どこか切なげな表情をして一つ息を吐いた。魔女の傍を離れてかぼちゃの馬車を撫でる。

「遠い昔は俺が王子だった。魔女さんがシンデレラを連れてきたのを窓の外から見ていた。だけど俺はシンデレラよりも魔女さんに惹かれた。何でだろうね」
「さあ?」
「魔女さんが去っていこうとした背中を見て、何故か俺は追いかけてしまった。シンデレラを置いて俺は城を出て行った。俺のいなくなった城はすごい騒ぎだったって噂で聞いた。それでも俺は魔女さんと居たかったんだ。もしかして俺に魔法でもかけた?」
「そんな面倒なことはしないわ。私は私の仕事をしただけだもの。あ、でも――――」

 魔女は、もう一度城を見上げて鐘に目を移した。もうそろそろで十二時の鐘が鳴る。すると、魔女は、階段の方まで歩いていき、階段に向かって静かに息を吐くかのように、一つの魔法をかけた。

「                 」

 リーン。ゴーン。リーン。ゴーン。
 鐘の音に魔女の言葉が消える。

「……ねえ、何て言ったの?」

 魔女は、人差し指を立て口元に近づけて、静かに微笑んだ。


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