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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
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革命の日

16/07/18 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1124

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 小学生の頃、私にはコンプレックスがあった。自分の身長だ。他の同級生と比べて、私の身長は明らかに高かった。そのせいでついたあだ名が『巨人』男子からはバカにされ、女子からは影でクスクス笑われた。さらに私は気弱で、悪口に言い返す事すらできない。
 私はいつも、大きな背を丸めて影で生きようと必死だった。

 小学生にとって一番のイベント。それは修学旅行だろう。中でもキャンプファイアーは思春期直前の男女が共に踊る、とても華やかなイベントだ。
 でも私にとってそんな事は関係ない。私は男子どころか、女子からも一緒に躍る事を拒否され、一人隅っこで背を丸めて座っていた。男子達が私を指差して笑う。女子達は哀れみとバカにする視線をこちらに向けてきた。
(もう消えてしまいたい)
 そう本気で思う。そんな時だった。
「どうしたんだ。躍る相手いないのか?」
 そう声をかけてきたのは、生徒から人気の高い養護の先生だった。先生も身長が高いけれど、男だからバカにされる事はないし、逆にかっこいいと言われている。私はずっと前からこの先生の事をズルいと一方的に思っていた。
「放っておいてください」
 そっけなくそう口にする。対して先生は困ったような笑顔を浮かべた後、私の手を取った。
「それなら先生と踊ろうか」
 予想していた答え。でも私に先生と踊る気は一切ない。
「やめた方がいいですよ。先生まで『巨人』と踊ったってバカにされます」
 すると先生は何度か目をパチクリしてから、掴んでいた手をひっぱり、半ば強引に私を立たせた。
「何を言っているんだ。君は高身長だから、とてもセクシーなんじゃないか」
 その言葉に不意を突かれる。
(セクシー? 私が?)
 自分に向けられた予想外の言葉に思考が混乱する。
「君のセクシーさを他のやつにも教えてあげよう」
 そう言って先生は私とダンスを始めた。

 夜空に輝く星々。目の前で熱く燃え上がる炎。時代遅れのラジカセから流れるかすれた音楽。最高の舞台の前に立ち、私と先生は踊る。
 するとどうだろう。地面に伸びるシルエットは艶やかの一言。高身長の私と先生が踊る姿は情熱的で、まさにセクシーだった。
 先生が私をリードしつつ、炎の前で踊る。私はそれについていきながら、自分の体の中で何かが熱くなるのを感じていた。
 気づけば同級生達が私と先生のダンスを凝視している。みんなの視線を独占するというのはこんなに気持ちのいい事だったのか。驚きと感動が胸いっぱいに広がった。

 ダンスを終える。一瞬の間の後、拍手が辺りに響き渡った。
「ほら、みんな君の事を見ているよ」
 先生が笑顔でそう告げる。私は自分のコンプレックスが、魅力へと変わっていく感覚に震えていた。

 それから私は服装などにも気をかけ、まっすぐ背を伸ばし日々を過ごすようになった。今までの自信のなさがウソのように、自信にあふれた姿。
 すると次第に男子からは告白されるようになり、女子からは憧れの対象となった。

 あれから十年経った今、私はモデルの仕事をしている。でもあの日、あの先生の言葉が無ければ、私は今も背を丸めて影でひっそり生きていた事だろう。
 先生の一言と、初めての晴れ舞台となったキャンプファイアーのダンス。あの日はまさに私にとって革命の日だった。


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