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アシタバさん

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お弁闘ですね

16/07/17 コンテスト(テーマ):第112回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 アシタバ 閲覧数:746

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 高校が昼休みになるや、机をくっつけて弁当を広げる二人組がいた。なぜだかピリピリとした空気を漂わせている。そこに眼鏡をかけた女の子がやってきてこう告げた。
「お弁闘を行います」

 弁当を広げて睨みあう二人の女の子、黒川さんと赤城さん。そして、彼女らの傍らに座る青島くんは端正な顔をした男の子だ。クラスメイト達は静かにこの勝負の成り行きを見守っていた。
「美味しいお弁当をつくった方が青島くんと毎日お弁当を食べる。約束忘れないでね」
 黒川さんが赤城さんに念を押した。
「まずは黒川さん」
 眼鏡の子が言うと黒川さんは笑みを浮かべて青島くんに弁当を差し出す。とたんに周りの生徒達がざわついた。弁当箱には大きく立派なステーキがあった。『場違いだ』と言わんばかりの高級感を放っている。どこからか「さすがお金持ち」と称賛が聞こえた。
「わたしと付き合ってくれればこの位いつでもつくるわよ」と黒川さんが青島くんに熱い視線を送る。
「青島くん」
 眼鏡の子に促されて青島くんが慌てて箸をのばす。ステーキを一切れ口にした。
「とても美味しい、です」おずおずと黒川さんの弁当を褒める。
「嬉しい! 今の聞いた赤城さん?」
 黒川さんは挑発的な態度で赤城さんに問いかけたが、赤城さんは何も答えず腕を組んで座っていた。
「次は赤城さん」
 周囲が再びざわめく。弁当にいっさい入っていない、肉が、あるのは野菜の天ぷら、きんぴらゴボウ、ほうれん草のお浸し、ネギ入りの卵焼き、だった。
 黒川さんが鼻で笑う。
「あら、お肉を買えるお金がなかったのかしら」
 クスクス笑いが聞こえた。黒川さんの取り巻きの女子達だ。すると、赤城さんが驚くほど男らしい口調で言った。
「お前ら人を笑う前にまず結果を見ろ」
「え?」
 黒川さんから笑みが消えた。赤城さんの弁当を食べる青島くんの表情が勝敗をありありと語っていたのだ。
「うそ、なんで」
「おい黒川、お前の弁当の付け合わせだが、ポテトサラダのジャガイモは男爵か? メークインか?」
 突然の質問に黒川さんは困惑する。
「いきなり何」
「どうなんだ」
 黒川さんは答えない。
「お前、弁当自分でつくってないだろ」
「何を証拠に」と赤城さんに反論するが小さな声だった。
「お前は料理が出来るなら普段から弁当つくって男子にアピールしているはずだ。違うか? さっきの質問にも答えられないところを見ると、金だけ出して誰かに丸投げしたな」
 それにな、と赤城さんの話しは終わらない。
「そもそも青島は肉が苦手だ。青島を好きだとか言う割にそんなことも知らなかったのか? 所詮は青島の外見しか見ていないんだ。そんなやつに青島はやれん」
 黒川さんは悔しそうに啜り泣きを始めてしまった。そんな黒川さんを気にも止めず、赤城さんは眼鏡の子に話しかけ始めた。
「勝負はあたしの勝ちだ。これで青島は毎日あたしとお弁当だ。いいな、委員長」
 眼鏡の子は黙っていた。
「本当にいいのか。白石」
 赤城さんは眼鏡の子、クラス委員長の白石さんをまっすぐ見据えた。
「青島が押しに弱いのをいいことに、青島の気持ちを無視した馬鹿げた勝負で」
「この勝負を提案したのは赤城さんですよ!」
 白石さんは落ち着きをなくしていたが、赤城さんは冷静なまま話しを続ける。
「そうだ。青島に彼女が出来るのを心配しているくせに自分は一向に告白しない女がいたからな、小学校のころからずっと、いい加減、腹を決めたらどうなんだ」
 驚いた表情の青島くんに赤城さんが告げる。
「青島、今日の弁当は昔白石がお前のためにつくって結局渡せなかったものと同じなんだよ」
 赤城さんは弁当を見つめ少し悲しそうな表情をした。
「赤城さん、もしかして、わたしのために……」
 白石さんの瞳から涙が零れた。
「白石さん」
 真剣な表情をして青島くんが白石さんと向き合う。周りの生徒達も固唾をのみ、赤城さんの鋭い表情が崩れた。
「がんばって白石」

「青島くん」
「白石さん」

「ごめんなさい」
「ごめん」
 ほぼ同時だった。誰もが教室が凍りついたような音を聞いた。赤城さんが声を絞り出す。
「え、何で?」
 まず白石さん。
「気がついたの、わたし本当は赤城さんのことが好きだって、同性だから心のどこかであきらめていたけど、今日のことで覚悟を決めました。付き合って下さい」
 次に青島くん。
「僕だって男らしい赤城さんにずっと憧れていたんだ。でも、憧れだけで終わらせることは出来ない。赤城さん僕と付き合ってくれ」
 白石さんと青島くんの間ではすでに火花が散り始めていた。赤城さんは滝のような汗を流す。今や部外者となった黒川さんは開いた口が塞がらなかった。
 昼休み終了のチャイムが鳴る。生徒のうちの誰かが思いついたように声をあげた。
「では、お弁闘ですね」


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