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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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好奇心と最後のダンス

16/07/09 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:16件 デヴォン黒桃 閲覧数:3949

時空モノガタリからの選評

ダンスというお題からこのようなホラーが生まれるとは……。暗闇の中、「地元のヤツラ」の「ダンス」の遠景の不気味さ。そこから徐々に高まっていく緊張感、洞窟での出来事のインパクトと描写の怖さに脱帽です。ラストも、蹴鞠歌のような静かなリズムがあり、センスがいいなと思いました。

時空モノガタリK

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 僕は親友と、田舎の爺さんのとこに泊まりに来ている。
 と言っても、ほとんど会った事も無かった。

 来年就職するから、今のうちに旅行にでも行きたい、ナンテ母に言ったら、
「アンタ、小さい頃に行ったお爺ちゃんの事、覚えてる? アソコの海は綺麗だから、行くと良いよ。お爺ちゃんのトコに泊まれば安く上がるわよ」

 ダカラ、会った事すらアマリ覚えてない爺さんの田舎に来たんだ。で、今チョット後悔してるトコ。

 電車なんて三時間に一本。乗り遅れてしまったので、着いたのは夕方。ソレから海に行こうにも、暑さのせいで頭が痛い。幸い爺さんの部屋にエアコンは有ったが……爺さんの部屋にしか無かったので、相部屋……爺さんは懐かしそうにしてるけど、愛想笑いで精一杯。親友も苦笑い。
 爺さんが運んで来た刺身や煮魚の手料理。新鮮な魚を捕ってくれていたのだ。レトルト食品に慣れた舌には、トンデモナイご馳走だった。
 二人で目一杯食べた。爺さんは優しい目で見てた。ドコと無く母に似てる気がする。ソノせいか、空腹が満たされる頃には緊張は解けた。

 腹ごしらえも終わったし、海でも見に行って来る、と爺さんに言った。

「行ってオイデ、でももうすぐ潮が引く。潮が引いたら、岩場の洞窟へ入ってはいけないよ。危ないから」

 暗い海に慣れて無い僕たちが、流されてはいけないと、忠告してくれた。

 親友と二人、海へ進むと人影。海は干潮。ソノ洞窟らしい所に三人の男がいた。
「地元の人間?」
「怖い人だったら嫌だから離れようぜ……」

 情けない事を言いながら、洞窟が遠くに見える浜辺に着いた。
「真っ暗だな、街灯すら無い」

 踵を返して家に向かった時、サッキの洞窟で、三人がダンスをしていた。
「ホラ、近づかなくて正解だ。地元のヤツラが踊ってる」
「ナンカ変だな……リズムにノって無いな」
「拍子の狂った動きだな。下手なダンス……あ、一人転んだ」
 滑るように一人が視界から消えた。
「起き上がらないな。あ、また転んだ……残りの一人も転んだ」
 ソレから数分しても三人の姿は消えたまま。
「まさか溺れてないだろうな」
「干潮なのにか?」
 ソレでも心配になった僕たちは、洞窟へ。
 近づくのは怖いので、遠目に見た。何も見えない。砂浜に、岩場、奥の洞窟。
 近寄ってみようと思ったけれど、潮が引いたら行くなと言われたのを、何となく素直に守った。

 戻ると、爺さんは眠っていた。僕たちもエアコンの涼しい風を浴びているうちに、眠ってしまった。

 朝、昨日の事が気になって爺さんに、アノ洞窟の奥は何が有るのかと聞いた。
 ソノ昔、水神を祀ってあった所が、浜に沈んでしまって、干潮の時だけ顔を出すんだと教えてくれた。
「彼処は悪い物が出るから、近づいちゃあ駄目だ」
 と、怖い顔で爺さんが言う。

そう言われては、気になって仕方が無い。干潮の時に近寄ってはいけないなら、まだ潮が引き切らない時に覗いてみよう、と親友と二人で画策した。

 ソノ夜、干潮前。洞窟に行ってみると昨日の三人は居ない。
 奥の方まで覗こうと、海に足を入れて洞窟へ進んだ。
「アイツらこの辺で転んでたよな」
 足下を見ると、キラキラと光る塊が見えた。
「コレ砂金? お宝? ダカラ近づくなって言ってたのかな?」
「おお、少し持って帰ろうぜ、俺欲しいもの有るんだよなぁ」

 手ですくってみると、ヤハリ金。爺さんには悪いが、スコシお土産を頂戴しようと、シャツと手で、砂金を拾い始めた。なかなか上手く集まらないもんだから、夢中に成ってしまった。

「あ、干潮だ、戻るか? ヤバいんだろ?」
 集めた金を胸の小さいポケットに入れながらこう言った。
「馬鹿だな、金を盗られない為の嘘だろ? もう少し集めようぜ、この位じゃナニも買えないぜ」
「そうだな」
 と、親友がしゃがんだ時、砂浜に白い塊。動物の骨みたい。
 ところどころ穴が開いて居て、小さな虫に喰われたみたいに。
 
 ソノ骨みたいな物を拾い上げたら、キラキラと光る金の粒の隙間から、黒々とした粒が次々に沸いて出てきた。

 トタンに一面を覆う黒、黒、黒の粒。洞窟の出口は既に真っ黒になってしまって、砂粒すら見えない。
「痛え!」
 親友が叫んだ方を見ると、アノ夜見た三人みたいに、下手なリズムのダンスをしていた。足下には黒い粒。
「痛えっ痛え、蟻だ、蟻の大群だ」
 覆い尽くした黒の面は、僕の足下にも集まって来た。数十万、数百万の蟻。
「コレが爺さんの言ってた悪い物かよ……」
 さっきの白い塊は骨、アノ夜の三人の喰われたアトの骨……肉食蟻か……
 そう、気がついた時には僕も、肉食蟻の大群を相手に、下手なダンスをするしかなかった。



 あ、親友が転んだ。
 


 あ、僕も……


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このストーリーに関するコメント

16/07/09 クナリ

三人が、この世ならざる何者なのかと思ったら……!
とても静かな地獄絵図、この「ダンス」の発想は素晴らしいですね。

16/07/10 奈名瀬朋也

テーマの「ダンス」を小道具的に消費されるのかと思いきや、中盤での『謎』の部分、そしてオチにも絡めてくるうまさ。

内容もホラー的でおもしろかったです!
「転ぶ」ラストはすごかったの一言でした。

16/07/11 デヴォン黒桃

クナリ様
ダンスのお題を見た時にこのラストだけが思い浮かんでいたのですが形に出来て良かったです。

16/07/11 デヴォン黒桃

奈名瀬朋也様

ラストは直接表現を避けて見ました。
生き残れたかは、読み手にお任せいたします

16/08/06 冬垣ひなた

デヴォン黒桃さん、拝読しました。

何か怪談のような話なのか、どうなるのだろうと思っていたら、オチのインパクトにやられました。海に行くのが嫌になりそうなホラーで、かなり怖かったです。ダンスから転んだのイメージが直接書かれていない分、想像力が増しました。

16/08/07 デヴォン黒桃

冬垣ひなた様
ありがとうございます。
オチの所は読み手様の想像力でいろんなラストになると思い、あえて多くは書かずにしめてみました。
意図が伝わり嬉しいです。

16/08/17 デヴォン黒桃

塚田浩司様
ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。

16/08/21 光石七

拝読しました。
この「ダンス」は怖すぎです……。あまりのインパクトに、心臓のバクバクが止まりません。
締め方も秀逸で、この後のことを想像してしまい、背筋がゾゾゾッとしています。
素晴らしかったです!

16/08/21 デヴォン黒桃

光石七様
感想ありがとうございます。
ラストに心の臓が反応してくれたようで嬉しい限りでございます。

16/08/22 あずみの白馬

拝読させていただきました。
最後の風景を想像すると怖かったです。ダンスをこういう形で消化するのも、お見事と言った感じでした。

16/08/22 デヴォン黒桃

あずみの白馬様
最後を書かずに読者にお任せするスタイルを取ってみました。
その後を想像頂けたなら嬉しいです。

16/08/26 海神

拝読致しました。
字の如く踊らせれているストーリー、とても面白かったです。
終わり方が絶妙で良かったです。

2作とも受賞なるよう願って応援しています。

16/08/26 夜降雪都

拝読致しました。
行ってはいけない理由を知る者は存在せず、人が居なくなった事実だけが存在する。
そんな状態が常駐化した環境。まるでラヴクラフトの世界のようでもあり面白かったです。

16/08/27 石蕗亮

拝読しました。
ラストのやけに落ち着きのある自己認識の、あ、がとても印象的で良かったです。
受賞なるよう私も応援しております。

16/08/27 デヴォン黒桃

海神様
死のダンスを感じで頂けたようで嬉しいです。応援もありがとうございます

夜降雪都様
コメントありがとうございます。隠された秘密を感じて頂いたようで嬉しいです。

石蕗亮様
あ、に目を留めて頂いて嬉しいです。深く説明しないことで読者の想像範囲が広がればなあと思い書きました。
応援もありがとうございます!

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