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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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妖蕎麦屋

16/07/03 コンテスト(テーマ):第111回 時空モノガタリ文学賞 【 蕎麦 】 コメント:5件 石蕗亮 閲覧数:1231

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 夕暮れも過ぎ掛け街灯が点り始める逢魔ケ刻
家路へ向かう人の流れ、または仕事終わりの一杯をひっかけに飲み屋街へと向かう人の波間の中。
 「お〜い、たぬ公!たぬ公って!」
雑踏の中から声に合わせて細い腕が上がる。
「うっせぇ!人前で狸呼ばわりすんな!狐づら!」
ふてくされた顔で男は声の主に意趣返しする。
 「相変わらず固いんだから。」
女は悪びれもせず応える。
「あのなぁ。いくら俺たちが上手に『化けて』いるとはいえ、ばれたら今の時代すぐにネットに流されて居場所を失っちまうんだぞ。もうちっと自重しろよ!」
 「だぁいじょうぶだってぇ。ちょっと変わった趣味嗜好だって思われるだけだよ。」
化狸の心配を意にも介せず化狐はふふんと鼻で笑った。
 「ねぇねぇ、久しぶりに会ったんだからどっかで御飯一緒しようよ。」
「別にかまわねえけど。どこに行く?」
 「あのね、燈無蕎麦行かない?最近美味しくなったって噂なんだよ!」
「へぇ〜。あそこまだやってたんだ。てっきりもう潰れたと思ってたよ。」
そう言うと二人は連れ立って蕎麦屋へと向かった。
 「あんた目の下のクマ酷いよ。」
「あぁ、疲れてくると化けにムラがでるんだよ。そういうお前だってその髪型ぁなんだ。
寝癖かってくらいはねてんじゃねーか。」
 「え!?耳出てる?」
「夢可愛いって外見年齢じゃねぇんだからな。」
 「失礼ね!これでも若い子からもててるんだからね!」
「社交辞令を真に受けるなよ。」
そんな掛合いをしながら街の裏路地を右へ左へ何度も曲がった先に燈無蕎麦屋はあった。
看板に灯りは無いが店内には明りが点っていた。
「相変わらずだな。」
化狸はそう言いながら暖簾をくぐって店の戸を開けた。
「へい、えらっしゃい。って懐かしい顔ぶれだなぁ。」
「よう、狢。息災かい?てっきりもうくたばったかと思ってたよ。」
「そりゃぁこっちの台詞だ。てっきり鍋か毛皮になってるもんだと思ってたぜ。」
 「景気はどぉ?」
「妖に景気もクソもあるか!たまに人間が余計なお世話で看板に灯りを点けてくぜ。」
 「店の看板って点たらその人に不幸が起きるんでしょ?」
「そうそう点けた数だけな。まぁ、好きな席にかけてくれよ。」
二人はカウンターに腰掛けた。
その間に店主の狢は先客の猫又に油の入った皿を出していた。
 「猫又ってなんで油舐めるんだろうね?」
「なんだ、お前ぇ知らねぇのか?あれは魚の油だからだよ。江戸時代植物油は高価だったからな。一般的な油は魚から作ってたんだよ。」
 「なるほどね!そりゃぁ猫まっしぐらだわね。」
「それだけじゃねぇ。栄養価が高いんだ。猫又に成る直前ってなぁ猫としては高齢だ。自力で獲物も獲れやしねぇ。それが人間の家に行けぁ手の届く所に置いてある。そりゃぁ舐めるさ。」
 「そっかぁ!そうだよね!そっか、そっかぁ!」
「お前ぇ幾つになってんなこと言ってんだ?」
 「ん?若く見えるでしょ(ニコリ)」
「外面はな。」
 「かわいくないなぁ。」
「オスだからな。かわいさは要らねぇ。」
そんな掛合いの中へ狢が戻ってきた。
「で、注文は決まったかい?」
「なんでも蕎麦の味が上がったそうじゃねぇか。」
「昔ほどじゃねぇよ。やっぱ人間を蕎麦にしたほうが旨いんだが、そう簡単に人間を食材に出来る時代じゃねぇからなぁ。」
「だなぁ。あれって生きたままの人間から作ってたんだろ?」
「そうそう。死ぬと一気に風味が飛ぶし臭みが増すし。」
 「でも、噂だと昔の味に近いって聞いたよ?」
「あぁ。人間からヒントを得てな。人間擬きを蕎麦粉に混ぜたんだ。」
「人間擬き?」
「そう、これ。」
そう言って狢は大きな鉢植えをカウンター影から出した。
 「これは?」
「マンドレーク。」
にやりとした狢に「ふざけるな!」と化狸は席ごと後ずさった。
「マンドラゴラだと!?」
「おうよ。」
「なんてもんに手ぇ出しやがった!」
 「そんなにやばいの?」
「これも知らねぇのか!?こいつは根っこが人型をしていて抜くと悲鳴を上げる!
その悲鳴を聞いた奴は死んじまうって代物だ!」
 「まじ!?」
「中途半端な知識で語るんじゃねぇよ。」
狢はそういうと牛刃包丁を鉢植えの中に差し込みそのまま引き抜いた。
「!?」
そこにはマンドラゴラの生首がぶら下がっていた。
「河豚と一緒さ。手順通り仕込みすりゃぁ問題ねぇ。
なんでも漢方で高価な高麗人参ってなぁ人間に近い形をしているから人間の体に効くんだと。その亜種の西洋人参が此奴ってわけさ。調べてみたら此奴は成長すると人間の大人サイズになる。そうすると異性を求めて大地から抜け出て歩きピーするとまた土に潜るんだそうだ。人間と似てるだろ?」
どや顔で説明する狢に二人は「「笑えない」」と返した。
しかし、旨いのならと二人は蕎麦を注文した。


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このストーリーに関するコメント

16/07/03 石蕗亮

本所七不思議のひとつ「燈無蕎麦」を現代風の蕎麦屋にした舞台での物語。
化狸と化狐の蕎麦物語はつづきます。

16/07/05 白虎

拝読しました。
人を食べるなんて会話するあたり妖怪なんだなとおもいながらも会話の掛け合いがテンポよく面白かったです。
女性キャラ珍しいですね。

16/07/05 海神

拝見しました。
化け猫がなんで行灯の油を舐めるのか初めて知りました!
納得の説明でした!猫まっしぐらですよ、ホント。
すごく面白かったです!

16/07/05 石蕗亮

白虎さん
コメントありがとうございます。
女性キャラへの挑戦してみましたが如何だったでしょうか。
掛け合いはクナリさんの影響が強いです(笑)
羨ましかったのでやってみました。

16/07/05 石蕗亮

海神さん
コメントありがとうございます。
蕎麦屋なのに油で違和感を感じられないか心配でした。
サイドメニューなんですが書ききれませんでした。
実際舐めてたらしいです。

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