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つつい つつさん

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普通なんてイヤなのっ!!!

16/06/25 コンテスト(テーマ):第112回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:2件 つつい つつ 閲覧数:1210

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 昼休みのチャイムが鳴る。担任の小林が張り切っている。
「今日は月一回の弁当の時間だぞ。楽しめ。取り替えっことかしろっ! なっ、なっ!」
 中二にもなって、弁当ぐらいで騒げるかよって思いながらも仲川麻琴はママがどんなおかず作ってくれたのかドキドキしていた。麻琴のクラスは弁当の時だけ班で机を並べる決まりになっており、麻琴は高木花子と学級委員長でもある諏訪篤志と水森裕太と四人で席を合わせる。諏訪がカバンからコンビニの袋を取り出す。
「コンビニ弁当かよっ」
 すかさず、水森がつっこむけど、諏訪は余裕で返す。
「これ、意外と美味しいんだぜ」
 よく見ると、「三種のチーズハンバーグ夏風味」なんて書かれたお弁当は付け合わせも見かけも豪華だった。
「おっ、高そう」なんて言いながら水森がうらやましそうに弁当を見る。
「裕太は?」
 諏訪が聞くと、水森はなんでもないって顔で「ダイエット」と答える。麻琴は、そんなガリガリの身体で、どこをダイエットするんだよって、自分のぷにぷにの二の腕を見て軽く殺意を覚えるが、まあ、水森の家はド貧乏だからと、広い心でスルーする。
 花子が赤い花柄のカワイイ紙製のランチボックスを開けると、水森が興味深そうに覗きこむ。
「おおっ。やっぱ、文化の違いだよなぁ」
 ランチボックスの中には薄いクレープ生地にチキンや野菜やフルーツを挟んだサンドイッチが入っており、それに緑やらチョコやらのソースが掛かっていた。そう、花子は正式には高木・フォン・花子といって、オランダ人とのハーフだ。普段は、田舎のおばちゃんみたいな顔してるから忘れがちだけど、こういう時ハーフだっていうことを思い知らされる。
「ヨーロッパのほうって、甘いソース好きだよな」
 水森が懐かしそうにつぶやく。麻琴は、たまに水森がつぶやくセレブ発言にイラっとくる。水森家は今では父親が借金を作り失踪し貧乏だが、以前は父親がネットトレーディングで大金を稼ぎ、小学校の頃は海外旅行だ、ショッピングだと、しょっちゅう学校を休んでいた。未だに海外どころか飛行機にも乗ったことのない麻琴は、いろんなことを経験している水森に腹が立つし、両親も祖父母も地元で遠くに親戚もいない自分の家系を恨んでいた。
「篤志の母ちゃんの作った弁当も見たかったな」
 水森が残念そうに諏訪のほうを見ると、諏訪は首を振る。
「うちの夏子さん料理なんてしないよ。だいたい、夜家に居ないし、朝は酔っぱらってるし」
 麻琴は諏訪が自分のママを夏子さんと呼ぶのに憧れていた。だけど、もし自分がママのことを美佐江さんなんて呼んだ日には、家族中がザワザワして大騒ぎになるだろう。それに、美佐江は美佐江さんって柄じゃない。諏訪のママは美人だから絵になるんだってわかっていた。
「じゃあ、いつもコンビニ? 大丈夫? 栄養偏るよ」
 花子が心配そうに諏訪に語りかける。
「まあ、普段は自分で料理するし、そのへんは考えてるよ」
 麻琴は思わず立ち上がり、諏訪を睨む。
「料理までするの?」
 水森が「なに怒ってんだよ」って笑う。でも、花子は同意してくれた。
「わかる、わかる。あんまりなんでも出来過ぎるのって、どうかと思うよね」
 麻琴も激しく同意する。
「それ以上スキル身につけてどうするの? なんになるつもり?」
「えっ? なんになるって」と、諏訪が困惑する。すると、すかさず水森が茶化す。
「まあ、仲川は一つくらいは役にたつスキル身につけないとな。どうせ料理も出来ねぇんだろ」
 麻琴がズバリ言い当てられ顔を真っ赤にしながら水森のイスをガンガン蹴りはじめると、一番前の席でもくもくと弁当を食べていた小林が立ち上がった。
「こら、麻琴、なにやってんだ!」
 座り直した麻琴が弁当を広げると、中はコロッケ、アスパラのベーコン巻きにプチトマト。それに俵型のおにぎりが入っていた。思わずため息をつく。
「おっ、らしいなぁ」
 みんながうなづく。麻琴は口をぎゅっとつむんで、いじける。
「どうせ、平凡って言いたいんでしょ」
「マコちゃん、そんなことないよぉ。美味しそうだよ」
 花子がフォローするけど、麻琴は全然嬉しくない。
「私は、普通じゃイヤなのっ。特別がいいの!」
「弁当に特別ってなんだ? フルコースでも食うのか?」と、水森がつっこむ。
「違うよっ。だって、みんなの特別じゃん。私だけ普通だし」
「え? これが特別なの?」
 諏訪は首をひねって考え込む。
「いやぁぁぁ。 私も特別な設定が欲しいの。人と違うのがいいのっ!」
 麻琴がバタバタ暴れると水森が背後から手を伸ばし、両拳で麻琴のこめかみをグリグリする。
「お前なんか、ずっと普通に暮らせ。普通に働いて、普通に結婚して、普通に母ちゃんやってろ!」
「普通なんかイィヤァァァァ!」と叫ぶ麻琴の声が、教室中に響き渡った。


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このストーリーに関するコメント

16/07/24 そらの珊瑚

つつい つつさん、拝読しました。

お弁当ってその家の事情なりが出るものかもしれませんね。
普通なんかいやだという麻琴が実は一番幸せなのかも。

16/07/31 つつい つつ

そらの珊瑚 様、感想ありがとうございます。
お弁当は作るほうはいろいろ気を使って大変だろうなと、今になって思います。麻琴には、すくすく普通に幸せになってほしいです(笑)

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