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素元安積さん

もともと・あづみと申します。 絵を描くのが好き。 話を作るのも好き。 どちらも未熟ですが、楽しみながら頑張ります。

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好き嫌い

16/06/20 コンテスト(テーマ):第112回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 素元安積 閲覧数:1019

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 私は、クリームシチューが好きだった。

 だけれど、好きなのはクリームシチューのルゥだけ。

 クリームシチューにゴロゴロと入った野菜が大っ嫌いだった。

「いただきまーす!!」

 小学生の頃、手を合わせて食べるクラスメイトを尻目に、私はルゥを恨めしそうに見る。

美味しそうだけど……野菜がいっぱいあって食べられないよ

 今思うと甘ったれた言葉だったんだけれど、その時の私は必死だった。

 苦手な味がする野菜を食べることを極力避けたかった私は、スプーンで少しだけつついてみる。うん。避けられる気がしない。

「何だよ、シチュー嫌いなのか?」

 その時、隣の席にいた男の子が、私に聞いてくれた。

「ううん。シチューは好きだけど、野菜が……」

 私が答えると、男の子はげらげらと笑った。

「子供みたいだな!」

「子供だもん!」

 ムスッと頬を膨らまして怒ると、男の子はニヤリと笑ってシチューの入った器を奪った。

「ちょ、ちょっと!!」

 返してもらおうと両手を広げると、男の子はシチューの中に合った野菜を食べてくれた。

「ほい」

 器を返されると、中には少ないけどちゃんとルゥが残っていた。

「あ、ありがとう!!」

 大好きなルゥが食べれることが嬉しくて、私は必死にルゥを口に運んでいた。

 … … …

 翌日も、その次の日も、一週間後、そして一年経っても、男の子は私の苦手なモノを食べてくれた。

 男の子は本当に食べ物を美味しそうに食べる子で、その子が食べると、何でも美味しそうに見えた。

 そんなある日、私達を見兼ねた新しい担任の先生が、「コラ、好き嫌いしないでちゃんと食べなさい」って私に言った。

 その時は、私はブーブー言っていたし、男の子も、「別に良いよ」って言ってたけど、その日の夜、家では苦手な野菜だらけのクリームシチューが出てきた。

「おかあさん、なんでこんなの作るの?」

「体に良いからよ。それにね、野菜も、しっかりと食べるとすごく美味しいのよ」

 お母さんはムッとして、私から視線を逸らさない。

 お母さんの気迫に勝てなかった私は、嫌々ながらも野菜を口に運んだ。

 実は、あの男の子の美味しそうに食べる姿を見たら、心のどこかで美味しいんじゃないかって思っていた私もいたから。


「……食べれる」

「ね? ほら、玉ねぎとか甘いでしょ?」

「うん!」

 気がつけば、私はあの男の子のように、シチューを笑顔で食べていた。

 … … …

 その日の翌日、男の子はいつものように野菜を食べようとした。

 けれど、その器を奪って私は野菜を食べる。

 男の子は美味しそうに野菜を食べる私に、びっくりしていた。

「食べれるようになったんだ」

「うん!!」

 笑顔で答える私を見て、男の子は困惑気味に言った。

「あっそう。ちょっと悲しいな。お前とのこの時間が無くなっちゃうの」

「え……」

 それってつまり……男の子の顔を見ると、男の子は照れくさそうに笑っていた。

 … … …

 ちゃんとクリームシチューを食べられるように私も、あれから中学生になり、自分でお弁当を作るようになっていた。ちゃんと、野菜もバランス良く添えて。

「おはよう」

 フェンス越しに、野球ボールを持っていた彼に声をかけた。

「おはよう、何かゴキゲンだな」

「うん。昔のこと思い出してたの。クリームシチューのこと」

「懐かしいな。もし食えなかったら、食ってやるぞ?」

「たまにはそれも良いかもね」

 彼はあの時みたいに、げらげらと笑った。

 クリームシチューは、私にとって初恋の味です。


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