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れいぃさん

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やらずの雨だし今日も俺はハロワに行かない。

16/06/19 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:0件 れいぃ 閲覧数:1184

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あー。
雨だ―。
朝起きてすぐに分かった。
ざあざあ、ばらばらいう音が鼓膜を連打する。
ニート歴三年、ひきこもり歴四か月の俺はまた、布団を頭上までひっぱりあげた。
最近雨続きで干していない布団はちょっとくさい。
でも人間の鼻は同じにおい嗅ぎ続けるとそのうち麻痺してくるらしいから、大丈夫だ。

二十三歳でブラック企業をやめてから仕事をする気力もなく、俺はずっと無職のままだ。
最初は友達が遊びに誘ったりしてくれて楽しかったけど、そいつも半年前に結婚して、あんまり連絡してこなくなった。
よって俺は、ここ四か月くらいずっと外に出ていない。実家暮らしだから飯は食えるし、毎月五千円、中学校のときと同じように小遣いをもらっているが、ネトゲ以外何もやる気がしない。
風呂も最初は毎日入っていたのだが、ここのところは一週間に一度の入浴も億劫だ。
オヤジには「早く仕事探せ」とどなられるが、それだって、黙ってやり過ごせばいいだけのことだし。
オヤジは単身赴任で月いちしか帰ってこないからそのときだけ我慢すればいい。

学生の頃は、ここまでなまけものじゃなかったと思う。
むしろへんに意識が高くて、分かったふうな口をきくイヤなガキだった。
新卒で入社した会社がいわゆるブラック企業であることにも、最初は気づかず、栄養ドリンク飲んで徹夜、会社の床で雑魚寝みたいなのを、むしろ誇らしいとさえ思っていた。雨のように注ぐ上司の罵声も、俺たちを思ってのことだと勘違いしていた。残業代がないのも、小さい会社だし軌道に乗るまではみんなで助け合って、とかいうへんなきれいごとを信じ込まされていた。
情報に疎い俺は一年気づかなかったが、うちは有名なブラック企業だった。ネットで見たランキングで毎年ベストファイブに入っていた。
それを知った直後に俺は鬱状態になり、「病休とかはないから」と退職するよう迫られてやめた。やめて、よかったのだと思う。

どんよりとした空から雨は降り続いている。
これだけ降れば上等だろうよ、と言いたくなるくらい。
昨日母親がドアの向こうから、「明日こそは仕事探しに行ってね、お母さん恥ずかしいの」と言ってきたが、こんな雨ではいけないよ。
思えばいつも、こんなことばかりだった気がする。
さぁやるぞ、と踏み出そうとしたらぽつぽつ、ぱらぱら。
みんな万全の装備で出ていくのに、俺だけ傘がない。持ってきてたのに、誰か要領いい奴にさっとパクっていかれたみたいだ。
俺には濡れてまで歩いていくだけの強さはないんだ。
こうやって、布団の中でじっと息を殺しているだけで、精一杯。

やむ予感をまったく感じさせない雨の音を聴きながら、母親への言い訳を、ぼんやりと考えた。


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