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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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五つみ地蔵 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく) ── 第23話

16/06/17 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1498

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 雨が続けば、五つみ地蔵に参れ!
 なぜなら、人の不幸の源には五つの『み』――うらみ、つらみ、ひがみ、ねたみ、そねみ、がある。
 賽銭を上げて拝めば、五つの『み』は霖雨(りんう)に流され、あとに五つの『い』が表れる、つまり嬉しい、楽しい、気分がいい、ありがたい、そしてハッピーい――になること間違いなし。

「ハッピーい? なによ、巫山戯てるわ」
 町を流れる鶯川を上流へと遡ると、鄙びた集落がある。隠れ村と呼ばれ、世捨て人たちが鶯橋の袂の地蔵を崇め、暮らしていると言われてる。
 だがその謂われの文言を読んだ芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事が素っ頓狂な声を発したのだ。
 それも当然。というのも町の川下で男の死体が上がった。検死したところ頭部に激切な打撲痕があった。河床の岩は増水で水面下にあり、落下時に生じた損傷とは考えにくい。
 こう判断した百目鬼刑事、「男は撲殺され、川に投げ捨てられたのだろう。さっ、犯行現場を探しに行くぞ」と芹凛に声を掛け、川沿いを上り来たのだ。
 もちろん捜査は真剣、だが芹凛の疲れはマックスに。そんな時に、賽銭を上げてハッピーい、と読み込み、巫山戯んなとなった。
 しかし、芹凛は気を沈め、「五つの『み』が動機で……、この辺りが犯行現場かも」と勘を尖らせ、視線を地蔵後方へと移す。その瞬間だ、女鬼デカの目ん玉がキーンと光ったのだった。

 こんな初動捜査から始まった殺人事件、マスコミはすぐさま好奇心一杯に報じた。
『福一郎氏、金属バットで撲殺され、川に捨てられる』
 氏は日本で10傑に入る資産家。またいくつもの賞を取った写真家でもある。だが最近、ゴースト・カメラマンがいるとも噂されていた。
 死亡推定は6月14日の早朝。鶯橋上で殺害され、川へと遺棄された。遺体は川下へと流れ、発見された。
 すべては雨で洗い流されてはいたが、僅かに氏の血痕が欄干とバットに現代の鑑識で確認され、犯行現場は鶯橋上と断定。しかし犯人の足取りは不明。さて、逮捕はいつとなるか?

 百目鬼と芹凛、五つみ地蔵まで辿り着き、金属バットまで発見した。お手柄だ。だが署に戻ったご両人、この記事に唇を噛み締める。
 なぜならどことなくしっくり来ないのだ。百目鬼は「14日の朝に」と腕を組み、芹凛は「橋の上で」と目を虚ろにするだけだった。
 こんな状態はその日だけで終わらず、1ヶ月の時が流れた。
 そしてある日の昼下がり、芹凛がドカドカと百目鬼のデスクへと飛び込んで来る。
「これは一郎がよく投稿していたカメラ誌です。ここに今月の優秀作品が」
 芹凛が突き付けたページには、橋の上に女が立ち、その先に落下して行く男が写ってる写真、題名は『雨に落下』が掲載されていた。
「これは明らかに鶯橋、そして女は一郎の妻の可奈、まさに撲殺後の落下の瞬間てことか。それにしても死亡推定の6月14日、可奈には鶯橋にいないアリバイがあったはずだぞ」と首をひねる。
 すると芹凛が指を差し、「ここに撮影日は6月15日の記述が。すなわち14日の犯行は鶯橋とは異なる場所で、可奈が1日遅らせ死体を投げ捨てたということです。そして撮影者は次カ」と頬を紅潮させる。
 百目鬼はその名前を凝視し、「確か次カは一郎の腹違いの弟で、隠れ村の住人だったな。この撮影の腕前からして、次カが一郎のゴーストだったってことか」と今までのモヤモヤが抜け始める。そして消滅させるために2人は沈思黙考に入る。

「コーヒーでも如何ですか?」
 芹凛が沈黙を破った。百目鬼にはわかってる、推理を組み立て終えたのだと。「話してみてくれ」と促すと、芹凛は滔々と述べ始める。その要点とは。
 すべては、うらみ、つらみ、ひがみ、ねたみ、そねみの五つの『み』の絡み合い。
 一郎からモラハラを受けていた可奈は次カと不倫関係にあった。そして次カに異なる犯行現場を入れ知恵され、夫・一郎を自宅で撲殺し、1日遅れで川へと落とした。
 資産家にはなれなかった、その上にゴースト写真家としてだけ扱われて来た次カ、この積年の五つの『み』を1枚の写真に凝縮させようと考えた。そのモデルに可奈を選んだ。
 夫を投げ捨てる暴虐の中で、笑みまで捉えている。実に芸術性の高い1枚のフォトだわ、と。

「極悪人を褒めるな!」
 耳を傾けていた百目鬼は一喝し、「次カは積年の五つの『み』を洗い落とし、次に期待する五つの『い』は可奈を罪人に仕立て上げること。つまり一郎からの相続金が欲し『い』だったんだよ」と口を挟む。
「あら、オヤジ的新説の『い』だわ」と芹凛がプッと吹き出すが、百目鬼は鬼の目をギョロッと剥き、「さっ、五つみ地蔵を崇める次カに、この推理を叩き付けに行くぞ」と雨の中へと走り出した。
「可奈の方が先じゃないですか!」と芹凛は叫びながらも、上司の後を追い掛けるのだった。


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このストーリーに関するコメント

16/07/18 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

5つの「み」は誰しも持ってる感情ですが、それが強くなると殺人事件が起きるのですね。
穏やかな心にこそ「い」がたくさんやってくるのだと信じています。
いつもの名コンビの謎解きが鮮やかでした!

16/08/13 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメント、ありがとうございます。
5つの「み」は恐いですよね。
私も「い」を待ち望んでます。

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