1. トップページ
  2. ナメラスジの向こう

石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

投稿済みの作品

12

ナメラスジの向こう

16/06/06 コンテスト(テーマ):第109回時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:5件 石蕗亮 閲覧数:1795

この作品を評価する

小雨が降りしきる中、私は狐の妖に足首を掴まれ夜の林を引き摺られていた。
これは当然の報い、禁忌を犯した結果なのだ。
もう人の住む世界には戻れないだろう。
辺りの景色が一変する頃、私はそう覚悟した。
「さて、この辺りで良いか。」
狐はそう言うと私の足を離した。
私は起き上がることもせずに一度大きく深呼吸した。
 「覚悟はできております。」
「潔いのぉ。」
 「できれば一思いにやってください。」
「そうしたいのはやまやまだが。」
狐はそう言うと「まずは座れ。」と私を促した。
そうだ。まずは謝らねば。
彼らにとって大切な婚礼に私は故意ではないにしろ、その場に居合わせててしまったのだ。
私は正座し頭を地面に着け両手をついて謝辞を述べた。
「ふむ。興味本位で婚儀を穢したわけではないことはわかったが、お主があの場に居たことは事実。
婚儀はやり直せるものではないし、お主を殺めたとして、お姫(ひい)様の婚儀にこれ以上アヤをつけることもできん。」
 「許してもらえるのか?」
「そうはいかん。相応が無くては我等が害を被っただけではないか。
だからな、お主の運命の差配は神に任せようと思う。
よいか。今儂はお主を此処まで連れてくるのに妖怪や神々しか通ることのできないナメラスジを通った。
お主はもう人間の世界には戻れん。
しかしな。もし神が許し給うのであれば元の世界に戻れよう。」
 「許されなければ?」
「其処らで何者かにでも喰われるであろうよ。」
狐は口角を吊り上げニヤリと笑った。
そして懐から1枚の札を出すと私に差し出した。
「これはな、お主を守る護符だ。今は光明真言しか記しておらん。
これにお主を示す印を書き足し、札を完成させよ。」
 「どうやって?」
「それは縁があれば自ずと成る。さぁ、それを持って人間世界への旅にでるが良い。」
狐はそう言うと霞のように消えてしまった。
札に視線を落とす。
黒い札に白字で丸く真言が描かれていた。
致し方なしと、私は徐に旅することになった。

 林の中を宛もなくまずは進んでみた。
暫く往くと人の丈ほどの岩があった。
凭れ掛かるように座り込んで一息ついた。
 「はてさて、私の印とは一体全体何であろうか。」
札を取り出し見つめながら呟くと
「人間臭いのう。」
背後から声がした。
思わず立ち上がり振り返るが誰も居ない。
 「今声が。」
「やはり人間か。」
声は岩の方からした。
岩の後ろに回り込んだが誰も居ない。
「おい!」
声の方を振り返る。
岩の背面に顔が彫られていた。いや、正しくはこちらが正面なのだろう。
「人間がこんなところで何をしている。」
 「あなたは?」
「見て分からんのか。儂は道祖神じゃ。」
 「神様!」
私は今までの経緯を説明し助けを乞うた。
「なるほどの。ではまずお前の生まれを聞こうか。」
 「○年○月○日です。」
「であれば運命数は六だな。その真言の丸の中に六を表す図を描くが良い。」
 「六を表す図?」
「そうだ。それがお前を表す一標と成ろう。」
そう言われ私は六角形を書こうと思った。
しかし、私を表すという点が気になり、思案の末正三角と逆三角を重ねた六芒星を描いた。
「何故その形にした?」
 「人が正しくあるべき姿が正三角であるとしたら、禁忌を犯した私は逆を向いた三角です。今の私は正しくあろうとする咎人なのでこの形にしました。」
「よし。では次に向かうべきは干支と生まれ月の守護八尊を頼るがよかろう。
辰年の普賢菩薩様と11月の阿弥陀如来様に守護真言を頂き、最後に大日如来様の印である種字を真ん中に頂ければ護符は完成するだろうよ。」
私は道祖神に礼を述べると教えられた道へと進んだ。
菩薩堂と呼ばれるお堂の中に入り、菩薩の前に正座し両手をついて助けを乞うと菩薩像から声がした。
「お前は既に自らの行為を省み、受難という相応を成そうとしている。私はお前を導こう。」
そう言われ促されるまま札を出すと六芒星を囲むように真言が現れた。
私はもう一度深く頭を下げ礼を述べると次の如来堂を目指した。
途中妖怪に襲われるのではと生きた心地がしなかったが、運良く遭遇せずに次の目的地へと辿り着けた。
此処でも同じく如来像の前で助けを乞うと、天井から暖かな光と共に2神の姿が降臨された。
「私たちは既にお前の状況は知っておる故、大日如来共々参った。
人よ、古くからの因習と先達の教えを守り後世へと繋げるのですよ。」
阿弥陀如来はそう言うと六芒星の中に真言を現し、最後に大日如来が中央にその種字を記すと札が眩い光を発した。
それが収まると見慣れない祠の前に立っていた。
細い路地裏の参道を出ると近所の清明堂薬局の脇であった。
こうして私の異界の旅路は終え元の世界に帰ってこれた。

店の軒で店主が私の顔を見て狐のようにニヤリと笑った。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

16/06/06 石蕗亮

日照雨(さばえ)の続編です。

16/07/05 白虎

拝読しました。
もっと内容に厚みがあるのではと深読みしてしまいましたが文字数の都合なんでしょうか、少し何か足りない感じがしました。
お札かっこいいですね!

16/07/05 海神

拝見しました。
晴明堂薬局の店主はやはり狐ですか?
いつも世界観の設定が細かくてにやりとしてしまいます。

16/07/05 石蕗亮

白虎さん
コメントありがとうございます。
正直たりませんでした。しかし、二部にもできず大分端折りました。
札は私を表す曼荼羅です。
以前よく作ってました。

16/07/05 石蕗亮

海神さん
コメントありがとうございます。
晴明と狐の縁を世界観に入れてみましたが書ききれませんでした。
いつか別の機会にしっかりまた書きたいです。

ログイン