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みやさん

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美しい雨

16/06/04 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:0件 みや 閲覧数:923

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”本日は雨、小学生の子供達は学校がお休みです”
気象予報士の声がテレビから流れている。私は出勤準備をしながら雨が降ったら小学生以下の子供達は学校が休校になり外出禁止になったのはいつからだったのかな…と考えながら同じマンションに住む環境研究センターの教授が開発したMIKI TANAKAと私の名前が印字されている電磁波遮蔽レインコートを羽織ると、夫が私のお腹をそっと撫でて電磁波遮蔽ゴーグルを手渡してくれた。

電池自動車に乗り私は仕事へと向かう。レインセキュリティポリス、通称RSP。それが私の仕事。雨が危険だという事はかなり昔から言われていた。当事は酸性雨と呼ばれていたそれは現在では電磁波雨へと進化を遂げた。電化製品や交通機関の多様により大量に排出される電磁波が雨に混じり始めたのだ。電磁波が人体にとって悪影響なのは言うまでもなく、大量の電磁波が雨となって降る事により磁場を形成し、物体を移動させてしまうという現象を起こし始めた。簡単に言えば外に置かれている植木やゴミ箱などがどこかに瞬間移動してしまうという現象。どこに移動するかはその磁場の大きさにより様々だ。対策法として外に置かれる全ての物体を地面に固定させる事により瞬間移動する事を防ぐ事が出来たが、磁場は物体だけではなく人間をも瞬間移動させてしまうという事実が発覚した。

電磁波雨が騒がれ始めた当初、小さな子供達が行方不明となる事件が頻発した。親達は揃って言った。急に消えた、まるで瞬間移動する様に…研究により20kg以下の子供達が電磁波雨を浴びると瞬間移動してしまう恐れがあるという結果が出た為、雨が降る日は法律により小学生以下の子供達は休校、外出禁止が義務付けられた。誤って外に出てしまった小学生以下の子供達を保護するのが私達RSPの任務である。成人及び中学生以上の子供達は日常生活を送る事が許可されているが、安全である保証はあるのだろうか?現在妊娠中の私にとっても…夫は心配しているけれど、私はこの仕事を辞められないでいる。同じマンションに住んでいる環境研究センターの教授に聞いてもその答えはまだ見つかっていない。

パトロールをしていると、道路にしゃがみ込んでいる子供を発見した。小学生以下の子供は外出禁止よ!と叫びながら私はその子供を電池自動車に乗せた。
「あなた何歳?」
その子供は私が着ている電磁波遮蔽レインコートよりも頑丈な、まるでモビルスーツの様なレインコートを着て顔には電磁波遮蔽ゴーグルではなく、顔を全て隠すヘルメット状のマスクを装着していた。
「中学一年生です。…RSPの人ですか?」
その子供はマスクを取った。女の子だ。中学生以上なら外出しても問題は無い。
「RSPだけど…学校は?中学生は休校じゃないでしょ」
「私の母もRSPだったんです。それと、中学生も雨の日は休校で外出禁止だよ」

私は慌てて電池自動車のラジオのスイッチを入れた。DJは今の小学生は雨の日は休校になるから羨ましいね、と軽快にトークしている。私の認識は間違っていないはずだ。
「中学生が雨の日は休校だなんてそんな嘘止めなさい。変なレインコート着ているし、ヘルメットだって…名前は?家は何処なの?」
「法律で決められてるのに…このレインコートもヘルメットも配給されたものだよ」
その子供は真剣にそう言った。私はその子供の奇妙なレインコートに貼り付けてあるタグを見て愕然とした。タグには私のレインコートと同じ様に名前が印字されていた。”MIU TANAKA” 製造年は現在よりも12年未来になっている。電磁波雨は未来では時空までをも移動させる程に猛威を奮っているのか…

「名前は美雨。美しい雨って書くの。家は…」
美雨が告げた住所は現在私が住んでいるマンションと同じだった。美雨は自分が時空を超えた事に気付いていない。私が母親だという事も…私はお腹にそっと手を当てる。降りしきる雨は更に激しさを増していた。この電磁波の量ならきっと未来へ帰れるだろう。家まで送ってあげると美雨に告げ、私は美雨が時空を超えるまでに居たと言う家の近くの公園に電池自動車を走らせた。

「…お母さん、心配してるだろうね」
「母は私が三歳の時に亡くなりました。でも…きっと心配してますね。同じマンションに住んでいる雨を研究している博士が研究用の雨が足りないって言ってたから雨を集めようと思って…私博士の助手なんです」
「…お母さんが死んだのは雨が原因?」
「父は違うって言ってました」
「あなたは…元気?健康?」
「はい。父が母が丈夫に産んでくれたお陰だっていつも言っています」

遮蔽ゴーグルをしていて良かった。涙を美雨に悟られずに済んだ。ラジオDJが明日の天気予報を告げる。明日は今日の雨が嘘の様な快晴です。やった、明日は学校に行ける、そう言って美雨が微笑んだ。


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