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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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一瞬の遭遇

16/06/03 コンテスト(テーマ):第82回 【 自由投稿スペース 】 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1318

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スペースシップは風ひとつ立てること     幸馬は、居合の構えをとると、その場に
なく、岩場の上に着地した。         じっとたちつくした。
イゴォは、窓からのぞむ、緑豊かな大     頭上の枝からはらりと木の葉が舞い落ち
地をみて、はやる気持ちを抑えた。点     てきたのは、それからかなりの時がたっ
在する民家に居住する人間の存在は、     てからのことだった。
すでに上空から確認ずみだった。いま     幸馬の腰の刀が鞘をはしり、宙に弧を描
からその人間たちの狩りにでかけるの     くと、葉は中央からまっぷたつにされて
だとおもうと、熱い血がたぎる思いだ     彼の足元におちた。切った瞬間、彼は目
った。各地におりたった仲間たちに、     をとじていた。肉眼だと、切った木の葉
遅れとるのは癪だった。一人でも多く     は左右均等にはならなかった。目をとざ
獲物を捕らえ、その証として頭蓋骨を     し、心を無にしたとき、はじめて木の葉
集めるのがこのゲームの真骨頂だった。    は物差しで測ったようにきれいに寸断さ
この惑星の人間たちの武力など、とる     れていた。
に足りないことは先刻承知だった。      剣の修行にこの山にこもること五年、毎
刀と槍という刃物をふりまわして戦う     日血のにじむような稽古を重ねた末に、
のが常套手段の相手に、銀河系の彼方     ようやくたどりついた幸馬の剣の境地だ
より飛来するだけの科学力を所有した     った。
イゴォにとって、恐れるものなどなに     これから山を下りて、世の数多の剣豪た
もなかった。                ちに勝負をいどむのだ。
それでも、スペースシップから出る際     幸馬はあふれる自信に輝いていた。
に彼は、透明スーツを着込むことは忘     いま巷で評判の、宮本武蔵と相対しても
れなかった。                負ける気はしなかった。
なんといってもここは、はじめて降り     彼はこれから、山をおりる予定だった。
立つ惑星なのだ。              この山で磨いた腕を、ようやく試すとき
これさえ着れば、だれにも姿を見られ     がきた。
るおそれはなかった。この地上のどん     彼は、意気込みもあらたに、麓につづく
な武器をもはねかえすだけの強靭さを     径をあるきはじめた。
もっているのはいうまでもなかった。     
ただひとつの弱点は、関節および体の     ふと幸馬は、用心ぶかげに足取りをゆ
折り曲げる部分のみが、脆弱な材質で     るめた。
できており、そこを狙われると致命的     前方になにかの気配がする。
だったが、厚さわずか数ミリの隙間を     しかしいくら目を凝らしてもそこには、
よもや攻撃される可能性はゼロにひと     陽ざしに明るく照り映える、岩場のほか
しかった。                 にはなにもなかった。
イゴォは、シップをでると、真昼の地     しかし、何かがいる。
上を歩きだした。              彼は刀の柄に手をかけると、油断のない
前方から、何者かがあゆみよってく      足取りで歩みをつづけた。
るのがみえた。最初の獲物。イゴォは     なにか固いものの存在が、肌につたわ
武者震いをしながら、狩猟用ナイフを     ってきた。そのわずかなすき間から、生
握りしめた。                物の鼓動がもれきこえてくる。そこだ。

幸馬の刀が光を放ってひらめくと同時に、イゴォの腹部をつなぐ透明スーツの隙間を深々とえぐっていた。

イゴォは悲鳴をあげることもなく地面     幸馬は刀を鞘にもどすと、うっすらと目
に倒れ、まさか、とつぶやきながら、     をみひらいた。最初の勝利の相手はしか
息絶えていた。               し、どこにもみえなかった。
                     














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このストーリーに関するコメント

16/06/04 名の無い魔術師

拝読させて頂きました。
時系列を交差表記することでリアルにする面白い描き方でした。
この描写に至った経緯が非常に気になります。

16/06/04 W・アーム・スープレックス

名の無い魔術師さん、コメントありがとうございました。

文章の配置を変えることで、面白い表現ができないかと考えているうち、この作品ができました。二つの文章がつながるところでイゴォと幸馬が一瞬、遭遇する。それがタイトルになりました。

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