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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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雨粒ト、涙一ツ

16/06/01 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:4件 デヴォン黒桃 閲覧数:1622

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 シトシト、シトシト……
 ソロソロ日付が変わろうとスル、コノ街。


 ヒトヒト、ヒトヒト……
 小走りの夜の蝶、雨宿りを諦めた、千鳥足の酔っぱらい。 


 道路を行き交うヘッドライトとテールランプが、絡み合いトケて流れる。
 白く浮かぶ街灯、空の紫に、黒紅色のグラデーションが降りてきた。
 
 突然降り出した雨に、抵抗する術も無く、ゾンブンに濡れてしまった俺。
 立ち並ぶ店も、シャッターが下りている。
 コレ幸いと、勢いを増していく雨粒達から逃げる為に、店の軒先を借りた。

 空はモウ、漆黒に変わり、銀の雨が無数に、空を伝い降りて来る。
 フト、隣に女が居る事に気付いて、目を奪われた。
 シットリと濡れた長い髪は、スコシ赤茶で、白肌色の頬に薄っすら見える涙の跡と、真紅のクチベニが印象的だった。
 
 女の涙がドウにも苦手な俺は、目を合わさないように、と背を向けた。
 と同時に、その女が声を掛けて来た。

「ネ、お腹、空いてナい?」
 背後からのイキナリの提案に、足が固まり立ち止まってしまった。
「一緒に、ご飯、食べてくれナい?」

 恐る恐る振り返ると、優しくも、ドコか寂しさが滲んだ瞳で、人懐っこそうに微笑みかけてくる。
 しかし、コンナにズブ濡れでドコへ行こうと言うのか。
 ソンナ俺の疑問は、女の取り出したレジ袋が答えた。

 何だ、コンビニのサンドイッチじゃないか……
 まぁ、ソレくらいなら付き合ってやっても良いか。
 ドウセ未だ、止みそうにもない。

 グゥゥゥゥ……

 サンドイッチを見ると、強がっていた俺の腹がミットモナク反応した。
 
「うふふ、ホラ、お腹空いてるんでしょ? 遠慮しないでサ……」
 
 女が差し出した二つのサンドイッチ。

「ツナと、ベーコン、どっちが良いかシら?」

 俺は黙って、ツナサンドを摘み上げた。
 シャッターを背にして、早足で通り過ぎて行く人達を、ボウヤリと横目に見ながら、サンドイッチに喰い付いた。

 俺が食べているのを見て、女は安心シタ様に話し始めた。

「ネ、聞いてくれる? アタシね。サッキ、彼と喧嘩して来ちゃっタんだ」

 ホラ、コレだから、関わるのが嫌だったんだ。ナンて声を掛けて良いものか解らずに、サンドイッチを頬張り続ける。
 
「良くある喧嘩……アタシも悪かったんだ……ナンで素直になれないノかな?」


 シトシト、シトシト……
 ヒトヒト、ヒトヒト……
 

 濡れた世界を切り裂くように、コッチへ走ってくる、一人の男。
 
「ヤット見つけた……こんなトコに居たのか、探したよ」
 
 ドウヤラ、コノ女のお相手の様だ。
 ホラな? コウ言う女に関わると、ロクな事が起きない。気マズさで、ツナサンドの味がシなくなった。


「探してくれてたの? ビショ濡れじゃナい……」 
「あの、アンナ言い方して、悪かった、一緒に……帰ってくれるかな?」
「アタシの方こそ、可愛くなくってゴメン……」


 シトシト、シトシト……
 ヒトヒト、ヒトヒト……


 人目を気にもセず、熱いキスをする。
 俺は視線を逃がして、空を見上げる。
 イツの間にか雨は上がって、濃灰色の雲の切れ目には、タンポポみたいな満月が顔を出した。

「ハイ、アタシの相手してくれたから、ベーコンサンドもあげルね」

 俺が選ばなかった方のサンドイッチを、レジ袋から取り出す。
 
 雨に打たれてズブ濡れになった上に、ツマらない痴話喧嘩の愚痴を聞かされ、ウンザリだけれど、まぁ、サンドイッチを二つもご馳走になった事だし、モウ、ナニも言うまい。

「ネェ、サンドイッチ二つも上げたんだよ? お礼くらい言ったらドウなノ?」

 サッキまで、雨と涙で濡れていた癖に、寂しさの消えた瞳でニコニコ笑って、男と腕を組んで幸せそうにシヤガッて……
 まぁ、俺も女の涙より、笑顔の方が気マズく無いし、と、放り投げられたベーコンサンドを貰って、女にお礼を言った。

 



「にゃぁぁん」


「うふふ、じゃあね、猫ちゃん。アリガト」
 ソシテマタ、俺は、日付の変わったこの街を、ベーコンサンドを咥え、歩き出す。


 


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このストーリーに関するコメント

16/06/01 瑠真

後からしたらシンプルなトリックに思えますが、「持って行き方」が上手いんでしょうね。
フツーに読み進んで見事に引っ掛かりました✋

16/06/02 デヴォン黒桃

瑠真様
持って行き方が上手いなんてほめ言葉ありがとうございます。
にこにこしてしまいます。

16/06/04 冬垣ひなた

デヴォン黒桃さん、拝読しました。

妖しい雨宿りの雰囲気に飲まれました。気ままな女に男がフラれる話……と思いきや、まさかの猫さん。私も引っかかりました。
雨宿りのワンシーンが効果的に作られていて、それぞれのキャラクターも魅力的でした。良かったです。

16/06/04 デヴォン黒桃

冬垣ひなた様
思惑通りに引っかかって貰えて嬉しいです。
キャラも褒めて貰えて有難いです。

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