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柊木さん

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片道切符

16/05/29 コンテスト(テーマ):第109回時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:0件 柊木 閲覧数:609

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さあさあ、いらっしゃい。
現代の煩わしい全てのことから解放される旅。
なにもかも棄ててしまいたいそこの貴方様にぴったりですよ。
この旅の出発時間は誰にも分かりません。
ついでに申しますと目的地も分かりません。
さながらミステリーツアーのようでしょう?
あ、わくわくしてきましたね?それはそれは良かった。
だってこの旅は貴方様のためだけに用意されたものなのですから。
他の誰であってもいけません。貴方でないといけないのです。
夢のような旅。私がお渡し出来るのは片道切符のみ。
え?不安だって?何故です?
この旅の最終地点は貴方様にとっての楽園であること間違いなし。
この私が保証しますよ。
だから気軽な気持ちで是非、参加してくださいね。
料金は発生しません。当たり前です、貴方様のための旅なのですから。
持ち物も特に指定しません。あなたが持っていきたいものがあるのならなんでも。
おばあさまの形見でも、大好物の食べ物でも、宝物でもなんでもOK。
ああでも、人間は駄目ですよ?ペットなら構いませんけれども。
人間とペットの違いは何なのか、ですか……。
だって人間は人間ですけれど、ペットはものではありませんか。
ああ、そんな怖い顔しないでください。悪気はないのですから。
ええ、もちろん、ペットは大事な家族です。貴方様の言う通りですよ。
それは私だって否定しません、私にも大切な所謂ペットがいます。
彼は私の大事な友人であり仲間であり家族です。
貴方様の仰ることはよく分かります。分かりますとも。
でもこの世界ではペット、というより動物は“もの”なのですよ。
たとえば──そうですね。
他の国の言語では、動物は“彼”でも“彼女”ともいいません。
動物の代名詞は“それ”なのですよ?ご存知でした?
そのくらい知っている、馬鹿にするな、ですって?
それは失礼しました。ですがこれで納得いただけました?
そうですか、まだ納得いただけませんか。
それならこれではどうですか?
例えば貴方様が人間たちを殺したとします。
ちょ、ちょっと待ってください。お願いですから帰らないでください。
貴方様が人を殺さないことぐらい分かっております。
だって貴方様はとてもお優しいお人なのですから、当たり前です。
これは、例えば、の話ですよ。本気になさらないでくださいよ。
それなら人を殺すのは貴方様でなく、私ということにしましょう。
どこぞの殺人鬼でもいいです。
誰が実行するかなんて重要なことではないのですから。
それなら続きを聞こうですか。ああ、良かった。
ここで貴方様に帰られることなんてあれば大損ですよ。
何のために人間界にやって来たのか……ああ、失礼しました。
こちらの話ですよ、気になさらないでください。

では、気を取り直して……続きを話しましょう。
とある殺人鬼が人を殺した罪で捕まりました。
この殺人鬼の罪は一体何なのか分かりますか?
ええそうです、殺人罪です。さすがでございますね。
では、動物を殺した場合はどうなるか分かりますか?
分からないですか、そうですか。では説明いたしましょう。
それは殺人罪ではなく器物損壊罪にあたります。
まあ、動物愛護法などという法律もあるそうですが、良く分からないので省きます。
今回は別に法律の話をしているわけではないのですから。
ああ、こんな簡単なことなのに随分と手間がかかりました。
さらっと流せるはずでしたのに──。
これが小説か何かでしたら読者様に石でも投げられそうです。
今は私と貴方様二人だけの話、問題ありませんね。
結局この世界では動物はものなのです。
ご理解いただけました?いえ、理解できなかったとしてもこの際理解したことにして下さい。お願いですから。
ああ、本当ですか?ありがとうございます。やはり貴方様はお優しい人ですね。
繰り返しますがこれは出発時間も目的地も分からない夢の旅。
お渡しできるのは片道切符のみ、よろしいですね?
では、近いうちに貴方様とご家族のペット様をお迎えにいきます。楽しみにしていてください。


さあさあ、いらっしゃい。
現代の煩わしい全てのことから解放される旅。
なにもかも棄ててしまいたい貴方様にぴったりですよ。
出発時間は私の気分次第。
目的地は分かりません。だって私は貴方様の魂を食べるだけ。
貴方様は最後まで気づかれませんでしたが私は人間ではありません。
私は人間が悪魔と呼ぶ存在。人間の魂を食べて生きる存在。
貴方様の魂はどのような味がするのでしょう?楽しみです。


ああ、そこの可愛らしいお嬢さん。
夢の国への片道切符は欲しくありませんか?
とてもとても素敵な旅になること間違いなしですよ。



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