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鮎風 遊さん

訪問していただき、ありがとうございます。 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 このためひとり脳内で反応を起こし、投稿させてもらってます。 されど作品は次のシリーズものに偏ってしまってます。。。 ツイスミ不動産。。。 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)。。。 未確認生物。。。 ここからの脱出、時には単品ものも投稿したいと思っております。気が向いた時にでも読んでいただければ嬉しいです。    

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肉じゃが格闘技

12/09/12 コンテスト(テーマ):第十三回 時空モノガタリ文学賞【 格闘技 】 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:3037

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 格闘技とは「相手と組み合い、自分の体での攻撃・防御を行うスポーツ競技」だ。しかし、時の流れとともに、その言葉の解釈はより広がりを持って行った。相手とがっぷり四つに組んで闘う、それはなにもフィジカルなことだけではない。身体を使わずとも、真剣勝負ならば格闘技となった。
 今は2050年、そんな社会通念が定着している。その証拠に、ありとあらゆる格闘技をテーマにしたイベントが流行り、事実人気を博している。

 洋介が朝ふと目にしたチラシ、本日、肉じゃが格闘技を催すと書かれてあった。格闘技にもいろいろあるが、「なんじゃ、これ?」と驚いた。さらによく読んでみれば、こんなことが書かれてあったのだ。

躑躅(つつじ)市と椿(つばき)市の肉じゃが格闘技
 どちらが新世代への本家となり得るか?
 両市の間に本家争いが勃発し、はや1世紀半が経過した。
 そして本日、その決着をつける日がやってきた。

躑躅市の主張
 1901年、東郷平八郎は海軍の鎮守府(ちんじゅふ)長官として躑躅市に赴任した。その時、脚気(かっけ)にかかった水兵が多かった。英国留学帰りの東郷は栄養価が高いビーフシチューを思い出し、コック長に命じた。「ビーフシチューを作れ」と。
 しかし、コック長はどのようなものかわからない。とにかく肉とジャガイモを醤油と砂糖でぐつぐつと煮込んだ。これが日本最初の肉じゃがであり、躑躅市が本家。

 躑躅市はこう主張してきたが、椿市がこれに待ったをかけた。

椿市の主張
 東郷平八郎はその10年前に鎮守府参謀長として椿市に赴任していた。その時すでに官舎で肉じゃがを振る舞っていた。だから紛れもなく椿市が本家だ、と。

 どちらが本家か、両市とも譲らず、なんと150年間も泥沼の肉じゃが戦争が続いてきた。しかし、これに辟易としていた人たちは決意した。ここは「肉じゃが格闘技」で勝敗を決しようと。

「おっおー、これって結構面白そうじゃん」
 洋介には野次馬的な興味が……。しかし、主催者はぴしゃりと付け加えていた。
 今回の肉じゃが格闘技、単に発祥地を決めるだけでない。
『伝統と未来ある肉じゃが』、それにふさわしい本家を決めることにある……と。

 洋介は今、柔道やレスリングの道場が門を開き、また俳句や囲碁等の鍛錬場が建ち並ぶ並木道、そこを会場へと急いでいる。
「ほう、みなさんお互いに研鑽し、日々勝負してるのか。大したものだよ」
 こんな感想をぶつぶつと漏らしながら会場へと入って行った。それからしばらくして、肉じゃが格闘技の幕は厳かに切って落とされた。

 まずはそれぞれからの本家主張のプレゼンがあった。どちらも理屈は通っていて、これだけでは到底決着できるものではない。ならばその味で、長年の戦いに終止符を打てと声が上がった。
 いざ本番、背筋がシャキッと伸びた料理人二人が登場してきた。どちらも甲乙つけがたい風格がある。

「ピー!」、料理開始の笛が会場一杯に鳴り響いた。シェフ二人が厳かに、しかし手元軽やかに肉じゃがを作り始めた。しかもスクリーンに映し出された海軍レシピに沿って。
 このレシピがまたなかなかのものなのだ。

肉じゃが
 材料 : 生牛肉、蒟蒻、馬鈴薯、玉葱、胡麻油、砂糖、醤油 

 所要時間
 1.油入れ送気
 2.3分後生牛肉入れ
 3.7分後砂糖入れ
 4.10分後醤油入れ
 5.14分後蒟蒻、馬鈴薯入れ
 6.31分後玉葱入れ
 7.34分後終了

 どちらの料理人も1秒たりともこのプログラムを違(たが)わせない。まさにがっぷり四つに組んだ肉じゃが格闘技。
 そして、お見事!
 34分でピタリと完了し、万雷の拍手がわき立った。

 結果判定は観衆参加型、だから全員に両市の肉じゃがが振る舞われた。洋介も判定のため味わってみた。どちらも美味い!
 要はおふくろの味を超えていた。まさに水兵さんの脚気を明日にでも治してしまうほどの迫力味だ。
 思わず「ウッメー!」と。

 洋介は迷った。躑躅市と椿市の優劣が付けがたい。
 しかし、一つだけ違っていた。躑躅市の肉じゃがに青えんどう、そう、グリーンピースが入っていたのだ。
 洋介はこれで遂に、思いっ切り屁理屈つけて、「本家は……彩りを良くした躑躅市だ」と軍配を上げた。

 その後、それらは集計され、『伝統と未来ある肉じゃが』にふさわしい本家が発表された。
 それは洋介と同じく……躑躅市。
 しかし、その理由は洋介とは異なっていたのだ。

 躑躅市が使ったグリーンピース、
 それは青えんどうの「Green peas」ではなく、平和の『Green peace』。

 そのメッセージは……争いより、平和へのがっぷり四つにと。

 よって、この肉じゃが格闘技にて、
 新世代への本家は……躑躅市に決定する。


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このストーリーに関するコメント

12/09/13 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

「肉じゃが格闘技」発想がユニークで面白いね。
まさか、肉じゃがでここまでブレイクするとは・・・。

どんなモノでも「格闘技」になるんだと教えられました。

肉じゃがのレシピもありがとう!

12/09/13 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

肉じゃがは私が住んでいる街の近く広島県呉が発祥の地だと、呉の人は言います。
お話のレシピにあるように、水は一切入れないということで、じゃがいもが水っぽくならずに美味しいです。
「グリンピース」オチもいいですね。

12/09/14 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

このお題、結構難しかったですね。
焦点があたり過ぎてて。

とにかく他に絡ませてとなりました。

12/09/14 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

そうなんですよ、呉の花は椿で、椿市。
舞鶴の花は躑躅で、躑躅市と読み替えてみました。

両市仲良くしてくれるといいですが。

12/09/23 ドーナツ

市の主張が面白い!

今、、トラぶってる問題をほのめかしてるような。
こういう発想、すごい好きです。


肉じゃが格闘技、出場したいですね。

肉じゃがは世界を救う かな(笑

13/11/29 鮎風 遊

凪沙薫さん

東郷平八郎のビーフシチューが肉じゃがになった。
これは実話です。

舞鶴市と呉市が肉じゃが戦争をしている。
これも実話です。

よろしく。

13/11/29 鮎風 遊

ドーナツさん

コメントありがとうございます。

その通りですね。
肉じゃがが世界を救う。

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