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つけもンさん

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逃避行と呼びますか?

16/05/23 コンテスト(テーマ):第109回時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:1件 つけもン 閲覧数:1055

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まさゆきは口笛を吹くのを止めた。よく、何か諦めたときや、決心がつくと、急に世の中を達観してるみたい感じがして、気分が楽になって口笛を吹いた。だか、母の言いつけを思い出したからであろうか、

「夜、笛をふくと蛇がでるわよ」

まるでプログラミングされてるかのように、母によく言われたもんだ。小うるさいと思っていたこそ、今となっては、懐かしいものになるというのはご愛嬌みてーなもんだ。家賃5万4000円の四畳半のボロアパートのなかじゃ、なんも叱るやつなんかおらんのにな。

部屋のなかには、古くなり、延びきった牽引ロープがだらンと掛かっていた。
でもさ、みんな一度か二度くらいは思ったこと、あんだろ?ただ、そいつを行ったか、行ってないかの違いだと思うんだ。
必ず死ぬと書いて、必死と読む。死ぬほどやったかと聞かれば、そいつでは、死んじゃいねーから、やってはないんだろうな。でも、自分ではやったつもりなんだけどな、なーんてなことを考えるのは、もう何度目だろうな。眠れない夜の回数と同じくらいだ。結局、生きてる間は頑張るべきなんだ。これでも、わかってるつもりなんだぜ。



どーせ、暇だし実家にでも、帰るとするかな。ちょっと気になるしな。たしか、この路地を越えて、その先にある、えーっと、ああ、ここだ。なんも変わらねぇな、うすぎたねぇ猫の置きもんも錆びきった自転車も。中に入るか、おいおい開きっぱじゃないか、まぁ田舎だし多少無用心でも大丈夫か。

「ただいま。」

なんも返事がねぇ。いねぇのかな。台所には、汚れちまってる食器がたまっていた。刺身か?わさびと醤油のあとがついてたからな。もう茶碗に残った米粒はカピカピに変わっている。蛇口から水滴二粒落ちて、静寂がぶり返す。

「なんだ、いるじゃねぇか」

父と母を寝室にいた。前会ったときより、肌がたるんでいるように思える。としのせいかな?まぁ、俺も、もう30だ、あたりまえちゃーあたりまえか。
父と母の口元は、緩み、笑ってるように見えた。許してくれたんかな。こんなバカな息子を、

その日はそのまま実家に泊まった。いや、不思議と眠れなかったから、正確には泊まっていねーか。
でもさ、やはり実家だからかな、いつもの寝る前にくる、焦燥や後悔はなかった。もう、何年も続いたから友達みてーなもんだったんだかな。いざ、いなくなると妙な寂しさがあるな。

「んじゃあ、そろそろ行くわ」

相変わらず、父と母は何も言わず見送ってくれた。この感じは、助かる日もあれば逆につらい日もあった。ありがとうな。前に家出るときは、しんどそうな足取りで、その前は、勇み足だったが、今は、泰然とした足どりだ。やっぱり、年月は人を救うもんだな。



僕は、これから旅に行くよ。終着点は既に決まってますが、愁い顔なんかするもんか。これが正しいと思っているしな。
ああ、正しいと信じ込んでいるからな。
ただ、唯一、罪悪感だけは後ろから、ひたひた、ぴったりくっついてくるんだ。まるで蛇のようにさ。


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