1. トップページ
  2. 初めて出会う大親友。

れいぃさん

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

初めて出会う大親友。

16/05/21 コンテスト(テーマ):第109回時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:0件 れいぃ 閲覧数:720

この作品を評価する

 早朝、見ず知らずのそいつと待ち合わせした。
 LINEのIDもメアドも知らないし、電話番号も分かんなかったから、とりあえず、オヤジの遺した手紙にあった住所にハガキ送った。手書きなんてひさしぶり、でも書くことなんて全然ない。相手は知らない奴なんだから。
 単刀直入に、
「先日うちの父が亡くなりました。で、出てきた手紙にあなたのことがありました。俺が死んだら、俺のいちばんの友達の息子に連絡をとってくれって。なんか、あなたと旅に出てほしいそうです。父親たちが昔、俺らくらいのころにやったように。
 俺たち会ったことないのにこんなの、へんですよね。いきなりだし、迷惑だったら無視してください。
 一応、オヤジの最後の希望なんで、俺としてはかなえてやろうかなと思って連絡しました。電話番号とか載せときます」
 と、書いて送った。
 返事は期待していなかった。
 事件とかもあるこのご時世、知らない奴にのこのこ会いに行くバカは少ないだろう。住所も隣の県だし、イタズラと思われてもしかたがない。
 なのに、相手はその少数派だったのか、メールを送ってきた。
「はじめまして。
 野村才介の息子の修作です。父は、俺が幼稚園のころ亡くなってます。
 実は僕たち、三歳のころ一回引きあわせられてるらしいけど、覚えてないですよね。
 父は高木さんのこと、すごくよく話してたそうです。きっといちばんの友達だったんでしょう。
 僕たちがそうなれるかは分からないけど、一度、旅してみませんか。
 二人のお父さんの、供養に」
 マジかよ。
 初対面の男同士で旅なんて。
 十代最後の年なのに、最大の挑戦がこれでいいんだろうか。
 迷ったけど、オヤジの遺影が「行け」と言ってるようなので、俺は旅に出た。
 待ち合わせはお互いの家の中間地点。行き先は二人で決めた、猫背山。猫の背中みたいになだらかな山らしいから、登るのもそこまで苦労しなさそうだ。
「あ、こんにちは」
 待ち合わせ場所にいた小柄な青年・修作は、特徴のない平凡な男だったけれど、キラキラした目は印象的だった。
「どーも、高木幸一です」
 軽く挨拶して、ぎこちなく笑いあって、俺たちは駅に入り、電車を待つ。
 オヤジたちは社会人になってからもあちこち電車や車で行ってたらしいが、俺も修作もほとんど、旅行の経験がない。長い移動時間何を話したらいいか分からなくて、とりあえず家族の話をした。
「僕は、母と二人暮らしです」
「ふうん、実家から大学通ってるの?」
「あ、専門学校で」
「専門かぁ。何習ってるの?」
「トリマーになりたくて。ペット関係の勉強してます」
 これじゃなんだか、面接みたいだ。
 修作は緊張してるみたいで、ちらちらとよく、窓の外を見ていた。
 俺も初めて行く場所だから、移り変わる景色が新鮮で、ながめていると無言になった。
 父親同士はそりゃ大親友だったかもしれないけど、俺たちは今日会ったばっかりだ。
 父親のこと自体、修作にはぼんやりとしか記憶がないという。
「ところで、行き先決めるとき、なんで猫背山推してきたの?」
 観光地として有名でもないし、ネットで見たらけっこう地味なところだった。
 てっぺんがけっこう広くて、頂上で飯食ったりするのにはよさそうだけど。
「母に相談してみたら、父が昔、高木さんと行ったらしいって言ってたので」
「そっか。修作くんにとって、お父さんってどんな人だった? 俺のオヤジは、何でも笑い飛ばす人って感じだったんだけど」
 何か失敗をとがめられても笑ってすませるようなとこがあって、でも憎めないというか、いなくなったらいなくなったですごく寂しかったりする。
「そうだなぁ。僕はたぶん、自分とは百七十五度くらい違ってるひとだったんじゃないかって。母の話とか聞いてると」
 自分はまじめだけど、父親は直感で動いているひとだったんだろう、と修作は言う。
「百七十五度?」
 電車が止まって客を降ろしてまた乗せるのを見ながら、ふと引っかかったことを訊く。
「そうですよ、百七十五度。親子だから、ちょっとは似てるんだろうしと思って」
 修作は笑った。
 カタイ感じはするけど、おもしろい奴かもしれない。
 発見したところで、降りる駅に到着した。

 猫背山に挑戦するのは、とりあえず翌朝の予定だ。
 今夜はふもとの旅館に一泊して、同じ部屋で眠る。
 安い素泊まりプランなので、晩飯はついていない。
「どうする? 何か買っていく?」
 一軒だけ開いていたスーパーに寄ってみたけど、弁当類はきれいに売れていて、晩飯によさそうなものはなかった。
「どうしよっか」
「これにしません?」
 再び俺が訊いたとき、修作がカップ麺を持ってきていった。
「いいよ」
 旅館の縁側で星を見ながら、並んでカップ麺食うのも悪くない。

 終


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン