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星野けいさん

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名も知らぬ旅の同行者

16/05/19 コンテスト(テーマ):第109回時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:1件 星野けい 閲覧数:1123

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ある日突然その人は現れた。
たいして話をしたわけでもなく、何に惹かれたのかもわからない。
だが、今私はその人と旅をしている。
目的など聞いてもいない、行き先さえも。更に言うと、旅の同行の許可さえ貰っていないし、この人の名前も知らない。
この人も、自分の目的も、行き先も、名前も言わない。
同行は許可された訳ではないが、拒否てもいない。私はそれを都合よく解釈して、ただ、この人の後ろを歩いている。

夜になると二人で星を見る。この人は旅をしてきたというのにコンパスも地図も、自分の位置を認識できるものなど何一つ持っていなかった。
星を見て方角を確認しているのだという。どこへ向かっているのかは相も変わらずわからないが、私は膨大な量の星の知識を得た。
この人は星のことになると昼間の寡黙な姿からは考えられないほど饒舌になるのだ。
昼間に山道を歩くとき、いくら私が息を荒げようともこの人は振り返りもしない。風で折れたであろう先の鋭い枝に注意を促すこともない。勝手に着いて来ているのは私の方であるし、そのことについて不満はない。
距離が開けば少し先で空を見上げ佇んでいるし、見えにくい場所に崖があるような命に関わる危険のある場所では、呟くような声で「崖」とだけ声を発する。

私とこの人の間に全く絆がない訳ではないようだ。
私たちは友人とも仲間ともいえないが、他人以上の何らかの関係であるのは間違いない。


この人の目的は相も変わらずわからない。もしかすると、この人自身もわからないのかもしれない。私と同じように、あるに突然現れた旅人の後を追っただけなのかもしれない。
いや、行き先や過去のことなどどうでもいい。今はただ、この人と共に旅を続けるだけだ。


ある日突然、名前も知らぬその人は消えてしまった。
行方など、とんと検討もつかない。つくはずがない。
突然の別れであったが、不思議と不安は無かった。あの人と同じように、星を見て旅を続けた。

一人で旅を続けて随分経った。
数日前から私の後ろを着いてくる者がいる。夜になると星を見る。
随分と物覚えが良いようだ。


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