1. トップページ
  2. 東京オリンピック

イルカさん

 素敵な物語を想像したりして、書けるのは  人だけ、そんな作家さんに 憧れます。  宜しく お願いします。

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

1

東京オリンピック

16/05/08 コンテスト(テーマ):第107回 時空モノガタリ文学賞 【 色彩 】 コメント:0件 イルカ 閲覧数:900

この作品を評価する



 近所の田中さん宅の玄関前に人が集まっている。何だろうと思って、おばさんに話しを聞くと、新聞広告のクイズに応募したカラーテレビが当たり、電気屋さんが来て屋根にアンテナを設置しているそうだ。
田中さんは、十月に開催される東京オリンピックの開会式を見ようと近所の人に声をかけた。まさかカラーテレビで見られるなんて、想像もしていなかった。


開会式前日は大雨だったが今日は嘘のように、晴天になっている。
近所の人がテレビの前に集まり、食い入るように画面を見た。
 東京オリンピックマーチが会場に鳴り響きわたり、各国の選手の入場行進が始まった。先頭はギリシャ、各国選手団の入場に、会場から拍手が起こった。この日をどんなに待ちわびたことか、終戦のどん底から、よくここまで、立ち直ったと近所の人は感慨深げに話している。
 画面の色鮮さは、言葉にならないほど、美しかった。それより、堂々とした選手の姿に
目を奪われた。私は何をやらしてもダメな落ちこぼれだ。
 来年は高校受験なのに、勉強が出来ず悩む毎日だ。教科書は、どれも外国語で書いているみたいで、さっぱり分からなかった。


 母は私の様子を見かねて近所で大学の数学科に通う金沢孝子さんを家庭教師につけてくれた。
 孝子さんは、簡単な数学の問題から始めたが、さっぱり分からなかった。
「花子は大丈夫でしょうか」と母が聞くと、
「どうしようもないね」と家庭教師を辞退すると思っていたが、「頭はいいですよ」と以外な言葉に、自分でも驚いた。
今まで、一度も言われた事がなく、嬉しくて、仕方なかった。
 勉強は、数学と言うより算数だった。簡単なドリルをして、後は、数学の不思議な話しを聞かせてくれた。その話しがとても面白くて、毎回聞くのが楽しみになった。
 孝子さんは、問題のどこが、分からないのかを、丁寧に教えてくれた。

 ある日、学校でいつも私を馬鹿にする。
山田君に、数学のテストで勝ったのだ。
「カンニングだ?」と大声で言いふらしたが、つぎのテストも、またつぎもだ。
 山田君もそんなに数学が得意ではないが、私をいつも馬鹿にしていた。
次第に、山田君は馬鹿にしなくなった。
 悪口を言う山田君をへこました事が快感だった。


 クラスの友達の泉ちゃんが、私のテストの点がよいのが、羨ましいそうだった。
 泉ちゃんは、数学が大の苦手だが、運動神経が抜群だ。この前の市のソフトボール大会で、優勝したのだ。
信頼していた泉ちゃんに、
「馬鹿と思っていたけど」と言われ、思わぬ
言葉に私の心を傷ついた。
一番言われたくない言葉だったからだ。
 その日から彼女と口を利かなかった。悔しくて、もう勉強を始めた。次第にクラスの子も、見る目が変わった。


夏休み前に学年でソフトボール大会がある。泉ちゃんが、キャプテンだった。
 優勝しようと、みんな張り切って放課後
練習をした。
私は球技が苦手だ。守備はライトだけど、エラーばかりをした。どうかボール飛んでこない様にと思っていると、飛んできて、また
取れなかった。
泉ちゃんが近寄って来た。
たぶん、ぼろかすに言われると思った。
すると、ボールの受け方を親切に教えてくれた。
そうすると、ボールを取ることが出来た。
「ありがとう。泉ちゃん」
「友達だろう」と言ってくれた。
 あの日から初めて話しをした。
 練習が終わり久ぶりに一緒に帰った。


「あんな事いって、ごめんね」
軽い冗談のつもりだったけど考えたら酷いことを言ったと後悔し、いつ謝ろうかと思っていたそうだ。
「もういいのよ」と言って、やっと仲直りが出来た。
 私は、オリンピックをカラーテレビで見た
話しをすると、泉ちゃんは、選手と握手して感激したそうだ。
 どうして数学が出来る様になったのかと聞かれた。泉ちゃんは、ソフトボールの強い高校へ進学したそうだが、このままでは行けないと、深刻そうだつた。
 私は秘密を教えると、一緒に勉強したいと言って一緒に教えてもらうことになった。
二人で教えてもらったほうが、分かりやすかった。

 そんな日々を過ごしていたら、泉ちゃんも、成績が上がった。
 進路懇談で、私も泉ちゃんも、この調子で、頑張れば、高校に合格すると言われた。
 嬉しかった。
 今まで灰色だった世界が、だんだんと鮮やかな明るい色世界に変わっていくのが分かった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン