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ねこちさん

comicoノベル公式『紅茶つれづれ』執筆。 書き物の幅を広げるため、日々勉強中。   twitter:@nekoti3 http://novel.comico.jp/author/1728422381/

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好きな色を教えてください

16/05/07 コンテスト(テーマ):第107回 時空モノガタリ文学賞 【 色彩 】 コメント:0件 ねこち 閲覧数:756

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 「好きな色を教えてください!」

 肩を震わせ、うつむきながら。勇気を振り絞ったって感じの彼女の質問に、俺は正直拍子抜けした。

 期待してたんだ。話があるから、放課後、屋上に来てほしいって、こっそり耳打ちされた時。
 『友達』よりは親密。だけど決して『恋人』じゃない。そんな、あいまいな関係がズルズル続いて、もう半年。
 ようやく二人の仲が進むんだって。手を繋いだり、ギュッとしたり。……キ、キスなんかもしちゃったり?
 いろいろ想像して、ウハウハしてたってのに。なんだよ、好きな色を教えてって?!

「そんなん聞いて、どうすんの?」

 やべっ! 不機嫌なのが、もろ口調にでた。
 けど彼女は、そんな俺をスルーして、屋上の緑色の床をつま先でトントンしながら口を開いた。

「どうするって……。それは内緒だよ」
「はぁ!?」

 意味わかんね。
 頭をバリバリかきながら彼女を見おろす。
 下から吹き込む風が彼女のスカートをちょっとめくって、普段は隠れてる太ももが夕日で眩しく照らされた。
 鮮やかな白い肌が目に焼きついて……。ナイス、風!

「う〜ん、黒がいいな。クールで知性を感じるというか。大人っぽい!」
「黒ね。青色って予想してた」

 言われて、青色をリアルに想像する。

「青は、ないな」
「そうなの? カバンは青色なのに?」
「あぁ」

 青には惹かれない。けど……。

「赤も捨てがたい! 情熱的っていうか、気合いが入る感じがする」
「えっ、赤? 赤いもの、全然持ってないよね? 意外すぎるんだけど」
「その意外性ってのが、いいんだよ!」
「ふ〜ん……」

 力説する俺とは対照的に、彼女の返事は素っ気ない。というか、スカートがめくれないよう両手で押さえるのに必死だ。
 女ってのは大変だな〜って、ちょっと同情する一方、つい視線が引き寄せられちまうのは、男の性(さが)だし、屋上を指定したそっちが悪いんだ、って頭の中で弁解した。

「意外性を活かすため、普段は白でいてほしい」
「普段は白?」
「清純だし」
「……清純?」
「それかピンクだね。女の子らしい、ひらひらフリルの可愛いピンク。でもって、たまに透け透けのセクシー系で攻めていただくとグッと燃え……」
「ちょっと、なんの話してるの!」

 彼女が声を荒らげる。

「なんの話って、好きな色だよ、好きな色! 知りたかったんだろ?」
「あんたが答えてるのは好きな色じゃなくて、好きな下……」

 言いかけて口を閉ざす。怒ったようなアヒル口で、俺を睨みあげて……。
 なんだよ、この可愛い生き物は! こんちくしょう!
 再度、頭をかきながら、逃げるように視線を外す。ちょっとからかってやろうと思っただけなのに、何故だか俺も恥ずかしくなってきた。

「で、なんなの? 急に好きな色なんて聞いて。そんなん知ってどうすんの?」

 あぁ、声が、うわずる。さっきと同じ質問してるよ俺、カッコわる。
 でも、このまま彼女にだんまりされるほうが身に堪えるし……。

「え〜っと、その……。好きな色で性格がわかるっていうじゃない? だから……」

 消え入りそうな彼女の声。
 なんだよ、それ?! 『友達以上』の関係が半年も続いてんだぜ。俺の性格まだ理解してないって?

「お前、俺の性格、よく知ってんじゃん」
「うん……」
「お前の知らない俺なんて、残り一つしかないんだけど」
「……あるんだ」
「あるよ」

 あと一つ。あと一つだけ、彼女の知らない俺がいる。

「知りたい?」
「……うん」

 尋ねると、彼女がコクンとうなずいた。
 俺はバカだ。ずっとずっと、アプローチを待ってた俺は大バカだ。やっぱここは、男がバシっと決めるべきなんだ。
 低くなった夕日が、彼女の全身を赤く染める。その頬を、さらに真っ赤にするような一言を……。言え!







「だったら、俺の彼女になってほしい!」


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