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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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猫は秘密諜報部員

12/09/08 コンテスト(テーマ):【 猫 】 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2116

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「天宮涼さんですね」
「わあ! パ・パ・パソコンが金色に光ったあ」
「パソコンの画面をお借りしてお話しています。決して怪しいものではありません。私は先日、めざしを盗んで3丁目でおばさんに追いかけられている時、あなたに助けていただいた、亀じゃなくって、猫です。猫のきんと申します」
「ね・ね・猫化けえ〜」
「そう驚かないでください。これはほんにゃく器というもので話しかけているだけです。本体はすぐ傍の窓辺におります」
 涼が恐る恐る部屋の窓に目をやると、窓枠に金色の猫の姿があった。それを見た涼はまた驚いた、猫が金色に輝いていたからだ。
「あっ、名前はきんですが、普段は決して金色ではありません。ほんにゃく器を使っていると発光するのです。ちなみにきんという名前は長生きの金さん銀さんにちなんで親がつけてくれたものです。もうすぐ敬老の日ですが、私の誕生日はその祝日でした。どうでもいいことでしょうが、話さないと気が済まないもんですから、すみません」
 涼はわなわなと震えているが猫は気に留めず話している。
「ほんにゃく器はPCやモバイルを媒体として猫たちと会話が出来る機器です。エヘン、実は私が発明したものなんです。私は由緒ある猫又家の三毛猫として生まれましたので非常に頭脳が優秀なのです。あなたにはどうでもいいことでしょうが」
「ど・どうして、僕なんだ?」
「だから恩返しですよ。助けていただいて知らん顔は、由緒ある猫又家としてそれは許されませんから」
「許す、許すから、帰ってください」
「ですが大変儲かる話なんですよ。このほんにゃく器を使って日本で秘密諜報結社を設立するのです――ただし断ってきますが日本限定です。なにしろ猫又家は鎖国時代の古い家系ですので国際活動が苦手でして――それはさておき、いわゆる猫を使いスパイ活動を商いにするのです。元来、猫というものは飼い主さんから秘密を聞いているもの、というより聞かされているのですが、ですからほんにゃく器を使いその秘密を知って、相手に売りつけるのです」
「それって恐喝……」
「そういう言葉で言い換える方もおられますが気にしないことです」
「気になります! そういうの僕、苦手だし」
「何をおっしゃっているのです。秘密が知りたい相手に情報を売ったっていいのですから、それなら恐喝にはなりません」
「秘密なんて……」
「凄い秘密があるかもですよ。例えば3軒先のMさんの奥さんはダイエットしていると吹聴しながら隠れて焼き芋を食ってます。後ろめたい気持ちを、飼い猫相手に話しています。人間は秘密を心に秘めておくのがとても苦手な動物なようで、時々誰かに漏らしたい衝動にかられます。そういう時、猫に聞かせ胸のつかえを取るのです。そういう人間の何と多いことか、秘密を告る、猫なので猫るとでも言いましょうか。隣家の家計や、夫の素行調査など、探偵を雇わなくて猫がいます。猫ならその家に簡単に潜り込めます。階上だってOK」
「そういえば、ここ2階だった、窓枠にいるってことは?」
「ちょろいもんですよ、猫又ですから、後10年もすれば、ほんにゃく器なしで話せるようになります。猫又というのはそういう家系です、ご存知でしょう?」
「いえ、ご存知じゃないっす」
「では、今から存じてください。話を戻しましょう、恩返しにほんにゃく器を使って大儲けですよ」
「いや、恩返しはいらないですから、汗」
「でも、それでは、一族の恥になります」
「そんなあ……、本人がいらないって言ってるのに」
「では、あなたの密かに恋している香澄ちゃんの気持ちを聞いてきましょう、それならいいでしょう」
「何で、僕が香澄ちゃん好きってわかったの?」
「だから秘密は猫が漏らしますから、香澄ちゃんの家の猫、小夏からの情報です。小夏はおしゃべりですから、近隣の猫はみーんな知ってます。涼くんが、先週放課後、彼女にメルアド聞いたってこと。その返事まだでしょう、真意を聞いてきてあげますよ」
 見つめるきんの眼差しが熱い。涼は仕方なくコクリと頷いた。涼自身、香澄から返事がないのでほとんど諦めていたのだが、はっきりさせたいと考えていた。きんがスッと消えるとPCも黒い画面に変わった。涼は猫に運命を託したようで落ち込んでため息をついた。
「これは夢かもしれない、白昼夢? ギョ、それって病気? 僕は危険な病かも、うーん」
 そんなことを考えていると再びPCが輝いた。
「お待たせしました。香澄さんもあなたが好きなようです、両思いだったんですよ」
「両想い、えっ、ほんと!」
「ほんとですよ。では私はこれで、おさらばです。恩返ししましたからね。後は涼さん自身で頑張るだけです」
「わかったありがとう、きん」
「よかったです」
 PCが静かになり、部屋にはデレデレした涼一人が残った。猫去りて、全て世は事もなし。


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このストーリーに関するコメント

12/09/08 ドーナツ

おもしろい!
ちょっと江戸の小話風の味があって、猫のきんさん、粋なお兄さんて感じもします。

猫は知らないようで人間以上にいろんなこと知ってるのは ありうるかもしれませんね。
恋を取り持ってもらえるなら こういう猫スパイ欲しいです。

12/09/10 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

楽しいお話に、にっこりです!
猫の恩返しで、恋が叶う?なんて、日頃からいいことはしておくに限りますね〜

ほんにゃく機で私も一度猫をしゃべってみたいです♪

12/09/10 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

そうだったのか、猫は家庭の中のことを知ってるのでスパイとして使えるんだ!

そうだ! もしかしたら迷宮入りしている犯罪も、案外、猫に訊いたら真犯人を知っているかも・・・。

ほんにゃく機で猫としゃべってみたいなあ♪

12/09/10 草愛やし美

ドーナツさま 
コメントありがとうございます。
この作品はノリノリで書きました。関西人なのでお笑い好きです。人生に笑いをモットーにしています。その部分褒めていただきとても嬉しいです。

12/09/10 草愛やし美

そらの珊瑚さま
楽しんでくださったコメントにとても喜んでいます。<(_ _)>有難うございます。
猫の言葉がわかる器械なんて出たらさぞ楽しいことでしょうね。いや、かえってまずいかもしれませんよ(苦笑)知らぬが花……。

12/09/10 草愛やし美

泡沫恋歌さま
読んでくださってありがとうございます。
この器械あったら、本当に真犯人もわかって、多くの迷宮入り事件が解決するかもですね。指名手配の犯人もすぐに見つかったりして、世の平和に良いかもしれません。

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