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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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化け猫語り

16/04/25 コンテスト(テーマ):第106回 時空モノガタリ文学賞 【 ねこ 】 コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:2475

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のう、おまいさま。
そないに怖がらなくとも、とって食べたりはせぬぞ。
わしは長い間、この祠に封印されておったのでなあ、少々人恋しいというか……誰かと話がしたいんじゃ。
そもそもわしが何者かって?
見てのとおり。猫じゃよ。
化け猫じゃと……それはずいぶんな申しようじゃな。
身の丈は六尺(182センチ)ほど、かれこれ三百年は生きておるかのう。
不老不死? いやいやそんなに生きたくはないのじゃ。
死ねない我が身が口惜しい、わしの体には呪詛がかけられておる。
なぜ呪いをかけられたのかと? 
よい質問じゃ、今からそれを聴いて貰うとしよう――。

三百年前、わしは人間の娘じゃった。
えっ? わしというから男じゃと思ったと? 
おまいさまは無知じゃな。知らんのか?
「わし」というのは、江戸時代ぐらいまで女が親しい人に使う一人称として使われておったのじゃ。
その頃、わしは小さな村で暮らしておったが、干ばつで田畑が枯れてしまうと生娘を龍神さまに捧げる慣わしじゃった。
……ふむ。
察しのとおりわしは生贄として竜神さまに奉納されることに決まったのじゃが……。
逃げた! わしは逃げた! 死ぬのが怖くて必死で逃げたんじゃ!
十六になったばかりで、まだまだ死にとうない。
じゃがのう、捕まった。
村人に追いかけられて、とうとう捕まってしもうた。
罰として、この祠に生き神として封印されてしまったというわけじゃ。
しかも猫の姿でな、不死の呪いをかけられて……。
嗚呼、死ねない我が身の哀しさよ。

死なずに済んだから、それで良かっただろう……って。
馬鹿者! 誰が好きこのんで三百年も生きたいものか?
しかも、こんな化け猫の姿のままじゃぞ。
わしの姿を見たら、怖がって誰もそばに寄ってもこない……わしは寂しゅうて……寂しゅうて……死にそうじゃが、死ねぬっ!
のう、おまいさま。わしを殺してはくれまいか?
なに? そんな怖ろしいことはできぬと……?
なんと意気地のない男じゃのう。
そもそも、おまいさまは何しにこんな深山ふかく入ってきたんじゃ?
……なになに? 恋人に逃げられて、女の借金を肩代わりさせられ、会社をクビになり、サラ金に追われて……絶望したので死に場所を探して山に入ったが、死ねないで彷徨ってるうちに迷子になって帰れなくなったじゃと……。
おぬしは阿呆か?
死に場所を探しておったなら、わしと心中でもするか?
えっ? 今は死ぬ気がなくなったと……なんと情けない奴じゃのう。
だったら、この祠に貼られたお札を剥がしてくれまいか。
わしを封印しているお札じゃ、ほれ、そこの入口に貼っておろうが。
あれを剥がして破っておくれ。

……祟りがないかって?
ないない。ほれ早くお札を剥がすのじゃ。
おまいさまに帰り道を教えてやるから、はよ剥がせっ!
……そうじゃ、素直にわしのいうこと聞いたほうが身のため。
よしよし、お札を剥がしてくれたんじゃな。
や――っと自由になれたわ! おまいさまには感謝しておるぞ。
ああ、腹が減ったぁ〜三百年振りの飯じゃ、おまいさまを喰ってやろうか。
待てっ! 逃げるなっ、騙されたじゃと?
たわけがっ! 昔、わしは里で人を化かしたり、作物を荒らしたり、散々悪さをした化け猫なのじゃ。
それで捕まって僧侶に祠に封印されておったのじゃー。
龍神の生贄がこんな山の中に封印されているのは可笑しいとは思わなんだか?
そんな風だから、女に騙されるんだ。この愚か者め!
……ん? なにを泣いておる。
おまいさまは死にたくないのか? わしも悪食ではないぞ。
一応、おまいさまには恩もあるし――。
じゃあ、わしを人間の里に連れて行ってはくれまいか?
なにをする気じゃと?
そうじゃなあー、わしは天下人になって国中の奴らを下僕にする。
えっ? 人間の里には危険なものがいっぱいじゃと?
自動車は生き物を轢き殺す。食べ物にばい菌が入ってる。空気には放射能という猛毒が含まれてると……な。
いきなり爆発が起きてたくさんの人が殺される。テロ? なんじゃそりゃあ?
わしが三百年封印されている間に、人間の里は怖ろしい処になっているようじゃ……。
猫は一匹残らず、猫カフェという処で強制労働させられるじゃと!?
うわ〜っ! 嫌じゃ嫌じゃ!
そんな怖ろしい処にはいきたくない。
この道を真っ直ぐいって、沢が出たら、川に沿って歩けば人里にいけるはずじゃ。
おまいさまは人間の里へ帰れっ!


そういうと化け猫は祠の奥で丸くなり動かなくなった。
男は教えられた道を歩いて無事に生還した。

――三百年封印されていた化け猫を騙すのはたやすいことだ。


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このストーリーに関するコメント

16/04/25 泡沫恋歌

化け猫の画像は楽天ウエブで検索してお借りしました。

16/04/26 霜月秋旻

泡沫恋歌さま、拝読しました。

現代人の大先輩のような化け猫の語り口。しかし猫カフェを恐れる化け猫がなんとも愛らしいですね(笑)面白かったです。

16/04/26 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

歌川國芳の化け猫の浮世絵のような、ちょっと怖くて同時にコミカルなかんじもして、とっても面白かったです。
最後の一行で「あっ」と思いました。

16/04/27 たま

恋歌さま、拝読しました♪

現在に復活した化け猫も簡単に騙されちゃうなんて、最後の一行でストーリーが見事に反転しましたね。さすが恋歌さんです♪
ぼくの家内の母は「わし」と言いました。漁師町で育った母なので言葉づかいも荒かったです。でも、気は優しい母でしたよ。
この化け猫もほんとは優しいのだと思います。恋歌さんみたいにね^^


16/05/04 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、拝読しました。

化け猫と人間の見事な逆転劇が楽しかったです。
おどろおどろしい妖怪も、恋歌さんの筆にかかれば何だか愛着がわきますね。
猫カフェで働く化け猫は、見てみてたったかもです♪

16/05/07 にぽっくめいきんぐ

泡沫恋歌様、拝読しました。

化け猫の語り口がすごくいいです。
猫カフェを恐れるところがかわいい! ギャップ萌えってやつですかね(笑)
そして、最後は見事に反転。 お見事!

16/05/22 光石七

拝読しました。
化け猫の語り口とラストの見事な逆転劇、とても面白かったです。
猫カフェに化け猫がいたら……行ってみたいかも。案外快適で暮らしやすいかもしれませんよ、化け猫さん(笑)
楽しませていただきました。

16/05/23 泡沫恋歌

霜月 秋介 様、コメントありがとうございます。

長い間、祠に封印されてる内に、世の中に取り残された化け猫は憐れな存在です。
たぶん、猫カフェで働いたらお客さんに受けると思いますよ(笑)

16/05/23 泡沫恋歌

そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

鍋島騒動の化け猫にしても、私みたいな猫好きには怖いって感じがぜんぜんしない。
猫なら、化け猫だろうと、ブス猫だろうと、デブ猫だろうと・・・
ぜ〜んぶ、可愛いと思ってるもん(笑)

16/05/24 泡沫恋歌

たま 様、コメントありがとうございます。

わしという言い方は案外、近年まで女性でも広く使われていた言葉のようです。
わしという感じも「儂」これを使うと下品な「ワシ」には聴こえない。
こういう古風な言い方で文章をしたためてみたかったのです(`・ω・´)ハイ!

私の場合、優しいというよりもただのお人よしですが・・・。

16/05/24 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、コメントありがとうございます。

猫カフェで働く、化け猫さんって案外人気スタッフだったりして、妖術を使った芸とかできれば、
きっとお店も大繁盛になることでしょうね(❃´◡`❃)

16/05/24 泡沫恋歌

にぽっくめいきんぐ 様、コメントありがとうございます。

古風な語りの化け猫が現代の猫カフェで働くとなると、
どんなところか分からないだけに恐怖かもしれない。
案外、メンタルが弱い子だったりしてね。

16/05/24 泡沫恋歌

光石七 様、コメントありがとうございます。

化け猫さんのいる猫カフェは巷でも話題になりそう。
テレビの取材もきたりして、きっと大盛況でしょう。
ワイドショーのコメンテーターとして、化け猫さんが引っ張りたこだったりして(笑)

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