六連 みどりさん

六連みどりむつら みどりです。 星とファンタジーが好きです。 漫画も文庫も読みます。最近ハマってるのは異能系ミステリーです。

性別 女性
将来の夢
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16/04/15 コンテスト(テーマ):第107回 時空モノガタリ文学賞 【 色彩 】 コメント:2件 六連 みどり 閲覧数:1265

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「……#ffffff」
「は、い?」
 昼休憩に、大学の食堂で蕎麦をすすっている時だった。
 突然、白井文乃の前にボサボサ頭の男が現れ、白井を見るなり暗号のようなものを呟いたのだ。
 言葉の意味が理解できず、白井は聞き返すが、男は口を閉ざし、マジマジと白井を見つめる。
「なにか、用ですか?」
「……いや」
「そんなに、見られると気が散るのですが」
「気にしないでくれ」
 人に見つめられながら食事をするなど、恥ずかしくて食べることに集中できない。
 しかし、それ以上何も言うことができず、男を気にしながらも黙々と食べ続けた。

 それから、白井が食堂に行くと必ずその男が現れ、見つめられながら食べるという日々が続いた。その度に、何か用があるのか尋ねるが、ないと男は答えるのだ。
 ある日、白井がいつもと同じように尋ねると、男は、食堂のざわめきで、かき消されてしまうんじゃないかという小さな声で呟いた。
「……他のコードがみたい」
「コード?」
 どういう意味か、聞き返そうとしたその時、肩をポンと叩かれ振り返る。
「白井ちゃん、おはよう。隣、いい?」
「先輩、おはようございます。どうぞ」
 食器ののったトレーを持ったサークルの先輩が立っていた。断る理由も特にないので席をすすめる。
「それで、コードって……」
「カラーコードのことだよ」
 質問に答えてくれたのは、男ではなく先輩だった。先輩へ視線をうつすと彼はニコリと笑う。
「彼は、七海色人。カラーコード先輩って呼ばれてる」
「カラーコード先輩……?」
「この渾名は、彼は人の色が……」
「おい」
 先輩の声を低い声が遮る。声を発した彼、七海は眉を歪ませ、こちらを睨んでいた。
「こわっ」
 そう言いながらも先輩の表情は、どこか楽しげだった。
「はいはい、邪魔者は去りますよ」
 いつの間に食べ終わっていたのか、食器の中は綺麗に片付けられていた。先輩は、立ち上がると器用にトレーを片手で持ち白井に向かって手を振り、去っていった。
 妙な沈黙が続いた。
 白井は、先ほど先輩が言っていたカラーコードという言葉が気になって仕方ない。少しだけ視線を七海に向けるとパチリと目が合った。
「……気になるか?」
 一つため息をついてから、七海が問う。その問いに少し躊躇しながらも頷く。
「俺の目……少し特殊で、人の色が単色に見えるんだ」
「単色ってつまり、一色に見えるってことですか?」
「あぁ、その単色に加え、何のためにあるのかわからないが、HTMLカラーコードが表示されてみえる」
「……なんですか、それ」
 白井の質問に、七海はポケットの中から紙とペンを取り出すと何かを記入し始めた。
「例えばあの人」
 七海は、ペン先で二つ横のテーブルに座ってる男性を指した。
「あの人は、これ」
“#c53d43”
 見せられた紙には、そう書かれていた。
「これは?」
「これについては、説明するより見た方が早い」
「見ろって……どうやって」
「お前が普段持ち歩いてる文明の利器は、ただ会話するだけのものか?」
「持ち歩いてるってそんな……あ!」
 鞄から七海曰く文明の利器を取り出すと慣れた手つきで指を動かした。
「あった!えっと、赤紅色?」
 文明の利器もとい、携帯で調べると濃く色鮮やかな赤色が画像欄に並んだ。
「あぁ、その色があの人の色であり本質だ」
「本質……なんか、すごいですね。あ、私って何色なんですか?」
 好奇心で聞いてみれば、七海は目も口も開きっぱなしで固まったように動かなくなった。
「信じるのか?」
「なにをです?」
 質問を質問で返すと、彼は呆れたように深くため息をはいた。
「#ffffff、それがお前の色」
 どこかワクワクとしながら検索欄に言われたコードを入力していく。
「じろじろ、見ていてすまなかった」
 あとは検索ボタンを押すだけというタイミングで、七海がボソリと小さな声で言った。
 その言葉に驚き、彼を見るとバツが悪そうに顔をそらしている。その姿がなんだかおかしくて、少し笑ってしまった。
「最初は、なんだこの不審者って思いましたけど」
「おい」
「今は、七海さんの見えている世界をこの一つのコードで、知ることができるのが楽しいし、嬉しいです」
 微笑みながら、検索ボタンを押す。ページが切り変わる寸前で、何かに身体を引き寄せられ、支えが無くなった携帯が床に落ちる。七海の顔がやけに近いところにあるなと思った時には、遅く。白井の赤い唇に何か柔らかいものがあたった。
「決めた、お前の色は俺が染める」
 顔を離した七海が、挑戦的に笑う。それをボーッと眺めながら、彼に何されたのか理解した時には、白井の目の前から七海は去ったあとだった。
 顔を真っ赤に染めながら落ちた携帯を拾う。携帯の画面には、白色の画像欄が並んでいた。


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このストーリーに関するコメント

16/04/17 霜月秋旻

六連みどり様、拝読しました。

人の色が単色に見える能力ですか。是非七海さんには、私の色も見てもらいたいものです。
白井さんは何色なのかなと思っていたら既にヒントが提示されてましたね(笑)となると六連さんは…グリーン?
面白い掌編でした。

16/05/01 泉 鳴巳

拝読致しました。
color="white"で済んでしまうところ何だか味気なくわざわざ#ffffffと打っている私には、妙に親近感の湧く話でした。
七海さん自身は何色なのでしょう。#000000か、はたまた透明か……想像が膨らみます。

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