1. トップページ
  2. 銃と水族館

林一さん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

銃と水族館

16/03/19 コンテスト(テーマ):第105回 時空モノガタリ文学賞 【 水族館 】 コメント:0件 林一 閲覧数:1145

この作品を評価する

 会社をリストラされ、妻にも家を出ていかれ、俺はもう生きる気力を無くしていた。
「死にたい。死にたい。死にたい……」
 そうつぶやきながら道を歩いていると、視界にきらりと光る何かが入ってきた。よく見るとそれは銀色に輝いており、さらに近付くと、それは銃のようであった。
 その銃を手に取ると、ずっしりとした重さがあり、どうやら本物らしかった。神様は俺にこの銃で死ねと言っているのだろうか? こんなタイミングで銃を拾ったとなると、そうとしか考えられない。
 俺はこめかみに銃口を当てると、ゆっくりと引き金を……ダメだ。いざ死ぬとなると、なかなか勇気が出ない。
 銃を懐にしまうと、俺はまた歩き始めた。

 気が付くと俺は、水族館の前に立っていた。妻との初デートで行った、思い出の場所だ。
 週末の水族館は、カップルや家族連れの客で賑わっていた。客の楽しげな声は、しだいに俺のイライラを蓄積させていった。こいつら全員、皆殺しにしてやりたい。
 そうだ。この巨大な水槽をこの銃で撃てば、水槽が決壊してここにいる奴らは全員溺死するはずだ。お前ら悪く思うなよ。俺は悪くない。悪いのは、俺をリストラした会社、俺を捨てた妻、俺に銃を拾わせた神様だ。
 俺は懐から銃を出すと、水槽に向けてゆっくりと引き金を引いた。
「パ―ン!」

 気が付くと俺は、病院のベッドにいた。
 水族館の水槽のガラスはかなり頑丈に出来ているらしく、俺が撃った銃弾はあっさりと弾き返され、跳ね返った銃弾が俺の胸に当たり、ショックで気絶してしまったようだ。幸い銃弾は心臓から外れていたため、命に別状はなかった。
 俺が起こした行動の一部始終は、水族館の防犯カメラにばっちりと映されていたらしく、各局のワイドショー番組で俺は笑い者にされ、警察からもこっぴどく叱られた。
「全くお前は馬鹿な奴だ。しっかり反省して、またやり直すんだぞ」
「すみませんでした」


 数年後、俺は再びあの水族館へとやってきた。バズーカ砲を忍ばせた、大きなリュックを背負って……。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン