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いつか

16/03/19 コンテスト(テーマ):第104回 時空モノガタリ文学賞 【 映画 】 コメント:1件 ゆえん 閲覧数:812

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移動生活をしている。愛車はライトバン。一台に生活必需品を詰め込んで街から街へと移動する。
新しい街に行くと必ず行く場所がある。映画館だ。この街の映画館はショッピングモールの2階にあり、何百人と入る大型スクリーンや3Dが売りらしい。大型スクリーン以外にもこじんまりとしたスクリーンが幾つもあった。入ったのは数十人程度のこじんまりとした方観客は自分一人だった。
ほかに誰か入ってくる様子はない。
数か月後の映画の予告編がいくつか流れる。大掛かりなアクションシーンに爆発、毎年だんだんと派手になっていっていたんだなあと改めて思った。
映画が始まった。 身分を偽り、スパイとして暗躍した男と若かりし日の男に家族を殺された少女が喫茶店で出会ったところから始まるヒューマンドラマだ。少女は相手を知らぬまま一人の人間として惹かれて行く。幼い頃亡くした父親の代わりのように。一方、男は親子ほど年の離れた少女に素直に好意を向けられ戸惑いながらも少女を受け入れて行く。
ある日を境に少女は男に会えなくなった。少女は狂ったかのように男を探す。あまりの様子に喫茶店のマスターが一通の手紙を渡す。そこには自分が少女の家族を殺したこと、少女の好意が嬉しかったこと、黙っていることに罪悪感を感じていたこと、病気のためもう二度と会えないことが綴られていた。少女はマスターから男の住所を聞き出し、走って行く。やつれた男は少女を見て驚いたものの彼女の復讐を受け入れようとする。少女は泣きながら首を振る。
「知ってた。再会した時からわかってた」驚く男に少女は一気にその思いを話す。
少女は男にすがりつき、男は少女の背に手を回した。初めて二人は互いの名前を呼んだ。男が少女の名を呼んだ時鳥肌がたった。自分と同じ名前だったから。目の前が涙でかすむ。
静かに映画は終わり、映画館をでる。ガランとしたショッピングモール、壁は崩れ落ち、雑草があちこちから生えている。略奪があったのかあちこちにあらゆるものが散乱している。
世界は突然終わった。予告で流れた映画は公開されなかった。人々は一通り略奪した後、病気や飢えで減っていった。今はもうほとんど会わない。この前会ったのはもう数ヶ月前だ。
映画を見る理由は人と会った気がするからだ。少女の名が呼ばれたときはただ嬉しかった。最後に名前を呼ばれたのはいつだっただろう。死を選んだ人の場所を去ったその日だったかもしれない。
いつまで生きられるかわからないけど、また名前を呼んでくれる人に出会えるまで生きていけたらイイと思う。


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このストーリーに関するコメント

16/03/19 あずみの白馬

まさかこういうオチで来るとは思わず、非常に驚きました。
導入部からは想像もつかない、映画「マッドマックス」を思わせる世紀末な世界。
――映画を見る理由は人と会った気がするからだ。
このテーマが生かされている舞台を見事に作られたと思います。面白かったです。

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