1. トップページ
  2. 私の世界

飛鳥永久さん

飛鳥永久です。 精一杯頑張っていきたいと思います。

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

私の世界

16/03/17 コンテスト(テーマ):第104回 時空モノガタリ文学賞 【 映画 】 コメント:0件 飛鳥永久 閲覧数:892

この作品を評価する

私は、夫の真さんの転勤を機に結婚をした。

お互いの両親も離れたところに住んでおり人見知りで、なかなか友人も出来ず頼れる人がいなかった私は、日中は二歳になる娘、桜と二人だけの生活で、桜にも私しか居ない。そう思って頑張るしかないとどれだけ大変でも子供と向き合っていた。しかし最近特にわがままがひどくなった桜に精神的にとても疲れ果てていたある日の午後十時過ぎ。
ぼんやりテレビを見ていたら、大好きな小説の映画化の広告を目にした。

「……そっか。映画化するんだ」

私は本棚からその本を手にして、パラパラとページをめくる。
やっぱり大好きで、キャストも好きな俳優さんばかり。観に行きたいと思ったその時、玄関の鍵が開く音がしたので本をテーブルの上に置き帰ってきた真さんを「おかえり」と出迎えた。

「ただいま。今日は桜どんな感じだったの?」

挨拶も早々に、桜の一日の様子を訊かれる。
仕事で朝早く帰りが遅い真さんは、休みの日以外娘と触れ合う事が少なく私は成長を少しでも感じてもらうため、毎日桜との出来事を彼に話していた。

「今日お昼ご飯を全然食べてくれなくて。なのにお菓子を欲しがってダメだよって言ったら気に食わなかったみたいでコップに入ったお水ひっくり返しちゃってもう大変だったわぁ……。あ、ご飯食べるよね。今用意する」

私はそれだけ告げると台所へ向かった。
嬉しい報告を出来ることもあれば、今日みたいな報告をすることもある。 だが、仕事で疲れてる彼にそのイライラをぶつけたくは無いので、なるべく気持ちを抑えるよう淡々と話した。

桜が寝た後の時間で小説や、DVD鑑賞。現実世界から少し離れ、物語の世界感に浸る事がそんな私の唯一の幸せだった。だけど、ゆっくり作品を探す事が出来ない私の為に、好きそうな本を見つけては買ってきてくれる真さんに『現実から少し逃げてもいいよ』と言われてるみたいで嬉しかった。

私は、ご飯をリビングまで運ぶと、真さんが私を見てニコニコとしている。こういう時は、大体私が喜ぶだろうって事をするときによくする顔だ。
きっと、また本を買ってきてくれたんだなって思いながらも「どうしたの?」とご飯をテーブルに置きながら訊いた。

そして、「はい」と言われ手渡されたのはあの映画チケット。
私は驚き真さんを見ると、「行っておいで」と優しく言われる。

「でも……桜が……」
「俺が面倒みるから大丈夫」

観に行きたいと思っていたし、行っていいよと言われたのも嬉しい。だけど桜の事を考えると素直に喜ぶことが出来なかった。映画が二時間だとして映画館まで往復一時間はかかる。そんな長い時間桜と離れた事が無いため不安になったのだ。

行くと答えなかった私に、真さんは「俺ってそんな信用無い?」と少し寂しそうな顔で私に尋ねた。真さんを信用していない訳ではない。
そんな顔をさせてしまった事に申し訳なさがこみ上げてきたけど、桜の面倒を見るつもりでチケットまで用意してくれた真さんに「ううん。よろしくね」と私は笑顔で答えてた。

次の週末、真さんに「よろしくお願いします」と告げ、桜にも「ママ行ってくるね」と言うと、ニコニコしながら手を振ってくれたので、少し安堵しながら家を出る。しかし映画館に行く車の中、どうしても桜と真さんの事が頭をよぎった。だがらといって大丈夫?と連絡をするのは信用してないって言ってるようなもの。
不安な気持ちをかき消すように小説の内容を思い浮かべていると、とても楽しみになってきて早く観たいと気持ちが晴れ、映画館へ向かった。

大きなスクリーンで、思う存分映画の世界に浸ることができて、映画館にいた時間は桜の事も忘れ独身に戻った気分にもなり大満足で幸せな気持ちになれた。しかし、映画館を出ると現実に戻り、二人の事が気にかかり真さんに『終わったよありがとう』と、連絡をするとすぐ画像付きメッセージが送られてきた。
そこには気持ちよさそうに寝る桜の姿があり、私はホッとする。
そして、桜には私が居なきゃダメだと思っていた事が離れてみて初めて、そうでもなかった事に気がついた。少し桜と離れたことでより桜を更に愛おしいと思えて胸が熱くなった。

私は急いで帰ると、起きた桜がとても笑顔で迎え入れてくれたので、抱っこする。

「ただいま!今ご飯作るね!」

そう言うと真さんがニコニコしている。少し不思議に思いながら台所へ向かうと、炒飯とスープが出来てあった。

「桜が寝た間に作ったんだ。さ、皆でご飯食べよ」
「もう、本当にありがとう。大好き」

私は感激して、真さんに抱きついた。すると、桜も私の足にぎゅってしてくれた。

――私の幸せは物語の世界の中でも、一人で映画を観れた事でもなくて。今この瞬間が何より幸せの一ページだった。

最高の物語は今この瞬間を綴った、この世界。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン