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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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味のパイオニアと水族館

16/03/14 コンテスト(テーマ):第105回 時空モノガタリ文学賞 【 水族館 】 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1446

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 昨夜未明、近所の水族館で放火事件があった。犯人は逮捕された。犯人はグルメを自称しており、水族館の中で泳ぐ魚達を焼いて食べようとしたらしい。犯人の名は酒名萌留さかなもえるといい、まだ女子高校生である。水で火がすぐ消えることは考えなかったのだろうか。愚かである。
 しかし私は、その酒名萌留に興味をもち、彼女について少し調べることにした。雑誌記者の血が騒いでいるのだろう。彼女について、面白い記事を書けるかもしれない。
 酒名萌留は幼い頃から、食に関して好奇心旺盛だったという。
 らくがき用の画用紙をヤギのようにむしゃむしゃ食べたり、クレヨンを「おいしそうな香りがする」と白から黄色、赤、茶、黒と次々とかじっては食べ比べていたそうだ。茶色の味が一番印象的だったらしい。
 海外で食用カタツムリがあるのを知り、梅雨の時期に自宅の庭のあじさいの花に引っ付いているカタツムリを食べてみたこともあるそうだ。しかし渋い顔をしてすぐ口から吐き出したという。
 その他にも彼女は自分が知らない味を求めた。窓に張り付いているカメムシを食べてみたり、家の中のネズミとりにかかったネズミをひとかじりしてみたり、外で残飯を荒らすカラスを一匹わしづかみにしては口へ…。あまりの凶行に、人々は彼女のことを『ゲテモノ食い女』と呼ぶようになったという。とにかく彼女には、誰も食べたことの無いようなものを食べてみたいという欲求があった。味のパイオニアといってもいい。
 そしてついに今回、水族館の魚に目をつけたという。なるほど。たしかに水族館には世界中の珍魚が泳いでいる。わざわざ世界旅行に行って現地で食べなくても、ここに忍び込んでこっそり盗って食べたほうが早い。もちろん犯罪ではあるが。本来水族館に行って魚達を観るとき、まともな人間の感想なら美しいと言ったり面白い、かわいいといったところだろうが、酒名萌留には「おいしそう」という感想しか出てこなかったそうだ。
 未知の領域に踏み込むには、好奇心と勇気、覚悟が必要だ。酒名萌留がやったことは自分勝手で人に迷惑をかける許されない行為ではあったが、好奇心と勇気、覚悟はあった。しっかり罪を償って、今後は人の為に新たな道を開拓してもらいたいものである。しかし彼女の場合、未知の刑務所暮らしでさえ魅力を感じ、喜んで味わっていそうだ。困ったものである。
 あ、挨拶が遅れました。私、週刊誌『週刊モノガタリ』で記者をしております未知野領行みちのりょういきと申します。今後、あなたの周りで珍しい人物がいましたらぜひ、私にお知らせください。それではまたいつか、お会いしましょう。
 


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このストーリーに関するコメント

16/03/21 泡沫恋歌

霜月 秋介 様、拝読しました。

水族館で泳いでいる魚たちはたしかに珍しいものやきれいなものもいますが、回遊魚の水槽の前で・・・
泳ぐマグロをみて、美味しそう! と思ったのは私だけではないと思う(笑)
なんとなく酒名萌留さんの気持ちも分からなくはないです。
食に目をつけたあたり斬新だと思いました。

16/04/15 にぽっくめいきんぐ

拝読しました。

面白い着想でときめきました。
萌留さんが料理を覚えたら、可食な物がどんどん拡大して、ヤバイことになりそうです。

16/04/20 滝沢朱音

こ、これは未知野領行の『週刊モノガタリ』シリーズの開幕でしょうか?!
面白そう。またの登場を期待しています!

水族館の中でアジを見ると「おいしそう」と思ってしまう私です。口には出さないけど…^^;

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