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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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同棲とよく似た五つの言葉による物語

16/03/09 コンテスト(テーマ):第103回 時空モノガタリ文学賞 【 同棲 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:1278

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【土星】
 休日の昼下がり。私は彼と一緒にテレビを観ながらボーッとしていた。そこに好きな異性といるという緊張は、あまりない。さすがに同棲生活が一年も続くと、ときめきも薄れてくるみたいだ。
 テレビでは宇宙に関してのドキュメンタリーが放送されていた。画面に一瞬土星が映る。
「土星の環って、なんだかドーナツみたいだよね」
 私はなんとなくそうつぶやいた。
 すると座っていた彼が突然立ち上がって、着替えの準備を始める。
「どうしたの?」
「買い物行ってくる」
「食材なら昨日まとめて買ってあるよ」

「ドーナツ。今すぐ食べたいって顔に書いてあるぞ」

 その一言に顔が熱くなる。
 彼に対するときめきは薄れつつあるけれど、こういう時、彼のことが好きだなって再確認する私だった。


【どっせい!】
「どっせい!」
 彼は重い荷物を運ぶ時、必ずそう口にする。
「それ、なんだかおじさんくさいよ」
「そうかな?」
 そう言って口をへの字にする彼がちょっと可愛い。
 でも二人でいる時、彼が「どっせい!」と言った数だけ、私の代わりに重い物を持ってくれたことになるわけで。そういう優しさに私はこっそり感謝していた。

 その日、仕事が早めに終わり自宅でくつろいでいると、宅配便が届いた。どうやら実家から食材が送られてきたらしい。運ぶため、力を入れて、荷物を持ち上げようとする。

「どっせい!」

 気がついたら声に出していた言葉。どうやら同棲生活も長くなると、口癖まで移るらしい。私は恥ずかしさのあまり、顔を両手で隠した。


【Do say(言いなさい)】
 最近彼の様子がおかしい。なにか隠し事をしているみたいだ。
 仕事明けの夜、私は彼に直接問いただしてみることにした。
「最近なにか隠し事しているでしょ?」
「なんだよ、藪から棒に」
「いつもと様子が違うじゃない。隠し事しているのバレバレだよ」
「……言わなきゃダメ?」
「言いなさい」
 すると彼は一度ため息をついた後、引き出しから一冊の本を取り出した。本のタイトルにはこう書かれている。

『How to SEX』

「えっ、なんでこんな本を?」
「会社の先輩に渡されたんだ。同棲を一年もしているなら、いい加減彼女を抱いてやれって」
 その言葉に頬が熱くなる。そう私たちは一年も同棲しながら、お互い未だにベッドインをしたことがなかったのだ。
「それで、お前はどう思う?」
「……言わなきゃダメ?」
「言いなさい」
 すっかり彼と私の立場は逆転した。


【同性】
「隣に引っ越してきた二人組、なんと男同士なの!」
 私が声を張り上げると、彼は面倒そうな顔をした。
「男同士で暮らすのに、なにか問題でも?」
「同性で一緒に暮らすなんて、できてるに決まっている! そうに違いない!」
 ついつい鼻息が荒くなる。すると彼は一度ため息をついた。
「お前、腐女子からは卒業したんじゃなかったのか?」
 その一言で我に返る。
 そう、私はかつて重度の腐女子だった。男同士がいちゃいちゃする同人誌を買い漁って、妄想世界に入り浸る。典型的な腐女子だ。
「お前を口説くのには苦労したよ。だって、同性のカップルにしか興味がなかったんだから」
「う、うるさい!」
 私は恥ずかしい過去をこれ以上掘り起こされないよう、彼の顔をクッションでバンバン叩いた。


【どうせい】
「大事な話がある」
 その日、彼は真剣な表情でそう切り出した。
「なによ、そんな真面目な顔して」
「いいから聞いてくれ」
 彼があまりに真剣な顔をするから、私も真剣に向き合った。
「この一年、同棲してみてすっかりお前に対するときめきが無くなったよ」
 彼の唐突な言葉。なにこれ。もしかして別れ話? 胸がきゅっと痛くなる。
「そこで一つ、提案なんだ」
 次にどんな言葉が飛び出すか。私は息を飲んだ。

「俺たち、そろそろ同姓にしないか?」

「同棲ならもうしているじゃない」
「違う。そっちの同棲じゃなくて、苗字の」
「えっ、それって」
 つまり、そういう意味だよね? 頭の中が一気にオーバーヒートする。
「私でいいの? ドーナツ買いに行かせたり、『どっせい!』って言ったらおじさんくさいってからかったり、未だに一緒に寝てない、元腐女子の女だよ?」
 言っていてなんだか自分が情けなくなる。
 するとふいに、彼が私をぎゅっと抱きしめた。

「俺はドーナツを旨そうに食ったり、からかいながらも荷物運びを手伝ってくれたりする、自分の体をちゃんと大切にしていて、そういった過去も含めた、お前が好きなんだ」

 彼の優しい言葉。
 そうか、彼はこの一年ずっと私のことを見ていてくれたんだ。
 私は心から思う。彼と同棲をしていて本当によかった、と。


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このストーリーに関するコメント

16/03/10 ヤマザキ

豊富な発想力に脱帽しました。面白かったです。

16/03/10 海見みみみ

ヤマザキさま>ありがとうございます!
同棲からいろいろな言葉に派生していく作業はとても楽しかったです。
面白かったと言っていただけてとても嬉しいです!

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