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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

性別 女性
将来の夢 星座になること
座右の銘 珊瑚の夢は夜ひらく

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もうひとつの浦島太郎

16/02/29 コンテスト(テーマ):第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 コメント:4件 そらの珊瑚 閲覧数:1233

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 ある日のこと。浜で亀が子供らにいじめられていた。が、運良く通りかかったおじいさんに、亀は助けられた。
「ありがとうございました」
 亀は涙を流して喜んだ。
「お礼に竜宮城にご招待させていただきます」
「竜宮城? それはどんなところですかな?」
「はい。表向きは乙姫さまのお城となっておりますが……。実のところ、賭博場でございます」
「賭博場……つまりお金を賭けて遊ぶところとな?」
「外国ではカジノとも呼ばれているそうでして。もちろんおじいさんの元手となるお金はこちらでご用意させていただきます」
「せっかくのお申し出ですが、わしはまったくギャンブルには興味のないたちでして。むしろギャンブルは大嫌いなのです」
「はあ、そうでございましたか」
「なにしろ、息子の太郎が大のギャンブル好きでして。家の金を持ち出してはギャンブルに使ってしまう有りさまでして」
「それはさぞお困りでしょうね」
「親の金が底をつくと、今度は親戚や友達から金を借りてでもギャンブルに注ぎ込むことを繰り返し、しまいには村のつまはじき者になってしまいました。いい年ですが、あれでは嫁さえもらえんでしょうな」
「そうなるともう病気ですね」
「家庭崩壊ですわ。太郎にふぐの毒を飲ませ、一家心中でもしようかってところまできているのです」
「わかりました。わたくし亀が太郎さんをお引き受けしましょう」
「本当ですか? それはありがたい」

 太郎にそのことを話すと、もちろん太郎はふたつ返事で竜宮城へ行くことを承知した。何しろ人の金で遊ぶことが出来るのだ。

 竜宮城は開店まもないという割に、結構な混み具合だった。羽振りの良さそうな利尻こんぶのネクタイを締めた魚たちがルーレットやトランプで遊んでいる。その間をフリルのついたドレスを着た女の子たちがお酒を運んで回っている。

 亀から渡されたお金は、一生かかっても使い切れないと思われるほどの金額であった。
 それでも使い切ってしまうのがギャンブルというものである。
 勝ったら勝ったで、勝った記憶が脳に刻まれて、自分は運がいいのだと思い込む。負けたら負けたで、この負けを取り返すまでは止められないとのめり込む。
 まさに負の連鎖なのだ。
 とうとう三年で金は底をつく。太郎は一文無しになってしまった。
「有り金が半分くらいで、家に戻ればどんなにか父も母も喜んだろうか」
 今までの親不孝を悔いたところで、もうどうにもならない。
 すっかりしょげかえった太郎を見て、乙姫さまは可哀想になったのか、家に戻るみやげをくれた。
「太郎さん、これは玉手箱です。帰ったら開けてみるといいですよ」
 太郎がふるさとに帰ると、見慣れたはずの風景はどこにもなかった。
 家のあったはずの場所にはパチンコ屋が建っていた。太郎はその店に入って店員に両親のゆくえを訊いた。
「浦島さんですか? 知りませんなあ」
 もはや父母には会えないのか。太郎は絶望したが、玉手箱の存在を思い出し、開けてみることにした。
 白い煙がもくもくとあがる。あっという間に太郎は白髪頭のおじいさんになっていた。 絵本通りの筋書きだったので、店員はあまり驚きもしなかったが、めざとくその玉手箱が立派な漆塗りの箱であることに気づき、太郎にそれを教えてあげた。
「それを売ればかなりの金額で売れるでしょう」
 それを聞いた太郎はさっそくその箱を売り、その金でパチンコに興じた。
 あぶく銭とはよくいったもの。
 たった一日で彼はそれを使い果たした。

 本当にすっからかんになった太郎は浜に出てぼーっと海を見ていた。これからどうやって生きていこうか、途方にくれていた時だった。海から亀が現れて、太郎に一本の竿を渡した。
「太郎さんの父上から、渡してくれるように頼まれたものです」
 それは漁師だった父の古い仕事道具だった。手にとると父の手の温もりがよみがえってくる気がした。
 どこで人生を間違ってしまったのだろう。
 太郎は記憶をたどってみる。
 いつギャンブルにはまってしまったのか。思い出せなかった。思い出せないということは、なかったことにしてもいいのではないか。真面目に漁師をしていたということにしてしまおう、と。嘘も方便じゃ。
 それから太郎はひがな釣りをしながら、余生を送ったという。めでたし、めでたし。



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このストーリーに関するコメント

16/03/15 そらの珊瑚

篠川晶さん、ありがとうございます。
以前「有り金を竜宮城で使い果たしすべてをなくした男のはなし」という短歌を作ったことがあり、それをもとにして書いてみました。
浦島太郎は、亀を助けたのに結局不幸せになった(ような気がする)ようで、昔から理不尽だなあと思っていました。
楽しんでいただけて嬉しかったです。

16/03/16 泡沫恋歌

そらの珊瑚さま、拝読しました。

そうですか、浦島太郎は竜宮城でギャンブルに興じていたんですか。
だから地上に帰りたくなかったんですね。

結局、ギャンブルでお金持ちになった人はいないというのが事実でしょう。
困った浦島太郎に玉手箱は乙姫様からのお灸だったのかも。

16/03/20 滝沢朱音

竜宮城がカジノですかっ?!大胆で斬新なアイデアにびっくり!!
「利尻こんぶのネクタイ」に( ,,>З<)ブプッ(笑)
思う存分ギャンブルを楽しんだあげく、すっからかんになった太郎に
これこそ亀の恩返しですね。太郎くんへの、お父さんの愛のなせるわざかも。
こんな浦島太郎も楽しくていいですね☆

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