1. トップページ
  2. 姉の同棲

永遠川ミモザさん

ツイッターやってます @twamo2

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

姉の同棲

16/02/23 コンテスト(テーマ):第103回 時空モノガタリ文学賞 【 同棲 】 コメント:0件 永遠川ミモザ 閲覧数:1332

この作品を評価する

「ねえ聞いてよ。」
また姉からの電話通信だ。今度の話もまた「彼」との同棲生活についてのことだろう。
「私の彼がさ、」
ほらやっぱりそうだ。
「つんけんせずに聞いてよぉ」
私の姉は甘えるのが得意だ。これに「彼」はほだされたのだろう。もちろん妹である私も、姉の甘ったるい声を無視すると後が面倒くさいので、仕方なしに応える。
「『彼』がなかなか帰ってこないのよね、今から帰るって連絡あったのにい」
それで暇つぶしに私のところへ連絡してきたのだろうか。「彼」の仕事先から姉の家までは3.5光年と、そう遠い距離ではない。待たせた方が想いは募る、という駆け引きを楽しむような「彼」でもないので姉がそのことで電話してくる気持ちは分からなくもない。

「でさ、『彼』って食器を同時に三枚洗えるんだけどさ、洗い方が雑なのよねー」
バミューモレンダ人である「彼」は腕が6本あるので、家事を効率よくこなせるとはよくテレネットのワイド番組で言われているが、洗い方の基準は人それぞれだ。姉は意外なところで細かい。食器に少しでもべたついたものが残っているのが嫌なのだろう。
「また私が洗い直さなきゃいけないから面倒なのよ。あ、でもね、彼特製のチンネンタ入りパンケーキはおいしいのよー!」
そうですか。
チンネンタとはネズミに似た宇宙生物で、姉は小さいころからチンネンタが苦手なはずだったのだが、愛の力で乗り越えたというのだろうか。りょ、料理上手な「彼」なんてうらやましくなんかない。

「●▼☆×○」
バミュー語らしき音声が電話通信の向こう側からかすかに聞こえてきた。
「あっ、『彼』帰ってきたみたい!じゃあまたねー」
プツッと電話が切れた。結局、通話は1時間半におよび、その間じゅうずっとノロケを延々と聞かされたのだった。まったく。

新銀河歴になってはや2100年。太陽系を人類が飛び出した年を元年と定められたこの暦は、太陽系外の知的生命体との関わり合いの歴史で彩られている。学校で習う歴史ではいくばくかの戦争、荒廃、再生があったが、今は平和なものだ。それこそ、今となっては姉のような地球型人類が、異星に生きる者と同棲するようになっている。
姉は毎日のように私へ連絡してきて、「彼」との生活の幸せな部分や不満な部分を語る。姉にとっては、バミューモレンダ人だから付き合っているのではなく、「彼」だから付き合っているのだという。自分に言い聞かせるように私へ明るく電話してくるのは、この地球での、異星人との交際に対する強い風当たりを跳ね返そうとしているからなのだろう。本人たちは、決して自分たちが差別されているなど口にはしないが。
「彼」と姉が同棲を長々と続けているのは、未だ地球法では地球の女性と雄性異星人との婚姻が認められていないからだ。とんでもない差別が地球法には盛り込まれていると思うのだが、地球にはまだ保守的な層が多い。なんにせよ、これからなのだ。
チンネンタ入りのパンケーキを好きになった姉のように、物事の判断基準は見かけだけによらないのだ。今度私も食べてみようかな、チンネンタのパンケーキ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン