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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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負けるとわかっていても

16/02/21 コンテスト(テーマ):第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 コメント:2件 あずみの白馬 閲覧数:1133

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――負けるとわかっていても、張ってしまう時がある。それがギャンブル

 僕はこれから「負けるため」にギャンブルをしに行く。

 卒業式も終わって残っている生徒も少なくなった高校の生徒指導室……

「話ってなに?」
 相手は3年間僕の担任だった、ゆかり先生、26歳。今年を最後に退職することになっている。
 左手の薬指には婚約指輪。ネットでこっそり調べたら同じタイプのものが見つかった。
 そう、100%負けることがわかっているギャンブルなのだ。けじめをつけるために。
「えーと、あの、ぼく」
「ん? どうしたの?」
 いつもの笑顔で先生が聞いてくる。この美しさに一目惚れした。この笑顔を見るためだけに3年間頑張って勉強したと言ってもいい。
「あの……」
「?」
 表情は笑顔のままの先生に、大きく息を吸い込んで、用意していたセリフを言う。
「先生のこと好きです!」
 言った瞬間しまったと思った。「ずっと好きでした。だから幸せになってください」というセリフをいうはずだったのに……

 やってしまったと思った時にはもう遅かった。みるみる先生の顔が曇っていく。
「それ、本気なの……?」
「はい」
 返事をするのに精一杯。もうダメだ。早くここから逃げ出したい。先生は泣きそうになっている。
 これはまずいと、用意していたセリフを慌てて言おうとした瞬間!

「うわあああああああああああん」
 婚約指輪をテーブルに置いて、いきなり泣き出したかと思うと
「私、婚約破棄されて……、でも卒業式だから必死で乗り切って、でも、もうだめ」

 そ、そんな情報聞いていないよ……!

 暫くの間先生は泣いていた。ぼくは涙を拭いてあげることしか出来なかった。
 泣き止んだ先生の話を聞くと、婚約指輪までもらった相手が浮気していて、それを問いただすと別れ話を切り出されてしまった……。
 ぼくが聞いてもひどい話だと思った。相槌しか打てなかったけど。そして。

「告白の返事、まだだったね。今は次の恋愛にすぐに切り替えるなんて出来ないから」
 やっぱり……、どのみち負けとわかっていたのに、いざ振られてみるとやっぱりつらい。
「そうですよね。ごめんなさい。こんな時に」

 すると先生は、きょとんとして。
「なんで謝るの……? 恋愛の対象としてはまだ見れないけど、お話聞いてくれたのはうれしかった。これからもお話したいから、連絡先交換しましょ。だめ?」
「ええっ!?」
 
 つまり、友達からのスタートということらしい。その後も先生の話し相手になることが多かった。そして……、

 先生、いや、ゆかりさんの彼氏になれたのは、告白から1年後のことだった。

――ギャンブルに絶対は無い


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このストーリーに関するコメント

16/03/15 泉 鳴巳

拝読致しました。
重めの告白があったにも関わらずコミカルに進むやりとりに微笑ましい気分になりました。
“100%負けることがわかっているギャンブルなのだ”から“ギャンブルに絶対は無い”への変化にも説得力が有りました。面白かったです。

16/03/17 あずみの白馬

> 泉 鳴巳 さま
お読みいただきましてありがとうございます。
コミカルなやりとりを評価していただきましてありがとうございます。
説得力があり、面白いとの評価も率直にうれしいです。
今後とも精進してまいります。

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