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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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将来の夢 プロ小説家になること!
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絶対に勝てるギャンブル

16/02/19 コンテスト(テーマ):第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:1513

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 世の中には絶対に勝てるギャンブルがある。人はそれを『イカサマ』と呼ぶ。

 文芸部の部室。僕は文芸誌を読むふりをしながら、桜子部長の様子をうかがっていた。桜子部長が本を読み終えるまで目算であと五分。部室には僕と桜子部長のみ。そもそも文芸部には僕と桜子部長しか在籍していない。
 これは狙い通りの好機だ。僕は何気ないそぶりで財布を机の上に置いた。
「あー、面白かった!」
 桜子部長が本を読み終える。僕はすぐさま桜子部長に声をかけた。
「なんの本を読んでいたんですか? やけにゲラゲラ笑っていましたが」
「マルクスの資本論」
 資本論のどこにゲラゲラ笑う要素が? まあ、この予想外っぷりな行動が桜子部長の平常運転なので問題なし。
「ユッキー、暇」
 そして平常運転その二。僕に対する唐突な無茶振り。しかしこれこそ狙っていたものなので、むしろ大歓迎だ。だが一応ここは慎重にいく。
「暇ならもう一度資本論を読み直せばいいじゃないですか」
「こんな退屈な本、読むのは二度とごめんよ」
 それではさっきまでゲラゲラ笑っていたのはなんだったのか。そうツッコミたくなるが我慢する。
「……では、ゲームでもしますか」
「ゲームって、ファミコン? 学校にファミコンを持ってくるなんて、ユッキーって不良だね」
 今時ファミコンって。桜子部長、僕たち平成生まれですよね?
「なに、簡単なゲームですよ。ここに十円玉があります」
 財布から十円玉を取り出し、桜子部長が確認するのを見届ける。
「この数字の書いてある面を表として、裏表を当てる。的中したら予想を外した相手になんでも命令できるという、そんなゲームです」
「ゲームというよりはギャンブルね。命令はなんでもいいの?」
「はい、目でせんべいを食べるでも、耳でスパゲティを食べるでもなんでもありです」
「ユッキー、原作のドラえもん好きでしょ?」
 なぜバレたし。しかしここで動揺は見せない。僕は冷静さを装い、コイントスの準備を始めた。
「僕は表に賭けます。桜子部長は裏でいいですね」
「いいよー」
 よし、かかった! これであとはコイントスするだけだ。

 世の中には絶対に勝てるギャンブルがある。人はそれを『イカサマ』と呼ぶ。
 今回のイカサマは極めて単純。十円玉の裏表をコイントスの動作の中で操作するというものだ。
 コイントスは練習さえすれば、必ず自分の好きな面を出せるようになる。ポイントは十円玉を投げる瞬間と、それを受け止める時。ここでうまくコントロールすることができれば、コイントスは勝ったも同然だ。
 もちろん十円玉自体に細工はないから、いくらイカサマを疑われても、桜子部長にはそれを証明する手がない。
 ちなみにこのイカサマを習得するために専門書を買って、半年間毎日コツコツ練習を続けたのはここだけの秘密だ。
 さあ、さっさとコイントスをして僕の野望を叶えてしまおう。即座に準備態勢に入る。
「それでは投げますよ。せぇー……」

「はい、投げた! 裏かな、表かな?」

 ちょっ、ちょっと待ってほしい。今なにが起きた? 僕がコイントスしようとしたら、桜子部長が自分の財布から十円玉を取り出し、僕より先にコイントスした。なぜ僕がコイントスをしようとしているのに、勝手に自分でコイントスをするんだ?
 僕の仕組んだイカサマは、桜子部長の予想外な行動により一発で破綻してしまった。
「さあ、オープン! ……お!」
 桜子部長が声をあげる。せめてここで表が出てくれれば。恐る恐る十円玉を確認する。

 裏。

 結果は桜子部長の勝利となった。
「やったー! 勝った! 第三部完!」
 ジョジョネタはこのご時世ヘタにやるとニワカ認定されますよ。そう心の中でツッコミを入れつつうなだれる。
 ああ、僕の計画は失敗だ。このギャンブルに勝ったら、その、実は……桜子部長をデートに誘おうと思っていたのに。
 ああそうさ、こんな手を使わないと好きな女をデートにも誘えない、僕はヘタレなダメ男なのさ。ははっ、なんだか悲しくて笑えてくるよ。
 やっぱり絶対に勝てるギャンブルなんてないんだな。そう僕は確信した。
「それで、桜子部長のお望みはなんですか?」
「それなんだけど……」
 すると桜子部長が珍しく言い淀んだ。余程恥ずかしい命令でもするつもりなのだろうか。
「安心してください。なんでも言うことは聞きますから」
「本当に? 武士に二言はない?」
 誰が武士だ。そう心の中でツッコミながらも頷く。

「それじゃあ今週の日曜、ユッキーの体を一日借りようかな」

 最初その予想外の言葉に意味がよくわからなかったが、理解した瞬間顔がどっと熱くなる
 どうやらこれは結果的にどっちに転んでも絶対に勝てるギャンブルだったようだ。


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このストーリーに関するコメント

16/03/06 光石七

拝読しました。
ところどころ懐かしい小ネタにクスリとしてしまった、昭和生まれです(苦笑)
桜子部長の予想のつかないキャラがいいですね。
そして、何とも微笑ましいラストにほっこりしました。
楽しいお話をありがとうございます。

16/03/06 海見みみみ

光石七さま>ご覧頂きありがとうござます。
同じく昭和生まれなので、懐かしいネタに笑っていただけて嬉しいです笑
桜子部長のキャラクターは私もお気に入りです。
オチにほっこりしていただけて安心しました。
それでは感想ありがとうございました!

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